魚神 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467864

感想・レビュー・書評

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  • 二度目ましての作家さん。
    読んでいる間中、ニオイと水気を感じるんですよ。
    きれいな水ではなく、澱んでいたり、臭っていたり、森の湿気だったり。
    ニオイと一緒に湿った空気が周りを満たし、まとわりつく。

    情景描写が上手いので、物語の世界にすんない入り込める。
    穏やかな二人の時間は、やがて引き裂かれる。
    途端に薄ぼんやりとしていた景色に生身の色が加わって
    感情というものが頭をもたげてくる。

    後半に入ってからの怒涛の展開に、どこに向かうんだ?
    と思ったけど、これは帰る物語だったのですね。
    好みの分かれる作品のようですが、私は大好きです。
    他の作品も読もう。

  • ジャンル分けが難しい。独特な世界に魅せられるのは確かだと思う。
    あらすじ(背表紙より)
    かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。独自の文化が息づく島で、美貌の姉弟・白亜とスケキヨは互いのみを拠りどころに生きてきた。しかし年頃になったふたりは離れ離れに売られてしまう。月日が流れ、島随一の遊女となった白亜は、スケキヨの気配を感じながらも再会を果たせずにいた。強く惹きあうがゆえに拒絶を恐れて近づけない姉弟。互いを求めるふたりの運命が島の雷魚伝説と交錯し…。

  • こんな萎靡感に染みこんだ文章は毒そのものだ…処女作としてストーリの構成はまだすこし青さを感じるんけど

  • 大筋のストーリーは可もなく不可もなく。設定はライトノベルのようだけれど表現は所々文学的で、それがなんだかちぐはぐな感じがしてしまったな。千早茜はもう一冊気になる本があるけど、デビュー作(多くの場合その著者の渾身の出来)がこれなら購入を迷うところ。

  • 雷魚と遊女の伝説がある島に住む美しい捨て子の姉弟。それぞれ売られてからはお互いの存在を感じながらも会うことはなく別々に生きていく。

    時代がいつともわからない独特の世界観。描写が美しく、耽美。泉鏡花文学賞を受賞しているらしいのでなるほどと。スケキヨを失ったあと白亜の淡々とした世界に、波風をたてる蓮沼の存在がいい。

  • 本土から隔離され、遊廓で栄えている島の話。

    描写が妖しく美しい。島の伝説に絡むような雰囲気が、より一層世界観を充実させていたと感じる。ただ、伝説と、白亜とスケキヨの似通った要素(交錯している点)が足りないと感じた。その点については不満が残る。

    時代や国がはっきりしない舞台設定の一方でこれだけ圧倒させるのは、文体や雰囲気が繊細で芸術に匹敵するものがあるからだろう。そして、蓮沼の存在が特に話を引き立てたと思う。

    彼らの奥底に優美に光る感情を感じたのは私だけであろうか。最後に一言、美しい。

  • 閉塞的な架空の島で、お互いしか拠り所のない美しい姉と弟という設定だけでワクワクする。そして、千早さんの紡ぐ言葉は時には妖しく、また時に色っぽく、むせかえるような遊郭の匂いや、猥雑な島の雰囲気や、色彩など想像力をうんと刺激してくれました。スケキヨとの歪んだ関係を応援しつつも、蓮沼も男前で素敵だった。千早さんは現代物しか読んだことがなかったけど、架空の世界の話もかなりいい!ちょっと嵌ったかも。

  • 文明的にも、社会的にも閉ざされた、遊郭が立ち並ぶ島。お互いがお互いの唯一の拠り所の、美しい捨て子の姉弟…ってだけでだいぶ心惹かれた上に、もう文章から漂う島全体の生臭さと、霧が立ち込めてるような湿っぽさがとっても好みでした。スケキヨと再会して欲しいと終始思いつつ、蓮沼がすごくいい立ち位置、キャラクター性だったなと。

  • 最後まで悲しい。

    なかなか会おうとしない二人にむず痒いものを感じたな。「早く会いなさいよ!」って。

  • 独特の世界観。スケキヨと白亜は互いに想い合ってはいるけど確かにそれは恋愛感情ではないのではないかなと。蓮沼が切ない

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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