- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087480665
作品紹介・あらすじ
素敵な体験を綴る初エッセイ。第13回日本文芸大賞エッセイ賞受賞。
感想・レビュー・書評
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高倉健さんの、エッセイ集。
読書会で紹介していただいて、
その後、とある本屋の平積みでフラッと。
なんとも人となりが偲ばれる内容で、
何事にも真摯だったのだなぁと、あらためて。
個人的には「鉄道員」や「南極物語」、
「ブラックレイン」が、印象に残っています。
久々に何か借りてこようかな、なんて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間、高倉健がここにいる。まずそう思いました。
エッセイに綴られている言葉は、自分を飾ることもなく、ひとりの男として仕事や友情、恋愛などのことを書かれています。
その姿は自分の考えが至らなかったときは素直に反省されます。仕事柄、海外を旅されることも多く、そのお国ならではの美学に感動され、またその陰に隠れた哀愁に心を寄せられます。また日本ならではの心遣いや伝統などにも深い感銘をうけられます。仲間の方々を大事にされファンの方を蔑ろにすることもありません。
ひとりの血が通った温かい人間高倉健がここには存在していました。なんとも綺麗な精神をお持ちな方です。
それだけではなく、愛する人との別れに傷つき、愛に臆病になってしまったような部分も見せてくれます。
とっても大切な人こそ、深く傷つけてきたような気がする。傷つけたことで自分も傷つく。そしていつのころからか、本当に大事な人からはできるだけ遠ざかることにした。くっつかなければ、別れることはない、と。
人を想う気持ちは自分ではどうにもできない心。また一緒になりたいとかは思わないけれども、あの時に感じた想いは、今も宝石のようにキラキラしているのです・・・と。
愛とはまた次元の違う愛おしさです。なんだか崇高な気持ちにさせられました。
また母の愛情溢れる気持ちを少し疎ましく思いながらも、母に褒められたくて一心に仕事をしてきた息子としての姿も見せてくれます。
もう、この部分にジンときましたね。抱きしめてあげたいなんてね、思っちゃいましたよ。 -
2014年11月に亡くなった名優・高倉健によるエッセイ集。飾り気のない文体で読者に語りかけるように綴られる23の小品は、時にいじらしく、時に寂しげに、時に嬉しげに、時にいじわるに、時に優しく、著者の人間味を浮かび上がらせる。本書のタイトル「あなたに褒められたくて」は亡き母への思いを綴った最終章の小品から。
とにかく高倉健が素敵すぎる。こんな俳優さん、これからの時代には出てこないと思う。飾り立てることなく、言葉に誠実で自分に正直。それほど高倉健の映画を観たことがあるわけではないが、名優として陰影に富んだ演技をされるの理解できる。同じ男として憧れてしまう程。
素敵な生き方をする人のもとには素敵な人が集まる。それを高倉健の眼で見て、高倉健の心で感じ、高倉健の言葉で綴る。そんなエッセイが素敵じゃないわけがない。 -
以前から読んでみようと思っていた高倉健さんのエッセイ集。亡くなったのを機に手に取った。
「兆治さんへの花」は、如何にも健さんらしい。
「お姫様の腰かけ」なんて、ほほえましくもある。
「あなたに褒められたくて」は、健さんの心の奥が心がのぞけるようで、こちらの心もホッと温かくなる。 -
健さんの人柄にそっと触れることが出来るような気がする。なんだか、一緒にコーヒーを飲みながら語りかけてくれているような? そんな不思議な気持ちになります。仕事で出会った人たちのエピソードや人と人との繋がりを大切にしてきた。健さんならではの話や題名にある。『あなたに褒められたくて』の母との思い出話はとてもじんわりと暖かくそして切なく…。テレビや映画とは少し違う健さんの魅力があふれています。
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私は「高倉健」という人を誤解していたのかもしれない。
人として出会いを大切にし、不器用な1人の男性だったと思わせてもらった。 -
寡黙で不器用なイメージの役柄が多かったように思うのですが、この本を読むと細やかな神経を持った社交家のようでしたね。北条得宗家に極めて近しいご先祖様が居たり、檀一雄が住んでいたポルトガルの住居を訪ねたり、村田兆治の引退セレモニーに感動してさして付き合いもないのに手紙に華を添えて自身で届けたりと、意外な面が多くてびっくり。昭和の大スターの知らなかった魅力を今更ながら認識しました。
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「十二支のコンパス」
スタッフ達の頬がげっそりと削れて行く頃、撮影が終わる。
みんなと別れる淋しさがやって来て、また群れを離れてさすらう日々のしんどさを思うと、仕事はうまくいったのに、なぜか沈んでしまう日が待っている。
次の仕事からは、気持ちなんか入れずに鼻歌まじりで口笛吹いてやるぞ、と思いながら、また次の仕事も、きっとクランクアップがつらくなるような人達との出会いを求めてるんでしょうね。
「お心入れ」
思いが入ってないのにやろうとするから具合が悪いので、本当に思いが入ってるのに、入ってないそぶりするところが格好いいかもわかんないですね。
その他にも、、、
ウサギのお守りはチエミさんからのプレゼントだったのかな、とか、大スターであってもお母様にとっては健さんははいつまでたっても踵のあかぎれを心配させる息子であったんだな。とか。
訥々と緩やかに語られる中に滲む、周囲の人々との熱い温度。
私もじんわりと、ぬるく装いながらも心では熱い愛情で相手を思いやるそんな人間でありたいと思った。 -
あなたが誰なのかは、読む前から察しがついていた。
稀代の大スターも、人間であることには変わりない。一人の日本人の男性だ。
いろんな作品に出演し、いろんな人々に出会い、いろんな旅をしたことがこの本に詰まっている。
高倉健さんのようには行かないだろう。
けれども、私も貴女も、人生という旅をしている一人の日本人であることには変わりない。
どんなにお金を儲けても、どんなに有名になろうとも、人はみんな一人で死んでゆく。
高倉健さんは、世の中にはそっと別れを告げられた。
ちょうど、鉄道員で、主人公が定年間際に極寒の職場である駅のホームで帰らぬ人となったように。
私たち日本人は、心の故郷のような高倉健を喪ってしまった。
けれども、高倉さんが出演した映画作品はずっと残っていく。
彼の生き様に涙する人々が、世界の何処かに存在する限り。
ありがとう、健さん。
この本を読んで、また沢山の映画を観たくなりました。