本を守ろうとする猫の話

著者 :
  • 小学館
3.42
  • (137)
  • (277)
  • (400)
  • (113)
  • (20)
本棚登録 : 3555
感想 : 385
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864633

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白かった!最近読んだ中では1番ハマった。

    1章ごとがそれぞれ本に向き合う態度に
    ついて示唆的に書いていて考えさせられた。特に三章が私の心に残った。ビルの窓から大量の本が落とされ、積み上げられる。世間に伝えたい事ではなく、世間が伝えてほしい事を本にすれば、本は売れる。
    今日、毎日毎日出版社から多くの本が出され、全国の書店に配られ、それを消費者が購入し、読む。私は書店にたくさんの本が並ぶ光景にわくわくするが、あまりに大量の本に気が遠くなる思いもする。本を読むことは単なる文字の浪費なのか。私がしている本を読む行為はただの時間と知識の浪費ではないとは言いきれないけれど、それでも本を読むことを選んでいるのだから、少しでも本が持つ力を自分の力にしたいと思った。読む本くらいは自分で自由に選びたい。だって私は本が好きだから。

  • 夏川さんといえば、神様のカルテシリーズしかなかったので、どういう物語かすごく興味があった。
    主題は本。 本をたくさん読めばいいのか、速読は本当に良いのか、そして売れる本だけ流通すれば良いのか。現代社会を思い切り皮肉しているなと思った。たくさん読めばいいってもんじゃ無い、時間をかけて、ゆっくり読み返したりもして。そして本のえり好みをし過ぎると己の視界を狭めることにもなり得る。
    難しいってことは、今まで読んだことのないものに出会ってるってことっていう夏木君の言葉が印象的。そして、本でいろいろな世界に価値観に人に出会うことに改めて嬉しさというか、喜びのようなものを感じた。
    本を読んだ後は、自分の足で歩いて行く。読みっぱなしではなく考えたり、行動したり。小学生に言い聞かせるような台詞だけど、まさにその通りだと思った。
    夏木君同様本が好きな自分にとって、とても良い素敵な1冊に出会えた。

  • 交換会であやかちゃんからもらった本!

    ミヒャエルエンデのモモを彷彿とさせるファンタジーでした!
    モモはカメのあとについて歩いて行くけど、林太郎は猫のあとに、そして不思議な体験をしていくという内容。

    ラストの冒険の敵は、私的に絶対優しげな叔母が良かった。笑!
    実は影のボス!くらいのオチかなーって期待していただけにちょっと残念でした。笑笑!あの叔母怪しかったのに、最後までただのいい人だったし。笑笑

    先輩のくだりももう少し絡めて欲しかったなーと、もう少し長編で深めにお願いしたいほど面白い内容でした。

    軽く読み切れる優しいファンタジーです!

  • 私にとって読書とは、登場人物と自分を重ね、うまく表現できない自分の気持ちを言葉にしてもらい共感すること。だから難しい本は避けたり、途中で読むのをやめてしまったりと、自分に合う本しか受け付けなくなっていた。
    読んで難しい本は、自分にとって新しいことが書いてあるから理解に時間がかかる、ということに目から鱗。もっといろんな本と向き合ってみようと思った。

  • 「神さまのカルテ」で揺り動かされた心
    そういうものだはなかったけれどじんわりと心にひびいてきた
    大仰な迷宮にはちょっとひいてしまったけれど
    この猫、林太郎がどの本で出合ったのだろうなあ
    うちの猫は本の上に居座って邪魔してるだけだけど

    ≪ 人思う 心をみつける 本の旅 ≫

  • 夏川草介さんらしい、やさしさが感じられる話で、ハッとさせられる言葉があちこちに。

    「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ』
    47ページ

    「たいしたことではない。ただ当たり前のことを伝えようとしただけなのだ。嘘をついてはいけない。弱い者いじめはいけない。困っている人がいたら手を貸してあげなければならない。(中略)今の世の中は、色々な当たり前のことが逆さまになってしまっている。巧妙に嘘をつき、弱い者を踏み台にし、困っている人に付けこむことに、皆が夢中になってしまっている』
    61ページ

    「ただただ刺激を欲しているだけの読者には、暴力か性行為の露骨な描写が一番。想像力のない人向けには'本当にあった話'なんて一言添えれば、それだけで発行部数は数割アップ」(略)「どうしても本に手が伸びない人のためには、もう単純な情報を箇条書きにすればいいだけ。成功するための五つの条件とか、出世するための八か条なんてね。」
    140ページ

    小学校で「本当にあった話」系が人気なのが不思議だったけど、言われてみれば、と納得(残念ながら)。

    子どもが本を読まない、または反対に本ばかり読んで外に出ない、と悩んでいる親にもおすすめしたい。

    最近出た続編も楽しみ。

  • 本とは何か?
    それを問い、答えるための本。
    という感じだった。
    とてもリズムが良い文調でとても読みやすい。
    冒険小説をあまり読まないけれど、これは冒険しながらも「本についての真理」を問いていて面白かったな。
    と、言いながらも、「本についての真理」など、自分はほとんど持ち合わせていない。
    迷宮の中の人たちのように、「読むこと」が目的になり、後から後から新しい本を求めて図書館や本屋に向かい、読んだあとは手元に残すことがあまりない。
    「読みやすい本」を求め、難解と思われる古典文学には手を出さない。
    「何万人が読んだ、感動のストーリー」などというコピーに惹かれ、読んだ本は数知れず。
    解決を求め、要約のように書かれたビジネス本や、自己実現本を読む。
    そんな、迷宮の中の者たちと同じような読書を続ける自分に真理などない。

    けれど、一つだけあるもの。
    「本を読めば、自分以外の者になれ、自分の人生とは違う人生を体験することができる」こと。
    その体験を通して、自分の幅が広がること。
    知識だけではなく、心が広がること。
    (本作で夏木が別の言葉で似たようなことを言っていたが)

    自分は、やっぱり本が好きだな。
    そして、自分が好きな医療ストーリーだけではなく、こんな風なお話も書ける夏川さんが好きだな。
    大好きな夏川さんの「始まりの木」をまた読みたくなった。

  • 本を守る冒険。本に対する考え方が好きだった。読み返すほどではなかったが、読んでよかったなと思える本だった。内容が面白い、というよりは、祖父の名言が好きだった。

  • 難しいと思うことは自分の知らない新しいことだということ
    よく自己啓発本にある本の良さを物語風に描いた一冊
    人間の奥底にある心理や欲望、欲求などはいつの時代にも変わらず、過去の人間から学ぶことは大切だが、変化の激しい時代と言われる現代においても、それは同じなのか。

  • 今まで夏川さんの物とは違って、面白い角度から本の大切さなどが伝わってくる内容でした。

全385件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

夏川草介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×