- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087467154
作品紹介・あらすじ
北の地で苛烈な戦をしていた幻王の正体は、楊令だった。燕青と武松は梁山泊軍への合流を求めるが、楊令は肯んじない。一方、呉用は、江南で叛乱をもくろむ方臘のもとへ趙仁と名乗って潜入していた。梁山泊軍との決着を待ち望む童貫は、岳飛という少年に目をかける。呉用と楊令は会合を持ち、今後の戦略について話し合う。国を揺るがす動乱が、北と南で始まろうとしていた。楊令伝、戦端の第二巻。
感想・レビュー・書評
-
一巻では、最後になって登場した楊令が今度は出ずっぱりだ。
「俺はね、汚れたのですよ、青燕殿。梁山泊軍にいたときとは較べられないほど、汚れきってしまった。そんな俺を待つことを、空しいと思われませんか?」
「汚れたかどうか、余人が決めることではない。おまえ自身が決めることだろう」
「俺は汚れましたね」
「いいな。子午山から降りてきたおまえは、若いくせいに非の打ちどころが無かった。それは、いくらか異常でもあった。人なのだからな。汚れを持っていて、当たり前と言っていい」
楊令はいま、新しい国を模索している。いまは、まったく具体的ではない。しかし、呉用とも、史進とも、公孫勝とも、比べてもまったく見劣りしないのが頼もしい。
今回の見所は、
呉用のスパイ大作戦と、
杜興が孟康に無理な要求を(泣き落としを使って)拝み倒す場面と、
楊令と岳飛との「運命の出会い」であろう。
「水滸伝」が19巻、「楊令伝」が15巻、しかしそれで終わりではなかった。現在「岳飛伝」を構想し、これで「大水滸伝(水辺の物語)」三部作を完結させるのだという。この物語がキューバ革命を擬しているのだとしたら、楊令伝は革命直後のキューバ、となるだろう。そして、岳飛伝はもしかしたらゲバラの最後になるのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4.0
コイツが岳飛か。。。
水滸伝からの主要人物が老いていく寂しさがあるのと同時に、セカンドジェネレーションがどんどんと湧いてくる楽しさもある。
そして梁山泊時代より確実に複雑な勢力図。
ええやん。 -
武松も明るくなったけど楊令も明るくなったと思います。やはり二人で焼く肉を食べると気持ちが和むのでしょうか?
相変わらず王進先生の所は良いですね。梁山泊のオアシス!出来れば家族で移住したい!!
方臘の宗教団体恐るべし、なんてったって数が凄い中国には国を傾かせる宗教反乱が数多くありましたからね。童貫元帥の今後の動きが楽しみです。
呉用が可愛そうです。もう少し気遣ってやってほしい。せめて戴宗はあんな事を言うべきではなかったと思う。
そして、英雄岳飛の登場です。これから彼はどのようにして宋軍に関わるのか楽しみです。 -
武松のくだりは、驚きでした!まさか…と。
楊令は、武松の背負っているものの重さを、
そしてそれが足枷になっているという事を即座に見抜いたのか。
やっぱり楊令は、只者じゃない。
彼は自分の事を「汚れてしまった」というけれど、
それは他人の弱さ、痛みも感じられる心を持っているという事。
真の強さを持ちながらも弱さを理解するのは、簡単なようで難しい。
楊令の頭領たる資質は充分すぎるほど。
味方ですらも、まだ若い彼を前に圧倒されてしまう気持ちが分かります。
そして、心のオアシス王進先生登場!(笑)
花栄のイケメン息子・花飛麟の高慢さが、どんどんなくなっていく…
子午山は、本当の強さとは何かを教えてくれる場所ですね。癒されます。 -
北と南で動きがある中、楊令がついに。
方臘のキャラクターも斬新です。
いよいよ始まる2巻目。 -
青蓮寺の目を逃れ雌伏していた梁山泊軍が、徐々にその姿を現わし始める。
しかし、それよりも大きく姿を変えたのが、江南一帯を手中にしつつある宗教団体の方臘たち。
ちょっと力をつけた叛乱予備軍だと思い、彼らの中に潜伏した呉用は、己の見る目が誤っていたことを知る。
ここで、ちょっと思ったのが、なぜ呉用自ら潜伏しなければならなかったの?ってこと。
戴宗のほうが適任では?
そしてこんな早い時期に、岳飛まで出てきちゃうのね。
魯智信が、切り落とした腕を焼いて自分で食べた水滸伝に対応するかのような、武松の、切り落としたこぶしを焼いて食べる一件。
水滸伝では、脱獄して逃げる途中に盲腸の開腹手術をして命を取りとめた白勝が、今作では医者となって、瀕死のけが人を開腹手術で救命する。
水滸伝と楊令伝。
今のところストーリーは並走している。
道が分かれるのは、一体どこでだ? -
大きな戦闘は無いが物語の方向性が見え始めた第二巻。
「幻王」となった楊令の真意。業を籠った右手を切り落とされた武松の変化。
後の南宋の英雄・岳飛の登場。童貫・楊令との邂逅。
特に気になるのが江南の宗教指導者・方臘。個性の強い人物が多い「水滸伝」の中でもかなり異彩を放っている。
スパイとして接近している呉用もその魔性に取り込まれかけている感が。
北では金国が勢力を伸ばし、南では「方臘の乱」が勃発寸前。そんな中、力を蓄え状況を注視する梁山泊。
今後、どのように史実や実在の人物を物語に組み込み展開させていくのか楽しみながら読み進めたい。 -
とにかく呉用がいじましいというかいじらしいというか愛おしい。
郝瑾と李媛が気になるぞ。というか郝瑾はいつもかわいい。
しかし史進がもう38になっているのか‥‥時を重ねた物語と感じます。 -
著者:北方謙三(1947-、唐津市、小説家)