絞め殺しの樹

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 891
感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866262

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいて息苦しくなる。
    今でも屯田兵の影響力は末裔にあるのかな。

  • 序盤からずっと重苦しい雰囲気が続いて、何度も読むのをやめようかと思いましたが、読後感は不思議とスッキリした感じ。
    読んでいて苦しくなるようなシーンもたくさんあったけど、読み終わった時、まっとうに生きていくことの厳しさ、それでも生きていくんだという雄介の強い覚悟が感じられて少し救われた気分でした。


  • 『おしん』なんて吹っ飛ぶくらいの壮絶さ。
    こんなとんでもない家族に縛られるなんて
    とてもじゃないが無理。

    その過酷な環境で育ち
    自分にも厳しいミサエが娘に対して
    どうしても厳しくなってしまうのも
    育児中の自分を見ているようでよく分かる。

    主人公がほんとに頑張っているのに
    何も報われていないのがただただ切ない。

  • 昭和10年に10歳で祖母が働いていた根室の吉岡家に人買い同様に引き取られたミサエ。彼女とその次世代の途中までが語られる大河系小説。大婆様は厳しいが人道外れた人ではない。しかしそれ以外の吉岡の者達の性根悪く、ミサエは死ぬほどこき使われる。このあたりは読んでいて辛くなるほど。ミサエには不幸がこれでもかという位襲うのだが、ミサエ時代最終らへんユリとの会話や、仕事があることなど、救いはある。また、これまでの流れからは蛇足のように思える次世代の話が凄く良いのだ。いやー、雄介みたいな芯があって、人を見れて、行動できるヤツいないって。でも、お陰で読後感悪くないよ。
    とにかく題名通りの重い話だった。なのに凄く良くて、就寝前から読み始めて最後まで読んでしまった(眠い)。ただ、これを勧める人は難しい。基本、女性。60歳以上。読める人。親戚や土地のしがらみを知っている人。こういう人に理解を示せる人。
    私の親世代はミサエのような要素を持った人が沢山いた。育った場所も地方だったので、土地に絡みつくような怨念めいた縛り、地域の因襲、この本は忘れていた感覚が身体に染み渡るようだった(しかもこの小説では因果が巡ってるような設定が上手い)。
    こんなに良い本なのに直木賞取れなかったのか。去年の同志少女もだし。講評読みたいな。

  • 人手不足を理由に馴染みの薄い北海道に使用人として行くことになった主人公の生き様が描かれていきます。

    主人公は雇い主に虐げられ、生まれた環境、置かれた境遇、周りの人間によって搾取され、思い通りには生きられない中であってもそれでも強く生きていきます。

    一方で、強いがために自らの子にも自分の価値観を強いるのですが、その結果(それだけではないのですが)その後の出来事から生き方が変わっていきます。

    強く正しく生きようとしても、周りの環境がその意思を挫くように絡みつくなかでどう自分の生き方を定めていくのかということを考えさせられる物語でした。

    各エピソードが救いようがなく強烈で、どう終わるのか予測がつかなかったのですが、最後まで読むとすっきりする場面もあり読んでよかったと感じました。

  • 面白かったけど、話し暗い。。真っ暗じゃない程度のほのかな明かりは物語の節々にあるが、中盤の悲劇にもう絶句。とはいえ、読ませる力はすごく、さいごまで読み切ったし、最後に少し前向きな感じはある。。
    昭和初期はこんな時代だったんだな、というのは、まぁリアル感はあるのだけど、気付けば令和の世とはだいぶ価値観が変わっているよね。

  • 親が亡くなって、新潟の家に預けられていたミサエは、故郷の根室の家に身売りされる。そこでの一家のイジメは反吐が出そうになるものだった。その後、札幌の薬売りに引き取られ、努力を重ねて看護師になる。長女の自死や息子を吉岡家に取られるなど、読んでいて沈むばかり。何か良いことはないのか?ミサエは結局そのまま亡くなり、今度は養子に入ったミサエの息子の雄介が苦労する。雄介は逃げることも出来たが、根室に帰る決心をする。最後は小山田や吉岡が落ちぶれて少しは溜飲が下がったが、田舎のしがらみや悪意のある人など物語としてはしこりが残る。

  • 読み始めの印象は「おしん」かな・・・って感じでしたが、
    呼んでいる途中から、本当に胸糞悪い展開で、途中でもうやめようかなと思うこと数回。
    だって、わざわざ絶対いいことないだろうって方に、わざわざ行くんだよ。
    子供の時は逃げ場もないし生きていくだけで大変だったと思う。よく頑張った。
    だけど、大人になり、新しい世界で暮らし、せっかく札幌で楽しくやってたのに、また帰るなんて!いくら恩があるといっても、あれだけのことされたのだし、断る気になれば断れたと思う。
    結婚にしたって、なんで見合いにいって結婚即決しちゃうのかな~どうみてもモラハラ男。断る気になれば断れたと思う。
    養子だって、断る気になれば断れたと思う。どこか暖かい場所で息子と二人ひっそりと幸せに生きることもしようと決心すればできたはず。
    絶対的な不幸が待ち受けている家に養子に出すとは、はあ、もうびっくりで理解不能。

    最後、息子の方も理解不能だ~!なぜ帰る・・・分からない。

    そして、一番分からないのが、薬売りの男。最悪だよ。

    ・・・と、イライラしながら読みました。

  • 学生時代、夢中で読んだ三浦氏に連なる感触。本来はこの手の作品、大好きという事もあり、夢中で頁をめくる感慨を貰えた。
    昨年来、レヴューが次々と上がっていたのも頷ける。

    2部構成~1部は
     昭和初期、身内と共に根室へ奉公へ来たミサエの「生きて働いて職を得た後子をなす 大河ドラマ前半が転回。
    明治時代、大半は士族が占めていた屯田兵。寒さと刻苦の日々は想像を絶することはよく知られている。吉岡家・林家・薬商の小山田とのしがらみが始まる。母親に取り最も辛い娘の自死、自身の死で終わる。
          2部は
     昭和50年代、ミサエの息子(養子に出されている)の視点で見た総括

    個人的に私が雄介の世代と重なるので彼の見方考え方に多大な共感を抱いた。
    ボリューム的に最大にして最少・・見事に決まっている・・それでいて起承転結もきっちり。
    読者の想いからすると「締め殺しの樹~菩提樹」・・装丁がずしんとくる重みを与えているは勿論のこと、白猫、名器の漆椀がアイコンの様に印象的だった。

    そして北大。道内の人でないと解らないほどに「愛され、敬われ、シンボライズ」した名門大学・・買わされる作中の会話でよく浮き彫りになっている。

    凄い題名、テーマを据えられた筆者へ喝さい!
    「優しく 頼れるがゆえに重荷を負わされ負の人生路を歩む事になる芯となる樹・・ミサエ」蔦はそれに絡み、まっすぐ受け入れてくれた樹に絡んで 栄養分を吸い取り 芯となる樹を締め付け空洞化させて、枯らしてしまう・・蔦は自立して行くのだが やがて枯れて行くだろう・・人生の心情 ある意味 諦観の路程景色を見事に感じ入らせてくれた。

  • 二部構成になっているこの本は一部がひたすらに辛かった。
    救いは無いのか…こんなに辛い事ばっかりなのか…となかなか読み進められなかったけど二部は読みやすくて最後は清々しく読み終われました。
    私は自分にも他人にも甘く生きていきたいな…辛すぎたら逃げます。

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著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞、14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、15年同作でJRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞を受賞。『土に贖う』で新田次郎賞を受賞。

「2020年 『鳩護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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