本を守ろうとする猫の話

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864633

感想・レビュー・書評

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  • 旅先でふと書店に立ち寄ったときに、数ある本の中で平積みになっていた本作のタイトルと表紙に惹かれて買ってみた。(なぜ惹かれたのかは分からない)

    昨今、SNSをはじめインターネットが爆発的に普及していることもあり、好んで本を読む人は明らかに減ってきているように思う。加えて、要約サイトや箇条書きされている重要な箇所だけ流し見するなど、それは本当に読んだと言えるのだろうかと疑問に思うこともある。

    また、ビジネスの世界では「本を読むからにはアウトプットするべき」「行動につながらなければ読んだ意味がない」という発言も多く見られる。
    確かにせっかく自分の時間を投下するのであれば何かしら実になるものとして昇華したい気持ちも分かる。(皆忙しく、効率を求めている)

    ただ、個人的に本というものの本質はそこではないような気がしており、以前からずっとモヤモヤを抱えたままだった。

    本作にはそんなモヤモヤを解消してくれる一つの答えが記されており、読んだ後にじんわりと心が温まるような作品だった。

  • 本の大切さと、本を読みそれを元にどう生きるのか?
    人を思う心が大切。
    人は支え合って生きて行くものと教えてくれます。


    この本は夏川草介の『銀河鉄道の夜』だと思いました。
     

    本好きな自分は、今まで通り、気にいった本を読んで行こうと思います。

  • 読み終わった最初の感想としては、本とは?本を通して何を得ようとしているのか?を振り返り考えてみようと思いました。

    大まかな物語の概要としては、引きこもりの高校生の元に現れた不思議な猫と共に、本の危機を救っていく内容です。一見ファンタジーのようにも見えますが、本に迫る危機が現代の書物を取り巻く環境と同じであり、現実問題としてどうあるべきかを考えさせられます。速読や要約であったり、売れる本を作ることが重視されつつある環境であったり…。
    速読や要約は、時間がない中で内容を把握したい場合の方法としては良いと思いますが…時間をかけて読むことで、より内容を理解し自分の中に落とし込めるのでは?と訴えかけているように思えました。

    また、本を読むことの意義についても考えさせられる内容となっていました。
    数を読む・読むという行為が目的となっていませんか?本を読むことで、何を得ようとしていますか?得られたことを、自分の生きている中に活かしていきませんか?と語りかけているようでした。
    ふと振り返ると、時折思い出したかのように読み終わった本を再読することがあります。それは、その本の何かが自分の琴線に触れ、再度触れたい・学びたいと思ったために起こした行動なのかなと思いました。

    本を読むことが好きな方は、一読する価値はあるかなと思いました。

  • あなたにとって「本」とは何ですか。
    と問いただされたような気がしました。

    書店の主だった祖父が亡くなり、
    空ろな日々を過ごしていた林太郎の目の前に、突然現れた一匹の猫。
    「本を救ってほしい」というトラに連れられて、
    迷宮に入り込んだ林太郎が見たものは───


    ”本には大きな力がある。けれどもそれはあくまで本の力であって、お前の力ではない。
    いくら知識を詰め込んでも、自分の足で歩かなければそれはただの借り物。
    お前はただの物知りになりたいのか。”
    林太郎の祖父の言っていたことが、深く胸に突き刺さる。

    一冊々、大事に読もうと心がけてはいても、
    読みたい本がありすぎて、毎日新しい本を読むことに追われ、
    めったに一度読んだ本を読み返すことがなくなった。
    大切な一冊を、何度も読み返しながら、ゆったりと物語の世界に身を置く。
    そんな読書ができたらいいのに。
    そして、そのひざの上に柔らかいモフモフちゃんがいてくれたらもっといいなぁ。

    ちなみに、本に囲まれちょこんと座っている表紙のネコちゃん。
    この子があの何やら生意気なトラ?
    ちょっと可愛すぎ?
    トラ、ごめん!(笑)

  • 読書ってそうだよな
    まさに現代社会にメスを入れる作品だった。仕事やネットの普及やらで失いかけてる人が人を思いやる事、時間。昔の人よりかは欠けてると自分でも思う。時代が変化しても大切なことは変わらないのだと。分かってても…そんな時に力になってくれる物語。いい読書時間ができた。

    好きなフレーズ引用
    どれほど多くの知識を詰め込んでもお前が自分の頭で考え自分の足で歩かなければすべては空虚な借り物でしかないのだよ
    孤独に屈するなかれ
    お前の友を助けに行く旅だ
    悩む者とともに悩み苦しむ者とともに苦しみときにはともに歩む態度を言うのだ
    春の日差しはどこまでもまばゆくて身軽な制服の背中は光の中ひ溶けていくようだ

  • すごく哲学的な感じで、読んでる時に「星の王子さま」を思わせるような雰囲気。本の中にも実際に「星の王子さま」が登場し、本が出てくる本って面白いなと思った。

    林太郎が猫のトラネコと共に本を助けにいく話。

    第二の迷宮が一番面白く感じた。とにかく深くてその哲学が理解しきれないところもあった、、けど、音楽と本、山と本についてのところは考えたこともなく、おもしろかった。

    迷宮にでてくるそれぞれの敵は中々考えが鋭く通っていて、考えなが読んでいてもその哲学を崩すことはなかなか難しかった。

  • 今月は何冊読んだか?感想書いた割合は?そんな事を気にしつつブクログをつけているオロカモノの自分には、かなり突き刺さる内容である(仕事柄沢山の本に触れるべきだとは思うのだが)。

    とにかく沢山読みたい!古典は手を出したが途中で挫折したから要約本やネット検索で決着!ベストセラーが大好き!…こういった人は自分も含め結構いるだろうし、別にそれでも構わないと思う。
    けれど、「違う本との向き合い方もあるよ」、「そんなにガツガツした消化不良の読書ばかりが読書ではないよ」と教えてくれている気がする。
    時間に追われる現代人だが、本を読む時くらい追われるようにしなくてもいいのかも。2019.8.15

  • 本好きの男子高校生がトラネコと出会い、本の世界で学者たちと対峙するファンタジー小説。
    速読術などが勧められている現代に対して、一冊一冊を大切に読む事の大事さを気づかせてくれる。

  • しばらく小説離れしていたリハビリには最高の1冊でした。
    本を愛する人へお勧めの、児童書のような読みやすさで、それでいて対話もできる良書です。

    忙しい日々の中では、じっくり向き合う読書からは遠のきがち。時には仕事や生活に役立つ知識も手に入れたい。
    そう思うにつけ、より短時間で、より速く読みたい。
    そんな人も多いからこそ、要約本も売れるのでしょう。私も漏れずに手を出したことがあります。

    読書と登山は似ている、と思う。
    それは本書でも書かれていた。
    "愉快な読書もよい。けれども愉快なだけの登山道では、見える景色にも限界がある。道が険しいからといって、山を非難していてはいけない。一歩一歩喘ぎながら登っていくこともまたひとつの登山の楽しみだ"
    "どうせ登るなら高い山に登りなさい。絶景が見える"

    読み継がれている本は含蓄に富んだものが多い。
    本を読む筋力のようなものも求められるため、忙しい時程離れがちです。運動不足でいきなり挑戦できるものではない。それでも、時間を捻出して日々できる運動をしながら挑戦するだけの価値のあるもの、であることを久しぶりに思い出させてもらったような気がします。

    本は、本当にいいですよね。
    「時代を超えてきた古い書物には、それだけ大きな力がある。力のあるたくさんの物語を読めば、お前はたくさんの心強い友人を得ることになる」
    「本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない」とは祖父の言葉。
    共感しつつ、染み入ります。

    手早く電子書籍も読みますが、「紙の本を時間をかけて読む」という過ごし方をしたくなる。
    まさに今読めてよかったです。

  • 神様のカルテは読んでないし、この本が世界35ヵ国以上で翻訳出版されてるのも知らなかった。単純に題名買いしたけど、買って良かった、読んで納得。本を愛するとは?、本とは?本のチカラとは?と書かれた箇所が特に好き。もう一度読みたい。古典が読みたくなりました。 

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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