- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087815139
作品紹介・あらすじ
運ぶのは遺体だけじゃない。国境を越え、"魂"を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたち。2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞。
感想・レビュー・書評
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エンド・オブ・ライフ、夜明けを待つに続いての佐々さん3冊目。
読みながら、以前読んだ他の著者さんの「面影修復師」を思い出していた。
その技術が活用される亡くなった場所が、国内なのか、海外なのかの違いだけの違い。
生前のその人をその人らしい姿に再生し、ご遺族へと送り届ける。
コロナ禍で、弔いの形は、簡素化してきている。
この本が書かれた当時よりもなお一層、簡素化しているだろう。
でも、どんなに簡素化したとしても、根本的なところは変わっていないはず。
その根本をエアハースの方々は、今も護っていらっしゃる。
佐々さんのあとがきで、それが明確に書かれていると思う。
とても印象に残った文章だった。
『亡くなった人から我々が託されているであろう宿題はふたつだ。ひとつは、命を終えてしまったその人の分まで人生を生き抜くこと。そしてもうひとつは、その人との別れを悲しみ抜くこと。』275頁
『彼らは心の中に戻ってくる。悲しみぬいたあとの生きる力となる。もっと親しく、もっと強くそばにいてくれる。だから一度、「さよなら」を言う必要があるのだ。
以前この取材に入る前に、ある編集者に言われた言葉を思い出す。
「医者みたいに人を救う人なら書く意味もあるだろうけど、死んだ人を運ぶ仕事を書いてどんな意味があるの?」
今なら答えることができる。
「亡くなった人でも救う事はできる。私たちが悲しみぬいて、きちんと生きぬくことができるなら。それを手助けしてくれるのが彼らの仕事なのだ」と。』277頁詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2012年刊。海外で亡くなった人、或いは国内で亡くなった外国人を海外に返す事のプロ達、と、その様々なケース、生前の姿にまで修復するという特殊性、その意味は?などが書かれている。
特殊な仕事だ。このような本が出なければ知ることは無い。その点では有難いし、「悲しみ抜くことこそ必須」というのも成程なぁと感じた。
興味深い点は確かなのだが…… 正直、眠くなってしまう。クドイ。単純なレポートでは無いのだから、あれこれ書きたいのは分かるが、クドイ。終盤になるほど、その傾向が顕著になる。 -
読書記録7.
エンジェルフライト
佐々涼子 著
日本国外で亡くなられた人はどうやって遺族のもとに戻ってくるのだろう
日本で亡くなられた外国の方はどうやって祖国の家族のもとに帰っていくのだろう
亡くなられた方をよりよい姿で家族のもとに魂を送り届ける『国際霊柩送還士』という仕事を通し、悼み・弔い・葬礼を描くノンフィクション作品
日本人の死生観、宗教観
『国際霊柩送還士』その仕事に向き合っている人々の思いと遺族の声を通し『人と人』心の重ね方の大切さを改めて感じた作品
12年前に出版されたこの作品を読了
近年の葬儀の形、コロナ禍を経て葬儀へのあり方も様々に変化しているこの時に読む事が出来、考えを深めるきっかけにもなった
生きることと死を見つめて来た著者の近著『夜明けを待つ』をこれから拝読する
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先日『無縁遺骨』を読んだからか、遺族のいる方々のいい話、と感じてしまった。
これが書かれた2012年時点は、きっと今よりも待ってくれている家族がいた時代だったのかもしれない。
そう思うと、国際霊柩送還の″今″を知りたくなった。 -
損傷の激しかった遺体が目を覚ましそうなほど修復され遺族に返される。
絶望の淵にいた遺族は、少しでも救われたと思いたい。 -
遺体の航空機輸を行う法人のノンフィクションかな。海外で雑に扱われる遺体に敬意を持って整えたり、遺族から感謝されたりする日常トピックスとか、人にフォーカスして、少しドラマチックにした感じ。とても大事な仕事だと思う。
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この方々と出会えたご遺体とご遺族は、どんなにか救われただろう
号泣必至 -
「異国で亡くなった人の遺体や遺骨を祖国に運び、遺族に届ける。国際霊柩送還士(こくさいれいきゅうそうかんし)の仕事はあまり知られていないが、過酷だ。「エンジェルフライト」はノンフィクション、その姿を追い、死とは何か、親しい人の死を受け入れるとはどういことかを見つめた。
(『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)
メモ:
「損傷のひどいご遺体を見ると、このままじゃご遺族に会わせられないと思うし、身元確認に行ったご遺族はどんな気持ちだったろうと思います。だから、会わせられるようになんとかするんです。(略)死を受け入れられるように、きちんと対面させてあげたい。お別れをさせてあげたい。」
「痛い搬送は、悲嘆に遺族をむき合わせる行為だ。弔いは亡き人を蘇らせたりしない。悲しみを小さくしたりもしない。(略)だが、悲しみぬかなければ悲嘆はその人を捉えていつまでも放さない。(略)悲嘆をくぐり抜けた時、亡き人は別の形で戻ってくる。そばにいて励まし、力を与えてくれる存在になる。」(本文より) -
『人は生きてきたように死ぬ。そして、残された者の心の中に、これまで生きてきたようにして、これからも生きる』
海外で亡くなった人が遺体で貨物として日本に帰ってくる。それがどんなことなのか、この本を読むまで全く知りませんでした。
率直に、あまりにも過酷でショッキングな仕事だと思いました。
誰にでもできる仕事ではない。
エアハースの人たちの覚悟や使命感、仕事への姿勢には凄まじいものを感じました。
今はどれくらいのメンバーがいてどのような勤務体制なのだろうとふと思いました。
土曜日も日曜日も、朝も夜中も関係なく電話がかかってきて、厳しい状態となった遺体とそして悲嘆にくれる家族と向き合うには本書の取材当時のままではあまりにも無理があるのではと思いました。
現場の理惠の姿を見て、部下を叱り飛ばしてばかりの様子に「自分にはとても勤まらない」とNPOの職員が言っていたり、理惠の息子の利幸でさえも、「なぜ、ここまで言われなければならないのだろう」と山科に対しての思いを語る記述がありました。
元々過酷な上に、そこまでずっと怒鳴り散らされて耐えられる人はそういないと思うと、ストレートに言うとブラックな職場のままなのでは、と絶対に必要で、すごい仕事なのにと少し不安になりました。 -
海外で、亡くなった人…漠然と、日本で亡くなった人と同じような状態で帰って来ると思っていた。国によれば、帰るまでに何日もかかったり、その国の気候や飛行機内での気圧などで、想像もつかないような状態で帰って来ることは、珍しくないらしい。そんな亡き人を、生前のような姿にもどし、色々な雑務を代行したり、時には遺族の支えになったり、表には出てこないけど、なくてはならない職業。エアハースの方たちの職人魂には、ただただ感服です。