著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087712728

感想・レビュー・書評

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  • 映画化されると知って、読んでみた1冊。多分、架空の島・美浜島を巨大な津波が襲い、生き残った3人のその後を描く。冒頭からの津波のシーンは、目を覆いたくなるようなもの。思わず、奥付で発売日を確認してしまった。実際に東日本大震災を経験した後の作品だったら、そこで読むことを止めてしまったと思う。作品自体は悪くないのだが、生き残った3人の誰にも、どこにも救いがないので、星は2つ。とても息苦しい作品だった。

  • *突然の津波で壊滅した小さな島で生き残った三人の子供。美しく魅力的な美花、美花に夢中な信之、父親からの虐待に耐えつつ自分を嫌う信之を兄と慕う輔。被災後二十年が経ち、ある秘密をもとに三人の運命が動き出すー*
    本当に三浦しをんさんの作品?と、まずは非常な驚き。なんと言っても容赦なく救いがない。登場人物の誰にも共鳴出来ない。なのに、それぞれのどろりとした感情、満たされない焦燥感、声なき慟哭が見事に表現されていて、いつの間にか引き込まれる。救いようのない読後感なのに、自然と二度読みしてしまった。

  • 複雑で強烈な作品で一言で感想を書くのが難しい。というかこの作品を軽々しく評する能力が私にはない。

    希望と絶望。
    望みと失望。
    慈しみと蔑み。
    様々なあい反するものが描かれている。

    自然による暴力、人の暴力。
    そして思っていても届かない気持ち。
    他人は自分が求めているようには考えてはいないという事実。
    求めても得られない愛情。


    残酷な現実が次々と押し寄せる小説だったが哀しみが胸をうちました。苦しいです。

  • 子供の頃こら父親の暴力に耐え、大人になってからも父親の暴力にあいながら、ただ耐える少年。
    自然が起こす暴力、人の暴力に暴力で立ち向かう少年。
    『光』というタイトルはどういう意味なのだろう?

  • 一気に読んでしまいました。
    三浦しをんの本は「神去なあなあ日常」しか読んだことなかったのと、「まほろ」のイメージが強く、こんなにダーク(?)な本も書く方なんだなと思いました。

    救いようがない。ずっと薄暗いもやの中にいるような感覚。救いようがないけど読み進めてしまう…それぞれの行く末が気になって。

    島という閉鎖的な環境で、暴力から逃げることが出来ない輔。
    島で唯一の美女(?)とのそのことしか考えられないお盛んな時期の信之。
    自分の美貌をすでに自覚し、信之の体しか知らないことにやや物足りなさを感じている美花。(美花目線の章はなかったけど、私はそう感じました。男なんて私にかかれば…って思ってて、信之以外でも試したいと思ってそう。)
    そんな少年少女が住む小さな世界を波が全部壊してしまった。

    生き残った3人はそれぞれ大人になって…という話でした。

    登場人物の中で特に輔が気になる存在でした。
    初めて自分に優しくしてくれた人(ゆき兄)にくっつく姿が健気で切ない。
    信之は輔に一欠けらの情が無いようで悲しかった。
    信之は青春時代の性欲や綺麗な思い出にしがみついて、余生のようにただ生きてるんだな。島で一から子孫を残すことになるんだと思い込んでいた女の為に。


    誰が悪かったのかという話ではなく、ずっと幸せでない者たちが渦の中でぐるぐるとまわってもがいているようでした。
    その苦しい渦から1番に出たのは輔だったのかもしれませんね。

  • 2009/04/04

    意味などない。死も不幸もただの出来事だ。それらはただ、やってくる。


    暗い。重い。胸糞悪い。
    でも、三浦しをんらしい文章。結局一気に読んでしまった。
    血でも友情でもない絆を描くところは相変わらずで、描写が巧みっていうか非常に私好みなのも変わらない。
    引き込まれる、力がある。
    暗い海の底でうっそりと息をする獣の瞳に宿る光。


    どこまでもつながる暴力の螺旋。
    輔の哀れさと、信之の哀しさと。
    南海子の空虚さと椿の幼さと美花の身勝手さと。

    『暴力はやってくるのではなく、帰ってくるのだ。』



    まほろ~がなぜか読みすすまないあたしが、何故か一気に読んでしまったぁ
    あたしは輔が一番気になるなぁ。好き、とか、かわいいとか、かわいそうとか、どれも違うけど。一番ひっかかる。共感?
    卑屈に相手の顔色を伺って、撫でてくれる手をいつまでも待っている。あるいは、押し流してくれる波を。

    しかしあらゆるヒトは、特に女は、南海子なんじゃないだろうか。


    なんだか信之は一番かわいそう。一番「あの日」に翻弄されている。



    『こうなると思ってたんだよ。こうなればいいと思ってた。俺がお願いしたとおりに津波が来てそんでみんな死んだ!すげえよ、みんな死んだよ絶対死んだよね。ね、そうでしょ、ゆき兄!』




    あたしは、タイトルは希望の光でも救いの光でもないような気がする。
    たとえば、泥と白骨に埋もれた島の灯台の放つ光。
    信之の瞳に眠る光。
    さいごの瞬間の輔の瞳にきらめいた光。
    昏く、鈍く、鋭く、またたく光。





    同情や愛情では恢復しない傷があるかぎり、刑罰はひとを救わない。自分に癒えることのない傷を与えたものが、たとえば刑務所に三年入ったからといって、うれしくもなんともない。刑罰にはせいぜい、「これで我慢してくれ」と、癒えない傷を覆って誤魔化す絆創膏程度の力しかない。腹が減って死に瀕した生き物に、食い物に似せた発泡スチロールの模型を与え、「腹を満たせ」と言うようなものだ。ありがたがって模型に食いつくやつは馬鹿だ。

  • かなりどぎつい描写があるものの、
    見る間に物語に惹き込まれていきました。
    人を信頼することとは、命の重み、について考えてしまう内容でした。

    淡々と自分を押し殺して生きてゆくことは可能なのでしょうか。

  • なに?これ

     なんだがさっぱりだ。かすかな起承転結はあるものの、殺人とエロしか残らない。主人公のあまりにフラットな心を読むのかなぁ。よくわかんないままに読了。

  • 冒頭のシーンがあまりにもタイムリーすぎてしんどい…。現実は小説よりあまりに残酷だ。みんな光を求めて生きるのにどこからも光が射してこない救いのない物語だった。三浦しをんの凄さと抽斗の多さを感じる一冊。2011/195

  •  けっこう沈んだ…。
     報われなさすぎでしょ。

     信之の冷たさにもゾッとする。

     人って、何を以て相手を理解したと
     思うんだろう。
     話した言葉の数? 過ごした時間?
     
     きっと、誰かを完全に理解することは不可能だ。
     それでも、人は相手の心の一部しか知らなくとも、
     残りの知らない部分も含めて信じることができる。
     そうやって、人とつながっていくのだと思う。

     愛されずに育った人間は、愛し方を知らない。
     当たり前だ。
     もっと切ないのは、大人になって誰かから
     愛されても、それがわからないことだ。
     ささやかな幸せに、自ら入っていけない。
     それがやりきれないなあ…

     なんで「光」ってタイトルがついてるのか、
     読み終えてからふと考えた。
     自分にしてはめずらしいことだ。
     普段はあまり気にしない。

     たぶん違和感を感じたから。
     どこにも光なんてなかったじゃん!
     って、ちょっと憤りが…
     
     でも、よーく考えたらあった。
     ノブユキの光はミカ。ミカの幸せ。
     ミカのために山中を殺し、輔を殺し、
     他の人と結婚しても子供がいてもなお
     ミカのためだけに生きてる。
     
     輔にも光はあった。
     ノブユキが少し、あとは、波がすべてを
     さらっていってくれること。
     
     人って、何かしらの光を見つめながら生きてる。
     どんな小さな光でも、それを頼りに生きていける。
     それを失えば、たとえ物理的には生きていても、
     真っ暗な闇の中ではもう死んだも同然なんだ。

     いやあ…胃が痛むお話だった。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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