絞め殺しの樹

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  • 小学館
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本棚登録 : 892
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866262

感想・レビュー・書評

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  •  読み始めたら一気に読了まで。河﨑秋子さんの新刊「絞め殺しの樹」、2021.12発行。図書館に予約し一番に読ませていただいてます。読み応えがあります。でも、読後感はあまりすっきりしたものではありません。北海道は道東、帯広、釧路、そのまた先の根室を舞台にした物語。自然の厳しさをはるかに上回る、人間の「業」の醜さがテーマだったのかと感じています。好きな作品とは言えないけど、記憶に残る作品です!

  • 決して明るい気持ちになれる話ではないが、読み終えた時、一筋の光を感じた。
    戦前、戦後を駆け抜けるように生きた一人の女性と、彼女が遺した一人の赤子。この二人が歩む人生が物語の主となっているが、貧困とはこんなにも人を追い詰めるのかと読んでいて悲しくなった。逆に、人はここまで強くなれるのかとも。
    人の一生は悲しい。どう足掻いても最後に待ち受けるのは「死」だからだ。それでも終いまで、その時まで命を、己の人生を全うしなければいけないのは何故なのか。
    厳しさの中に少しの暖かみ、そして生きよという声が聞こえた気がした。

  • 凄まじい小説でした。この様な物語を書ける人は選ばれた作家さんなのかもしれない、そんなことを思いながら読みました。

  • すごく読み応えのある作品だった。この人の書く時代が自分の興味にドンピシャだからなのかもしれない。タイトル『絞め殺しの樹』については、本文中にもふれている部分があったけど、別の例えもできるのではないかと思った。雄介の強い思いが、地域社会の負の部分を絞めつけてもらいたいと思った。

  • 二部構成になっていてミサエ軸の物語から、ミサエ背景の雄介軸の物語になるのが良かったです。

    また、社会や常識、世間、自分の生まれからくるしがらみや苦しみからどう答えを打ち出していくのか

    それは今の現代や自分のことにかなり重なりました。

  • 読み始めてすぐ苦しくなったけど続きが気になって一気読み。
    精神状態良くない時には読めないな…

  • 直木賞候補作。下馬評で本作が大本命、ってのも見かけたってのもあるし、何よりも蠱惑的なこのタイトルよ。まんまホラーだとしても気になるし、そうじゃないとすればどんな内容なの、ってことで読前の期待は大。北の果て・根室のとある街で、戦争をまたぐ時代に生きた人たちの活劇。とはいえ、戦争にはほとんど触れられず、それがメインではない。ほぼ同時に読んだ”絶対正義”にも少し通ずるところがあり、でもこちらの方が、エンタメ色は控えめ。リアルさというか、人間の本質への肉薄加減は本作が上で、自分的にも、本作を、より味わい深く感じた次第。

  • シメゴロシノキ、菩提樹の別名の謂れを初めて知ったが、なんとも底気味悪い。タイトルに違わず陰鬱な描写が続く。救いようのない者どもは、哀れな己を決して省みない。雄介の成長に読み手として救われる思いもあるが、その成長をもってしても、あの叔父や養父を変えられないだろう。彼らには改心の兆しなく、先々ますます意固地に敵対していくに違いない。息子に促されてあっけなく家を捨てた養母。ま、あれだけ虐げられたなら仕方ないのか。それよりミサエさん、いかに評価される生き方であっても、雄介をあの吉岡家の養子に送るなんてあり得ない。

  • なんでこんな題名なのかは
    本文を読んでいただくとして。
    いやぁ…なかなか厳しい物語でした。

    特に第一部、母の一代記編。
    昭和期の女性の生きづらさに
    開拓民の厳しさがのっかって息が詰まる。
    第二部の息子編は
    ちょうど自分と同世代くらいだから
    少し感情移入がしやすい。

    どちらにも、本当にいい加減にしろと
    言いたくなるような人々がいる一方
    こういう手が伸ばしてくれるから
    生きていけると思わせる人もいて。

    勧められて手に取りましたが、読んでよかった。

  • ミサエは北海道根室で生まれる。母は3日後に亡くなり祖母に育てられた。父親は聞かされていない。10歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる。ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、出入りの薬売りに見込まれ札幌の薬問屋で奉公することになる。保健婦となり再び根室で暮らし幸せとは言えない結婚生活を送る。幼い長女の死苦難を乗り越えへ癌で死す。主人公がミサエから雄介に代わり雄介も母の人生の道のりを辿る。しかし雄介は自分を見失わずに生きる。人間の力強さを感じずにはいられない。屍を肥やしとしてでも何にも絡まわれず、絡まわず、ただ淡々と。2人の母にも過去なんらの過去にも捉われることなく生き続けると。とても辛い悲しい
    話ではあったけどこの言葉で救われた。

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著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞、14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、15年同作でJRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞を受賞。『土に贖う』で新田次郎賞を受賞。

「2020年 『鳩護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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