本を守ろうとする猫の話

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 3555
感想 : 385
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864633

感想・レビュー・書評

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  • 本のタイトルと表紙のジャケットが好みで手に取りました。ファンタジーは苦手なのですが、本が好きな人であれば共感するであろう言葉が多くあり、改めてやっぱり本が好きと思えるでしょう。

    ネコはなぜ本を守ろうとしたのだろう?昔からネコは小説によく登場するからか、ネコと本はお似合いの組み合わせです。ネコ自ら「猫は人間の都合など考えずに行動するものだ」と言うのが可愛くもありました。

    「本には心がある。大切にされた本には心が宿り、そして心を持った本はその持ち主に危機が訪れた時、必ず駆けつけて力になる」
    共感出来るセリフです。これからも良い本に出会えますように。

  • 面白かった。本を巡るファンタジー。
    最近そのテーマで期待はずれが続いていたので、これもそうだったら嫌だなあと思いつつ読み進め、その予測はほぼ外れて安心した。
    でも大絶賛というほどのめりこめたわけでもなく。
    ファンタジーを描くというのは本当に難しいんだなというのごわかった気がする。さらにモモや精霊の守り人やゲド戦記のすごさも。確実にそれらの本は、小説の中の夏木書店に並べられるだろうなと思う。
    一方で、この本が夏木書店の本棚に置かれるかというと、祖父も林太郎もしないんじゃないか。
    読み終えてから、神島のカルテの著書と知る。未読なので、そちらも読んでみることに決めた。

  • とっても面白かった!たまたま手に取った本だけど、出会えて良かった。

    祖父の死によって身寄りがある人が叔母だけとなり、夏木書店で引きこもりがちになり、不登校になった林太郎。
    そんな彼のもとに訪れる学級委員長の柚木、秋葉先輩、そしてトラネコたちが本で繋がり彼を少しずつ変えていく──

    実はトラネコのいる本が夏木書店のどこかにあるんじゃないかな、なんてね、考えたんですよ。

    本に関して正しい答えを出しにくい真実と向き合いながら、良い読書とは何か、読書家とは何か……林太郎が自分の言葉で少しずつ少しずつ本への愛を紬ぎ、迷宮の人々、そして私たちに教えてくれる。
    人と本のつながり、そして人と人との繋がりを大切にしていきたい、そんな気持ちにさせてくれる話だった。さりげない青春シーンも見逃せない。

  • もしかしたら、じいちゃんによる『二代目認定試験』だったんじゃないかと疑っている。
    そして、本を読み終わって閉じた後の、この物語の明日からをとても楽しく想像してしまう。
    高校生にして、古書店の店主・夏木林太郎。
    とっても素敵じゃありませんか!?
    ビジュアルが、さえない眼鏡というのがまたそれらしくて良い。

    早朝、朝ごはんを済ませると店の格子戸を開けて店内に風を通し、入り口の掃き掃除と、書棚のはたき掛け…
    それが済むとお茶を淹れ、しばらく読書をする。
    時間が来れば登校し、始業ベルの少し前に、吹奏楽部の朝練を終えた柚木沙夜が教室に入ってきて、林太郎の姿を見つける。
    「よろしい、今日もちゃんと登校したわね」と、声には出さず頷くのだ。
    本を巡る状況は、相変わらず厳しいけれど、本に囲まれてそんな毎日を過ごすのはうらやましいなあ、と思う。

    しゃべるトラ猫に頼まれて、本を救うために迷宮の中に赴く林太郎。
    そこに描かれているのは、現在、本や出版業界が直面している危機であり、本の読まれ方に対する痛烈な皮肉であったり。
    自分も少し反省をしたり、日ごろの思いを代弁してくれて溜飲を下げたりしたのであった。

    序章 事の始まり
    第一章 第一の迷宮「閉じ込める者」
    第二章 第二の迷宮「切りきざむ者」
    第三章 第三の迷宮「売りさばく者」
    第四章 最後の迷宮
    終章 事の終わり

  • 喋るトラネコ、店の奥にあるはずの無い通路、そこを抜けた先に広がる奇妙な世界。どこかにありそうな話ではある。しかし、物語の中では、現代の本離れ、本を取り巻く現状をどこかユーモラスに、かつ丁寧に描かれている。林太郎は3人と対話し、本を救い出すことに成功する。ここで終わりではなくて、その後を書いているところがよかった。各々やり方を変え、地位を失ってしまった3人。
    思いだけではどうにもならない。“世界で一番読まれた本”は、林太郎にそう告げる。それでも林太郎は言う。本は、人を思いやる心を教えてくれるものではないかと。
    よく言った少年、と一人目は言う。自信を持ちなさい、と二人目がいう。三人目は、思いだけでは変わらないと意見され、こう返す。「それでも、やってみようとは思わないかね?」
    私たちが今も本を読めるのは、こんな人たちがいるからなのだ。現実にいるたくさんの人たちが、こんなに大変な世の中でも、それでもやってみようと思いを繋いで、ここまで本を届けてくれている。私はちっぽけな一読者に過ぎないけれど、本を大事に読む人間でありたいと改めて思った。

  • 「神様のカルテ」の作者が贈るファンタジー。本屋を営む祖父と二人暮らしだった高校生の林太郎。その祖父が亡くなり、叔母の家に引き取られることになるが、林太郎はなかなか祖父が愛した本屋を離れる決心がつかない。学校にも行かず、本屋で時間を過ごす林太郎の前に、人間の言葉を話すトラネコのトラが現れる。そのトラに連れられ、本が本来の目的で使われてない場所に訪れ、本の本来の良さを、純粋に伝える林太郎。その言葉に心を洗われる人たちを描いた作品。正直、ファンタジーはあまり得意ではないけど、大作の「人類資金」を読み終えた後だと、何となく、ほっこりする。主人公の林太郎の実直さも、「神様のカルテ」の一止を思わせる。「神様のカルテ」ファンの方にはおすすめ。

  • 古書店を営む祖父が急逝し、一人残された高校生の林太郎の前に突然現れた喋る猫トラ。トラは「本を救ってほしい」と言い、祖父の遺した古書店の奥に謎の通路が現れるー

    本を何百冊読んだとその数ばかりを競い誉めそやす風潮。
    タイパだ時短だ効率化だと本の要約やあらすじだけで読んだ気になる人々。
    売れる本こそ良い本だとただ流行を追い粗製乱造を続ける出版社。

    本を取り巻く今の現状を憂う寓話4編。ショートショートのような雰囲気もあるが、「星の王子様」に近いと思った。確かに今の本は昔に比べて内容が浅く読み捨てられるものが多く、重厚で難解な本は敬遠され、古典の名著は要約が出回っている。自分もまさにそういう読み方をしているということに気付かされ、改めて本を読むとはなんだろうと思った。難しいと思う本には知らないことがたくさん書いてある、という林太郎の祖父の言葉が沁みる。読みやすいベストセラーばかりではなく時には古典の名作にもじっくり浸ってみたい。

  • ファンタジーのようでもあり、哲学の本のようでもあり。
    そして、恋愛小説のようでもある、様々な顔を持った作品という印象。
    心温まる作品だが、読む手を止めて考え込んでしまうことも多々あった。
    本の持つ力とは何なのか。
    その問いに主人公はどんな答えを出したのか。

  • 古書店を営む祖父と二人暮らしの高校生夏木林太郎。
    その祖父が亡くなって、遠方の叔母に引き取られる事に。
    元々引きこもりがちな林太郎の元に、言葉を話す猫が現れ、ある場所に閉じ込められているたくさんの本を解放してほしいと依頼され…不思議な世界へと足を踏み込んでいく…
    本人は気付いていないけど、本に関しては造詣は深い林太郎、その不思議体験を通して自分自身の事や周囲のあれこれに気付かされていく。
    本を読むことに関しても、考えさせられた。

    夏川草介さんは、医療関係の話だけなのかと思っていたら、ファンタジーもあったのね。
    全体から受ける印象は、やっぱり優しい
    大きく見たら、医療関係の話か…精神内科科的な。

  • 「本好きにはたまらない」ってそういうことかぁ〜♡
    長編集なんだけど、四つぐらいの短いお話に分かれててそれが読みやすかった✩︎⡱

    ただ何でかは分からないし説明できないけど
    個人的に好みじゃない文体だったかな(´-ωก`)
    でもあの三人との物語の話は自分も考えるの楽しかったし、読んでて面白かった♬

    昔はこういう大多数、社会を冷え切った感じで描かれてるの全然気にならずに読めたんだけど、最近は周りの大多数の愛に気づかせてくれる作品が好みだから、ちょっとそこも自分は読んでてうーん…だった(>_<)

    おじいさんの言葉凄く好きだったな♡

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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