- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065277669
作品紹介・あらすじ
2003年にヒトゲノムの解読が完了したが、これで「遺伝子」がわかったのかというとそうではない。DNAにコードされている遺伝子の構成が判明したことで、ヒトゲノムの複雑さがかえって判明してきた。また、DNAに遺伝子はコードされているが、それらは非コード配列やそのコピーである多様なRNAなどによって、たくみに制御されていることがわかってきた。「遺伝子」とは、それらの制御機構を抜きにしては語れないし、「遺伝子」の概念は新たなステージで考える必要があるのではないだろうか?
本書では、メンデルの実験から、ワトソン、クリックによる二重らせんモデルの発表など、「遺伝子」をめぐる科学史を追いかけながら、「遺伝子」の正体を問い続ける。ゲノムの解読は終わりではなく、「遺伝子とは何か?」という、古くて新しい問いとその答えをめぐる研究の始まりであることを明らかにする野心的な一冊。
感想・レビュー・書評
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2022-05-28 amazon 1,100-2023/01/04 読了
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遺伝学、分子生物学初心者なりに頑張ってついて行きました。
メンデルの三法則すらちゃんと理解していない自分でもなんとか読み進めたから好感触だったが、後半へ進むにつれ、基礎固めの甘さが露呈し理解三割。
遺伝子についての本はもっと読まないと。 -
遺伝学の歴史と、そのたびごとに遺伝子の理解がどのように更新されたのかが概観されてゆく。分子生物学の本でなんでこの記述スタイル?と訝って読んでいたが、DNA、mRNA、tRNA、タンパク質のセントラルドグマというお馴染みの図式が説明されたところからが本番。
セントラルドグマ以外にもほかのRNAやら酵素やらが形質遺伝に関わるだとか、ラマルキズムとして片付けられていたはずの獲得形質の遺伝もDNAメチル化によって説明づけられる可能性があるだとか、とにかく遺伝機構(つまりは遺伝子なるもの)の複雑な様相が明らかになっている、らしい。
シュレーディンガー『生命とは何か』をメルクマールに、物理法則をベースに演繹的な推論を(も)用いる物理学者や化学者が、かつて帰納的な実験・観察とその分析に終始しがちだった生物学分野に参入することで分子生物学が生まれるシーンは感動的ではある(pp.109-112)。
しかし最新の展開や著者の見通しを読むに、複製と多様性をなぜか両立させる遺伝(子)の制御構造の探究は、物理学・化学の知見を導入しながらも原理論に進む方向性は(少なくとも本書では)仄めかされておらず、今後の分子生物学の道のりの長さも感じさせる。 -
京都府立大学附属図書館OPAC↓
https://opacs.pref.kyoto.lg.jp/opac/volume/1270843?locate=ja&target=l? -
ヒポクラテスからはじまる生殖と遺伝の研究の歴史を振り返ることができて大変興味深かった。初学者にとっては途中分からない用語が多数出てくるが、それらを知らなくても読み進めることは可能で、大きな流れを簡潔に理解できる。用語を調べつつ、細部の理解を深めながら再度読み返したい。
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もともと生物学の研究者だったけど、その分野を離れて15年が経つので、思い出すために読んでみた。
途中までは知っていたし、ヒポクラテスとかの哲学には興味がないので読まなかった。
RNAワールドやプリオンのところから読んだのだけど、これ素人が読んでわかるのかな?と思った。
大学の生物学を真剣にやっている人くらいしか分からないのではないかと思った。
著者は生物学に誠実な人だとは思った。
僕はまあまあ面白かった。 -
テーマ:遺伝子
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聴いた。mRNA以外のRNAの話とか簡潔に説明されてたので読み返したくなるかも。
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本書は、メンデル以降の遺伝子学の歴史を語りながら、では遺伝子とは何か?を著者自身も探る、そんな仕立て。素人には難しいところがあったが、これまでの著者のブルーバックスシリーズの作品同様に文章の読みやすさが理解を助けてくれた。
生命が誕生したときから、延々とつながってきた遺伝という仕組み。こんな複雑で巧妙な仕掛けが自然発生的にできたなんて、何度考えても神秘的だ。
遺伝子とは○○だという物質ではなく、有機的に結びついたシステム、という趣旨の記載があったが、とても腑に落ちた気がした。