命もいらず名もいらず 上 幕末篇 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450651

作品紹介・あらすじ

幕府旗本の家に生まれた山岡鉄舟。千葉周作に剣を学び、禅、書の修行に励む。日本をこれからどうするか。変えていくのは自分だ――。幕末・動乱の世を、無私の心で駆け抜ける! 最後のサムライの堂々たる人生を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 武士の道に生きる
    幕末編は山岡鉄舟の生い立ちから「剣の道」を見極めたい鉄舟の生き様を描く。千葉周作、浅利又七郎など様々な師範との出会いと勝負で、剣の勝負とは「死ぬ気で相手に繋る心」であり、それは奥義で「徳」(武士の時代、刀で人を生かし、国を治める)ということを悟る。武士道とはなんぞやを剣の鍛錬から見出そうとする鉄舟、自分より優れた剣士(師範)から勝負に負けることで学んでいく。

  • 山岡鉄舟とは「自身のためになることをしろ。それが天下の役に立つ。」という父の言葉を恐ろしいまでに忠実に実行した人物だと思います。
    また、そのスケールも違う。
    それは、おもてなしの為に家の畳を売ったり、色情の不思議を解明する為に堂々と遊女と接したりしていたことなどから、そのように思いました。

    ただ「本質を見極めて目的をはっきりさせていれば、周りの意見に左右されずモチベーションを下げずに目標達成に近づける。」ことを改めて気付かされました。

    個人的な結論は、行き方は真似しようとは思いませんが、考え方は真似したいという人物です。

  • 江戸城の無血開城を西郷隆盛と話をつけて成し遂げた人物。勝海舟かと思いきや彼の活躍があってこその無血開城らしい。
    物語は彼の幼少期から死に至るまでの一生を描く。ここで描かれているのは、まっすぐな気持ちを持ち続けた男子の一生だ。無血開城などの業績が出るまでは、剣術の修行に勤しみ、書道の修行と禅の修行と、一生懸命にやっているのは伝わった。が、結果的にそれらが世のためになったから良かったものの、一歩違えば遊んで暮らしただけなのではなかったか。それを見越した上での、父親からの自分のために生きろだったのかは、よくわからなかった。

  • 幕末の武士・山岡鉄舟を描いた歴史小説。鉄舟はストイックである。「酒をのまねば英傑の心意気が味わえぬとは、馬鹿馬鹿しいゆえに、馬鹿馬鹿しいと申し上げた。酒に頼るようでは、それこそ半人前」(58頁)。昭和の飲みニケーション組織のアンチテーゼになる。

    大丈夫という質疑応答の無意味無責任さが描かれる。山岡鉄舟は剣術の稽古で倒されて気を失う。「だいじょうぶですか」と声をかけられて「だいじょうぶだ……」と答える。しかし、それは「答えたものの、本当にだいじょうぶかどうか、自分でもよくわからない」というものであった(90頁)。「大丈夫か」と問われると反射的に「大丈夫」と答えてしまう傾向がある。それが誤りである。

    大丈夫かとの問いかけは無意味であり、大丈夫との回答を信用することは無責任である。これが日本人の悪いところであろう。「大丈夫か」「大丈夫です」というやりとりが繰り返された後で意識を失い、息を引き取る人も出るだろう。これは「大丈夫か」と問うことの犠牲である。ところが、保身第一の無能公務員体質は逆にこれを悪用して「大丈夫か」と質問して「大丈夫」と答えさせてアリバイ作りとする。「大丈夫か」と尋ねるような無能公務員体質の人間とは付き合いたくない。

    攘夷の嵐が吹き荒れる。鉄舟も清河八郎らと交流して攘夷の一党に加わるが、天誅や焼き討ちには反対した。本書は鉄舟の超然としたところを描きたいのだろう。一方で攘夷を行いたい側の動機が弱く、攘夷に燃えないことも自然である。それは本書が阿片戦争に言及していないためである。依存性薬物の阿片を密売し、国民を阿片漬けにして侵略することへの危機感が攘夷に駆り立てた。攘夷という手段が正しいかという問題はあるが、危機意識を持つことは正しいものである。

  • 幕末、旗本の子息、小野鉄太郎。
    岐阜の山奥で剣の修業に、
    親が死に江戸に上京し、養子になり山岡鉄太郎へ。
    修業が続き。
    所々に、こうだったようだみたいな解説入る。
    物語の邪魔?

  • 感想は下巻にて

  • 千葉道場で剣を学び、禅、書の修行にも励む。
    幕末・動乱の世、命も名もいらぬ、最後のサムライを描きます。
    上巻では、江戸に出て撃剣の修行に励み、攘夷運動に関わるまでが描かれます。

    「人は、器量に応じた仕事しか為せない。器量に応じた人生しか送ることができな い。器量を広げたいと願うなら、目の前のことをとことん命がけでやることだ。人間の真摯さとはそういうことだ」 ー 64ページ

  • 感想は下巻で。

  • 読了。
    剣術家としても思想家としても有名な山岡鉄舟だが、この上巻は幕臣から見た幕末と言う点で興味深かった。
    激変する時代を後目に、剣術家として一意専心修行する中で形成されていく、高い精神性、世界観、道徳観は、サムライの最後の煌めきでもある。
    実はこの人の人生、明治時代の方が波乱に富んでて面白いのだが、それは下巻に持ち越し。

  • 「幕末の三舟」と称された山岡鉄太郎の生涯を描いた歴史長編。
    勝海舟を軸に、江戸城無血開城を題材にした冲方丁著『麒麟児』に、勝に全幅の信頼を置き彼を護衛する重要人物として山岡鉄太郎が登場する。
    本書では、勝と西郷の会談を実質的にお膳立てした鉄舟の活躍が綴られる。
    さらに全編にわたって、己の信じるまままっすぐに、目の前のことを全身全霊の力を振り絞って生きる鉄舟が躍動する。

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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