ここに消えない会話がある

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713053

感想・レビュー・書評

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  • 「普通に生きてる」ということがいかに難しい事なのか、なんとなく繰り返される日常の中でそれをちょっと考えました。

    ラジオテレビ欄配信会社で働く若い人々の群像劇なのだけれど、特に女の岸さんが「気の合わない人とも話して、駄目な人を愛し、愛されないと、私は寿命をまっとうできないんです」という言葉は新鮮だった。

    私は気の合う人としか話をしたくないし、人生に無駄なことはないとわかっていても無駄は省きたいと思う。でもそんな人生楽しいと思わない人もいるんですよね。

    「よく子どもの読書離れがどうの、「本を読め」だのと聞くけれど、そんなの放っとけばいい。本なんか読んだって、頭が良くなるものか。ただ、傷ついたときは本を読め。芸術なんてものはそのためにある。」

    この言葉も好きだなぁ。

  • 『ここに消えない会話がある』

    新聞のラテ欄を作る仕事をする若者たちの話。
    同じ職場なのに、雇い主が違ったりして色々と複雑。


    読み出してすぐに、「またラテ欄ですかナオコーラさん」とツッコミを入れてしまった。
    何気ない会話シーンを、日常の思想シーンのなかに格言めいたセンテンスが入ってくるのはいつもの調子。安心のナオコーラクオリティ。


    --------------------------------

    『ああ、懐かしの肌色クレヨン』

    工場で働く鈴木は先輩の山田さんが転職することを知り、
    彼をデートに誘う。
    鈴木は色が白い女で、山田さんは優しい男性。


    色が白いことの描写があんまり詳しくなかったけど、彼女はアルビノだったのかな。よくわからないけど、惹きこまれる話だった。


    アルビノについて
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%8E

  • 「小説すばる 2009.4」

    やはり同年代の作家さんだけあって、共感するフレーズがあちらこちらに鏤められている作品であった。

    彼女の作品は、平凡な日常にある種のスパイスを与えてくれる。
    それはストーリーの中でもあり、私自身の生活の中でもある。

    【付箋メモ】
    生きるのが面倒なのは、不幸だからではなく、生半可な幸せと堪えられそうな不幸が交互に訪れるからではないだろうか。(p36)

    世間の規範から外れた幸せが欲しい。
    ひとりだけで、こっそり笑うような。(p38)

    誤解が起きたら、言いわけはしないことだ。面倒だからだ。人の噂話はしない。自分の噂は放っとく。否定するのもばかばかしいことだ。
    なんでもかんでも得するように努力することが人生の近道ということはない。得するように考えることは、神経を擦り減らすことになる。(p46)

    二人で黙るのは楽しい。喋ると「伝え合う」ような気分になってしまうけれど、黙ると「共有」のような気持ちになる。(p68)

    痛みというものは消えることがないが、薄らぐという性質を持っている。(p69)

    先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟に向かわせるものではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。(p69)

  • いままでに出会ったことのない、
    文体というか。
    不可思議ー!

    拙い、わけじゃないんだけど。
    極力、文字数を減らして
    シンプルにしてる感じ。

    ハマります。
    ナオコーラワールド。

  • 今まで読んだ山崎ナオコーラ作品でベストスリーに入る。(一番好きな作品のタイトル忘れてしまった。文学界で読んだんですが)

    会話の暖かみとぬけたようなリアルな雰囲気。

    味気なくも感じる物語の世界で、たまにキツイやりとりや文章が出てきてぐっと来てしまう。

    同時収録の「ああ懐かしの肌色クレヨン」もよかった。
    肌色のクレヨンが存在した時代も私は好きだとかなかなか言えない言葉だと思う。

  • ナオコーラの小説は、内容よりもフレーズが心に残る。ぐっとくる台詞もかなり多い。
    なので、読み終わると本は付箋でいっぱい。
    でもどれを読んでもしばらくすると話は忘れてフレーズしか覚えていなかったりする。

    淡々としているようで内側はすごく熱く生きている人たち。

  • 新聞に掲載するラジオ・テレビ欄の作成と校閲を仕事にしている非正規雇用者の広田、岸の物語。物語、というか、タイトル通り<会話>、あるいは<思考>の断片で成り立っている一冊だ。
    働くことは詩を詠むこと、という言葉が途中で出てくるが、まさしく詩篇のように感じる箇所もあった。彼らの社会生活を語っているようでありながら、概念を詩にしているようでもある。
    抽象的な印象を抱くことが多い山崎ナオコーラの作品は、時折はっとするくらい、ああそうだな、と頷きたくなるような「当たり前のこと」を的確に言葉にすることがある。
    なんでもかんでも得するよう努力することが人生の近道という理はない、とか、仕事をしていて相手を非常識だと思う時は相手もそう思っているだろう、とか、改めて言葉にされると、すとんと胸に落ちる。彼女の作品はこういうところが好きだ。

  • "世間の規範から外れた幸せが欲しい。
    ひとりだけで、こっそり笑うような。"


    山崎ナオコーラの小説には
    いつもハッとさせられる。

    ありふれた日常風景のなかに
    一輪の花がぽんと差しだされたように、
    モノクロの行間にさりげなく
    心を捉える、一行の言葉。

    『ここに消えない会話がある』は、
    ラジオのラテ欄を担当する
    とある新聞社の制作チームが物語の舞台。

    日々の様子を淡々と書き綴ったような話で、
    決して大きな出来事はないけれど
    日常のちょっとした会話や
    職場の人間関係をささやかに映し出す。


    "先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へ向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。"


    ドラマチックなことが起きなくても
    そこに物語は存在する。
    なんてことない点と線のたちが、
    重なり合って一枚の絵ができるように。

  • タイトルで借りてきたけど、段が下がってて文字数もそんなに多くなくて読みやすそうだけどちょっと登場人物の把握が上手く行かなくて読みにくかった。

    何もかもうまく行かない。そんな日常。

  • 夾竹桃の花が咲き、世界は甘く。

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著者プロフィール

1978年生まれ。「人のセックスを笑うな」で2004年にデビュー。著書に『カツラ美容室別室』(河出書房新社)、『論理と感性は相反しない』(講談社)、『長い終わりが始まる』(講談社)、『この世は二人組ではできあがらない』(新潮社)、『昼田とハッコウ』(講談社)などがある。

「2019年 『ベランダ園芸で考えたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山崎ナオコーラの作品

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