著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087712728

感想・レビュー・書評

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  • いろんな小説の内容を寄せ集めたような小説だった。津波のシーンはわざと分かりにくく書いているのか、私の理解力がないだけなのか。

  • 「意外です。ダークサイドしをん」
    (ぼーのさん)

  • 東京からはるか南にある勾玉の形をした小さな美浜島で暮らす信之(15)。
    両親と妹と一緒に暮らし、来年には高校生になるごく普通の少年。
    同い年の美花とのセックスを覚えて、毎日そのことばかりを考えている本当に平凡な中学生だった。

    ある夜、家を抜け出して美花と待ち合わせした高台の神社に行った信之。
    幼なじみの輔はなぜか信之になついていて、信之についてきていて。
    その時、海底地震による大津波によって三人の目の前で夜の海が大きくうねり、島の全てを飲み込んでいく。

    家も家族も何もかも波にさらわれ、叩き潰されたそのあとに残されたのは信之たちと数人の大人だけ。
    そして美花が「助けて・・・」とつぶやき、信之は殺人を犯す。

    15年後。
    市役所に勤め、妻と幼い娘椿(5)とともに平凡な人生を歩んでいた信之の前に突然輔が現れて・・・

    こういうストーリーのときって大抵喪失と再生の組み合わせっていう構成になってるもんなんですが、これはちょっと違った。

    理不尽な暴力はある日突然人々を襲い、絶望のどん底や死の淵へとさらっていく。
    そのことを理解していた信之は、娘の身に理不尽で悪意に満ちた暴力がふるわれても全く動揺はなく、娘は単に自分と同じようにかろうじて生き延びてここにいるんだという淡々とした気持ちがあるだけ。
    娘に起きた出来事にどう対処したらいいのかわからなくて感情が昂ぶって信之につめよる妻の南海子に、
    「椿を襲った犯人を探し出して殺してやろうか?」と軽く口にする信之。
    平凡に生きてきた妻の南海子は、犯人さえわかれば本当に行動に移すようなそぶりの夫に初めて「これは誰?夫は一体何者?」恐怖心を味わい、あんまり夫の過去に
    こだわらず結婚した自分に激しく後悔して怯える。

    そんな風に人としての心を喪ったまま、かろうじて人の形をとりながら生きている信之にとって特別な存在の人が一人だけいる。
    女優として成功している美花とは接触もせずに見守るだけの存在だったけど、彼女を脅かす存在を知ったとき、信之はためらいもなくその存在を始末しようとします。

    美花も津波とそして殺人という出来事のせいで自分が人としてではなく、人のフリをして生きていると感じている。
    その彼女にとっても信之の暴力に対するためらいのなさは怖いし、でも汚いことを信之に任せて自分の地位を守ろうとしているってことも自覚はしてる。
    彼女は悪女じゃないらしく、人間のフリをしようとして頑張ってる。
    でも、女優として仕事に没頭もしきれずに中途半端な地位にいるように描かれている。
    幸せを欲しがるフリをするんだけどその意味がよくわからないようです。

    信之は夢も希望も持ってない人物として描かれてる。
    明日が、もしくは将来が揺るぎないものだと思っている南海子のことを奇異な目でみるほど(笑)
    一体何の根拠があってそんな風に思うのか理解できない。
    明日に何の希望も期待もしてない信之なので、そういう場合絶望的な気分になるんじゃないかと思ったけど、
    『人としてのカタチをとるのは一時だけのことで、(中略)いつかはなにもかもが塵になる』(本文より)
    って淡々としてて。

    ラストのほうでは平凡な南海子が信之の殺人を知ったときに、そのことがこれからの自分の人生に心躍るスパイスになったと感じたところでは思わず笑ってしまった。
    バレたら絶対世間体を気にしてパニくるくせに、それが平凡な人生の刺激になるってどうなんだと(笑)

    あと、灯台守りの老人の手紙に不意をつかれて泣いてしまいました。
    つたない文章が真摯な気持ちを伝えていて・・・

    『供よう供ようの日々でした。
     船から花のたねをかって港にも美浜にもまきました。
     でも毎ばんひとだまが見えます。さようなら』(本文より)

    喪ったまま虚ろなまま生きていく・・・生き残ったことに特別な感慨はなく、人としてのカタチをとっている自分にもいつか自分にも大きな暴力が帰ってくることを覚悟しながら生きていく・・・そのことにどうしてか心揺さぶられてしまった。

    文庫本になったときに加筆修正されちゃかなわんと思って単行本を買った。
    (加筆修正されるかどうかもわからないのに・・・)

  • 天災ですべてを失った中学生の信之。
    共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。
    二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。
    あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。

    恐ろしく暗い話だった。
    過去から逃げ、結婚し子供もできて公務員として暮らしていた信之の前に、島の生き残りの輔が現れる。輔の恐ろしいまでの信之への執着心。
    なぜこんなことまでするのだろう…なぜここまでしてしまったのか…だれも幸せにはならない結末で終わってしまった。


    三浦しをん 舟を編む がとても好きで、今回読んでみたけど,この話は暗すぎて重すぎて好きになれなかった。

  • 重い…こんな暗い話も書けるなんてこの作者、幅広い。
    どいつもこいつも身勝手だな
    最後の島の描写がよかった
    娘の幸せを祈る

  • 297


    東野圭吾さんみたいだなーと思って読み終わり、他の人のレビューをみたら白夜行みたいとあったので、そうそうそれそれ!と膝を打つ。ちょっと桜庭一樹さんぽくもあるかな。
    所々に出てくる光がとても暗い。
    三浦しをんさんとは思えない、暗い小説。

  • それぞれの個性がすごく強く、それぞれの人生が運なのか自ら選んだものなのかと考えてしまう。諦めを前提に生きる辛さ。震災前に書かれたものと知り驚いた

  • 津波に襲われた美浜島で生き残った島民5人と観光客1人。
    秘密を暴こうとする者、隠し通そうとする者。

    女を助けるために犯した殺人と、それを隠蔽するために更に犯す殺人が東野圭吾の「白夜行」とかなり似ている。
    内容とタイトルの関係性まで似たイメージ。

    私はこの作品にまったく光を感じなかったけど、登場人物が真っ暗な中でも生き続けられたのはそれぞれ何かしらの光を見ているのか、あるいは錯覚しているのかと思う。
    人が人でなくなってしまう落とし穴は案外そこらへんにゴロゴロあるんじゃないかと思った。

  • 白夜行の雰囲気です。
    三浦しをんと言えば、まほろや舟を編むのイメージだったので、
    こういう作品も書くのか~。と発見でした。
    でも、暗すぎる!後味も悪いし。
    1番気になったのは美花。
    結局、彼女については薄っぺらなままでしたね。
    そこがわざとなのか、私が読み取れないだけなのか…。
    信之にも南海子にも、娘の椿にも、
    光のある未来はなさそう。後味が悪すぎる~。

  • これは、重たい。

    離島での津波で生き残った少年少女の3人が屈折した精神の下で生きる。死ぬ。

    三浦しをんの振幅の大きさにビックリ。読後感の心地よいイィ話を書く人の印象だったのだが、これはダーク。救いがない。こんなのも書くんだと、凄いですね。

    人を殺したあとの淡々とした感じが印象的。達成感や後悔といった感情の高まりがなく、あっさり話が進んでいくところが、かえってゾッとした。

    かといって、つまらないかといったらそんなことはなく、とても面白いのです。引き込まれるのです。

    特異な環境・体験をした人が一般人とはまるで違う価値観、生死感を持ったとしても、それにしたがい必死で生きている様子を書いている...のかな。全く共感できない感情だが、それぞれ命いっぱいやってるから、面白いのかな。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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