リアルワールド (集英社文庫(日本))

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 2126
感想 : 280
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460100

感想・レビュー・書評

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  • 読んだことを後悔する風ではなかったけれど、闇が濃くて、気分が悪くなるようだった。特に母親殺しの男子高校生の章は彼にとっては当たり前のように語られる思考や逃亡中故の不潔さが強烈で気持ちが悪かった。一読しただけではわたしにはよくわからなかった遺書や手紙を通して、違う人間だから簡単には理解出来ないそれぞれの考えやその流れが人の中には詰まっていることを強く感じた。全体的に読んでいて心地好くはなかったけれど、それぞれの深いリアルがとても書き切られているように感じられた。

  • 何を選んでも絶対誰も救われなさそうでずっとヒヤヒヤしてた…闇が深すぎる

  • すごい話。
    隣の家の少年が母親を殺して出ていった。
    そんな少年に興味を覚えた四人の少女は、逃走中の少年とコンタクトを取る。
    ゲーム感覚の異常な展開に背筋が凍る。

    2018.3.6

  • 登場人物は高校生ながら、いつものようにグロテスク。単純に見えて悩みが深い。他の選択肢なんて思いもつかない、それくらい世界が狭かったっけ、と自分の昔を振り返る。もう一回読みたい。

  • 文庫版2006年初版。
    BOOKOFFで108円で購入し積んでいたもの。ハードカバーも古本で買っていたが、未読のまま。
    今回も、桐野毒に中てられた。

    母を殺したミミズについて、「取り返しのつくこと」と捉えるテラウチの心の闇の描写が素晴らしい。
    著者は、一歩間違えるとこうだった?

    物語は、高校3年生の山十四子の隣の少年(ミミズ)が母親を殺し逃走。その際、十四子が自転車に忘れていた携帯ごと盗んで逃走する。ミミズは、十四子の携帯のアドレスにあった友達、レズであることに悩んでいるユウザン、可憐で純情のふりをしながら実は遊んでいるキラリン、頭が良く自己中毒に罹っているテラウチに電話する。
    まず、十四子が警察からの取り調べに自分の自転車が使われたことを言わない。次に、ユウザンは別の形態を契約し、自分の自転車と一緒にミミズに渡す。キラリンはわざわざ逃亡中のミミズに高崎まで会いに行き、一緒に逃亡することになる。テラウチはミミズから犯行声明を書くことを頼まれるが、キラリンとミミズの行動の単純さが我慢ならず警察に二人の潜伏先を密告する。
    警察が近くに迫っていることを知ったミミズとキラリンは、タクシー強盗をして東京に戻ろうとするが、ミミズが誤ってタクシー運転手を殺してしまい、タクシーが対向車に激突しキラリンも死んでしまう。
    キラリンが死んだという知らせを十四子から聞いたテラウチは、キラリンたちが死んだことも理由の一つとして十四子に遺書を残して自殺してしまう。
    密かに、テラウチを慕っていたユウザンは、卒業を前に学校に来なくなる。
    こう書くと、絶望的な話だが、高校生の心情がよく書かれており、じぶんも若いころは自分を持て余していたなぁと思いながら読み、読後はちょっと切ない。

    テラウチ
    『私は大人が恐ろしくなった。病んだ心に手当てができると思いこんでいる、科学へのお目出度い信頼感を抱いている楽観に。そして、病んだ心を持つ子供に手当てをしなければならないと信じている大人の強迫観念に』
    『愛する親が信じられなくなっても受け入れる子供は、いつしか自分を信じられなくなる。見ろ、ミミズ。これが「取り返しの付かないこと」なのだ。母親を殺すことなんかじゃない』
    解説には、本当に取り返しの付かないことを「永久に終わらなくてずっと心の中に滞って、そのうち心が食べ尽くされてしまう怖ろしいこと」としているが、見つけ切らなかった。
    タイトルは、テラウチの遺書から『わたしはリアルワールドに旅立つ。だって、自分の死こそが超リアルの中になるほんとのリアルってもんだろ』

  • 少しずつ登場人物の本来の本質や過去をだしながら物語が進む流れが面白かった。自分が高校生の頃を思い出しながらあの頃と比較し、懐かしい感情や記憶が蘇る場面が多くあった。
    きらりんのゲイ友だちはある程度真相を知っているため最終的には警察にバレてしまうのではないか。個人的にはユウザンとトシはこのまま日常生活を続けながらも一生消えない深い記憶として苦しみ続けてほしい。最後までもやもやした息苦しさを残したい。

  • 2015.4/9〜11。大人では感じることのできない、高校生の心理。今の子がこうであるかはわからないが。子どもにも大人にもなりきれない不満や葛藤が痛々しくもあり、少し懐かしい気持ちにもなった。

  • ひとりひとりの闇がそれぞれあって、描き方がよかった。

  • 2015/02/02再読。
    前に読んだときも感じたが、リアルワールドってタイトルがあまりピンとこない。

    母親を殺した男子高校生(ミミズ)と同じ年齢の4人の女子高生(ホリニンナ、キラリン、テラウチ、ユウザン)。
    ホリニンナの携帯をミミズに盗まれたことがきっかけで4人の女子高生は男子高校生の逃走を助けてしまう。
    それぞれがミミズを見る視点や、ミミズが中心に入ることで普段見えなかった女子高生同士の関係性が少しずつ見えてきて面白かった。

  • 2014.12.07

    こういう小説最近どこかで読んだ気がする…と思ったら湊かなえ著『夜行観覧車』でした。
    ストーリー展開は少し違いますが、登場人物ごとに章が分かれていて、それぞれの視点で殺人事件が語られるところが似ているなという印象。

    母を殺したミミズの気持ちがわかるようなわからないような。
    女友達同士がお互いをどう思っているか、そしてそれぞれが深い悩みを抱えながら、友達を大事に思ってることが伝わってきた。
    高校生の、子供から大人になる過程の複雑な感情と危なっかしさがうまく描かれていた。ここを乗り越えられれば大人になれたのに、みんなちょっとずつレールを外れてしまったんだと思う。そういう青春ストーリー。
    最後の結末はハッピーエンドではないけれど、意外な終わり方が良かったと思う。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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