恋するソマリア

著者 :
  • 集英社
4.09
  • (64)
  • (112)
  • (25)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 626
感想 : 95
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715842

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (2016.3.30)
    (316P)

  • カートを摂取した時と同じ症状が出る(多分)。出てくるみんなが愛おしい。

  • タイトル「恋するソマリア」には二重の意味が込められています。
    ひとつは、ソマリアを振り向いてくれない美人女性に見立て、追えどもつかまえられない片思いの相手として描く。
    もうひとつは、実在の若き美女・ハムディ姫への恋です。
    わずか17歳にしてケーブルTVの世界に入って、政治家へのインタビューでカネをひきだして支局員を食わせるという政治力・経営力を発揮する。美しく、胆力があり、知的。いったい高野が惚れこんだこの女はなにものなのか。
    「私は有名になりたいの。目標は大統領になること」
    「有名になりたい」ということばの率直さ、力強さ。さわやかな立身出世主義の到達目標が大統領というのがすごい。
    いいぞ剛腕ハムディ姫。統一ソマリアの大統領になった姿をぜひ見たい。

  • 語学の天才による最新作。海賊の国・ブラックホークが墜ちた国・無政府の国というイメージしかなかったソマリアにここまで入り込んた彼の功績は大きい。前作「謎の独立国家ソマリランド」の続編的な本。写真も多く挿入。よくぞここまでトンデモない旅をするかと半ばあきれながら、ページをめくる手がとまらなかった。2015年1月第一刷。

  • 「謎の独立国家ソマリランド」に続く、高野さんのソマリア本第2弾。
     「内戦が続いているソマリアで平和な独立国家があるってどういうことなん???」という色んな謎や疑問点、そして今まで映画「ブラックホーク・ダウン」と「何か海賊?がおって日本の石油とか積んだ船が通られへんらしいで?」というイメージしかなかったソマリアという国が少しづつ明かされて行く過程が面白かった前作とは違い、今回はソマリアに関する知識がそこそこある状態で読み始めたので、インパクトはトーンダウンしてるんやけど、ワイヤッブやハムディの後日談として楽しく読めたと同時に、日々変わりゆく情勢を見るに少し寂しい読後感もありました。

     高野さんが終盤イスラム勢力のアル・シャバーブの待ち伏せをくらい九死に一生を得るところでは、それまで中東へ行きイスラム過激派の人質になったり、命を落としたりするジャーナリスト、ボランティアの方たちのこと、自分からは遠い世界のニュースだとぼんやり思っていたのですが、高野さんもソマリアで命を落としてニュースになる可能性もあったんやな〜と思うと急に身近な話に感じられて、よくある危険だと分かっていてなんでそんなところにどうしても行かなければならない必要性もないのにわざわざ行くのか、という批判が何だか的外れなものに感じました。また、アル・シャバーブの勢力が落ちてきてモガディショの街が復興しつつあるのと同時に今度は政府批判を繰り返すジャーナリストたちが(アル・シャバーブとの戦闘が激しかったときよりも)命を落とす危険にさらされている、というのも衝撃的でした。

     そんな、しんみりすることも多かった「恋するソマリア」ですが、一般ソマリ家庭におじゃましてソマリ料理を習ったり、ソマリ女子が美白に夢中になってたり、はたまたソマリNo.1のミュージシャンにインタビューしたり、ほのぼのエピソードも健在で楽しい1冊でもありました。
     

     

  • 現地の本当の生活(食)へと入りこんだり、銃撃戦まで遭ってしまったり、理解も緊張も更にアップした一冊。ニュースでは分からない情勢も分かるけど、国民性はちょっと無理かな…。決して自分では足を踏み入れたくない場所ですが、もっと読みたいとは思ってしまいます。情勢的に難しくなってると思うので、命を優先に考えるとできれば、という思いですが。

  • 『謎の独立国家ソマリランド』の続編。前作より一歩踏みこみ、「普通の人たち」の生活や文化が高野節で生き生きと描かれ面白く一気に読めてしまうが、なぜここの人たちがイスラム過激派(アルシャバーブ)を支持してしまうのか?という件は考えさせられるものがある。とにかく高野氏が無事でよかった。

    ツボは、「ソマリ最大の秘境」と、知事ツアー(?)3日目の村の雑貨屋へお買い物に行くところ。

  • 面白かったです。

  • 『謎の独立国家ソマリランド』でソマリ地域の社会や政治に関する潜入ルポを試みた著者が、今度は文化にターゲットを絞ってその様子をまとめ上げた第2弾。

    著者がソマリ文化に心から心酔し、友人たちの助力を得ながら地元の住宅に招かれて料理を習ったり、ときには紛争地域で銃撃戦に巻き込まれたりと、息をつく間もなく怒涛のような出来事の連続に、読み手は強く惹きつけられる。

    日本人の生活や文化における価値観とは全く異なったものがそこにはあり、それはそれで良いのだ、という当然のことをありありと見せつけられる様が本当に面白い。

    重要な指摘だと感じたのは、ソマリ南部を支配していたアル・シャバーブ(著者が銃撃に巻き込まれたのもこの集団からと推測されている)や、かつて著者がルポを書いたアフガニスタンで抗争をつづけるタリバン等のいわゆるイスラム過激派が、マオイズム/農村主義の一種ではないかとみなしている点である。文化大革命に代表されるようなマオイズムは都市文化を批判し、農村にこそ人間の生活の本質があるという一種の思想であるが、西洋文明/都市文明を批判し、禁欲的な生活を強制するイスラム過激派にその類似性が見られるのではないか、という考えである。そのような観点で眺めてみると、日本においても「農村へのノスタルジー」のような弱いレベルでの農村主義は確かに存在するし、もう少しその度合いを強めればまさにカルトとしての「ヤマギシ会」のような運動もまさにそうであろう。つまり、我々はイスラム過激派の運動を自分たちの文明とは切り離されたものとして一見考えてしまいがちだが、そこには一種の共通する部分もあるのではないか、そここそがこの指摘の非常に重要な点ではないかと思う。

    そうした難しい話はなしにしても、ルポとして読ませる一冊。これからのルポにも期待したい。

  • 相手(ソマリア)の事を知りたいし、自分の事も知ってもらいたい。それはもうほとんど「恋」のようなのだ。
    高野さんならではの手法(言葉、音楽、料理)で彼の地を理解したい!と努力奮闘するせつない冒険譚を辿るうち、日本ではほとんど知ることのできないソマリアの人々の現実の生活や暮らしがリアルで身近に感じられる。暗殺や銃撃が当たり前にある日常。ジャーナリストも権力者も命懸けだ。それにしても「恐怖の大王降臨」は、本当にお気の毒。参りました。面白かった。

全95件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

高野秀行の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×