魚神 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467864

感想・レビュー・書評

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  • 千早茜さんワールド全開な作品。

    幻想的で、肌に張り付くような気だるさと
    そこに自分が引き込まれてしまう妖しい空気感。

    この手の作品が大好きなので
    千早茜さん作品に夢中です。

    ホントに感動して心に残る本って
    レビューすら書けない。
    書くのがもったいない(笑)

  • 遊郭を舞台にしたお話。
    他の方も書かれてますが、酷い運命を辿っている割には悲壮感なく美しくまとまってます。主人公の白亜の浮世離れした不思議な雰囲気がそうさせているのかもです。他の方のレビューを見て、まもっと悲惨なラストになるかと思っていたので最後まで読んで少しホッとしました。
    スケキヨというとどうしても犬神家を思い出してしまうのはわたしだけでしょうか。。

  • どこか異世界なのか、それともどこかに存在するのか。夢中で読んでしまった。

  • すごく図々しいんだけどこの本を読んだ時に最初に感じたのは、
    圧倒的な既視感だった。

    え、千早茜ってあたしじゃないの?とまで思った。本当に不遜にも。

    <引用>
    「ねえ、スケキヨ」
    「何」
    「私がいなくなったらどうする?」
    「探すよ」
    「探しても、探しても見つからなかったら?」
    「ねえ、白亜。僕は白亜がいなくなっても決して泣いたりなんかしないよ」
    スケキヨが立ち止まる。私をまっすぐ見つめる。
    「人間は泣いたり怒ったりしたら、その事を忘れてしまうんだ。忘れなくても泣いたりしたらその痛みは確実に薄まっていく。そのために泣くんだ、忘れるために。だから僕は絶対に泣かないよ。そして絶対に諦めたりはしないから安心して」
    「うん‥‥」
    私は自分に言い聞かせるように何回か頷いた。
    「じゃあ私もスケキヨがいなくなったら、泣かないで探し続けるね」
    「いや、白亜は僕がいなくなったらたくさん泣いて、僕のことなんか忘れてしまうといいよ」
    <引用終わり>

    読みながらその既視感の正体をあたしは、ゆるゆると紐解いた。
    そうだ、すべて、あたしの敬愛する作家の小説の、なんらかのキーワードに
    オーバーラップするのだ。
    何度も何度も読み返し、まるで自分が書いたかのように詳細までキオクしている、
    そのコワク的な小説たちに。

    例えばこうだ。

    貘のくだりは、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」
    郭の悲哀は、隆慶一郎「吉原御免状」
    スケキヨ、という響きは横溝正史「犬神家の一族」
    二人の呼応のしかたは宇江佐真理「雷桜」
    隠れて思い続けるそれは、もしかしたら東野圭吾の「幻野」「白夜行」
    そうして全体に流れるゴシックかつペンダントリな雰囲気は、
    昭和の探偵小説のそれを思わせる。
    小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」
    あるいは上記と並んだ三大奇書、夢野久作「ドグラ・マグラ」

    読み終わって重たく、でも充実した感触。満足。
    最後のくだりはやや、江戸川乱歩を彷彿とさせなくもない。


    うーん、これはまさに、極上の贅沢読書。
    こういった作家さんに出会えるのも、御褒美なのかもしれない。

  • 全体的に物静かで綺麗なお話でした。千早茜さんの作品はセンスがいいというか、言葉選びとか雰囲気が垢抜けていてかつ色っぽくて好きです。
    一気に読ませるような勢いはないのですが、徐々に不思議な世界観に引き込まれていきました。

    映像作品になったらぜひ見てみたいです。
    蜷川実花さんが監督されたさくらんがイメージに近いかと思ったのですが、そこまで極彩色ではなくて、もっと透明感のあるキラキラしたイメージを受けました。
    遊郭が出てきたり、人間のドロドロした部分も描かれているのに現実味がないというか、不思議な世界観の作品です。
    主人公の白亜の感情が希薄だからかもしれませんね。

    白亜とスケキヨは雷魚と伝説の遊女の生まれ変わりなのかなぁ。

  • 千早茜先生の筆致が好きすぎる。すごすぎる。直木賞のあとはまった。何度も読みたい

  • 解説でも触れられていましたが、情景が目に浮かぶような言葉遣いが美しい文章でした。
    初めは絵画を観ているような気分で読み進めていきましたが、クライマックスに近づくにつれて登場人物の心情が色濃く描写されていき、物語が色づいていくような不思議な気持ちになりました。

  • 言葉の表現がこの小説の世界観を艶やかに滑りとした感覚を読者に持たせてくれる良い小説

    水面の表現とか黒く甘い匂いの血とかドロッとした物を感じさせる効果的で世界観に浸れるから好き

    ただし話としては特別面白いかと言われればそうでもない
    血の繋がりが怪しい兄弟の小さい頃の愛から拒絶までの話と
    遊女としての白亜の日々、剃刀男こと蓮沼との心の通い
    そこからスケキヨと再会してこの日々に幸せを感じている

    ふーんって感じで事件は色々あったが、島を抜け出して本土に行き現実を知る展開とかそこで何か意外なことが起きるともっと面白かったかもしれないと感じた

  • 現実的と御伽話の狭間にあるような、
    不思議なお話だった。

    ストーリーについてはの感想はもう一度読んでから書きたい。

    読んでいる最中は物語の展開も気になったのだけど、千早さんの頭の中が気になってしょうがなかった。

    何をきっかけにこの話を思いついたのだろう?
    これを書くために、どうやって道筋を立てて物語の種を集めたのだろう?
    どこに足を運んだのだろう?

    そんなことばかり考えていた。

  • 夢中で読んでしまった。
    千早さんの話ってなんでこんなにも夢中になるのだろう

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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