神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 11224
感想 : 1005
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001500

感想・レビュー・書評

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  • 短編はとてもおもしろいと思う。
    村上春樹のよさが端的に表れていて
    1番気に入ったのはタイランド、たぶん3回は読んだ。

  • この本に収録されている6つの短編連作『地震のあとで』は、1999年1月の神戸大震災後に書かれた、と言うのはどこかで読んだ。残念ながら私の持っている版には後書きも解説もない。村上さんの作品の事は誰でもが知っているはず、と言う前提だろうか。それとも誰も村上作品の後書きを書きたくなかったか。少しでも解説があると読者に親切で、より楽しめると思うのだけれど。。。

    「かえるくん、東京を救う」が、シュールでキュート且つ読み易かったです。


    「UFOが釧路に降りる」
    読み終わった時は”ふん・・・”と思った。何も感じなかった。しばらく時間を置き、次の「アイロンのある風景」を読み終わった後に改めてこの作品について振り返ってみる。最初のシーンで、妻が5日間もテレビに釘つけになっている。あきらかに異常というか、ショック状態である。ただ、多くの日本人が似たような反応を示したのは想像に難くない。その横で小村はというと、妻の様子を観察し気にしている。一方、小村が地震ニュースを見ている様子、感じた事はいっさい書かれていない。小村と彼の妻は地震報道の衝撃と絶望感をシェアできなかったのでは。神戸に知り合いがいないから、という問題ではなく、衝撃に感じるべきなのだ。そういう小村に絶望した、そして、空気のように感じたのではないか。
    (どうしてこう簡単にラブホテルでベッドに入る展開になるのかは、私の理解の範疇ではないが)シマオと男友達の山中セックスの話が面白い。熊が襲われないようにと、最中に交代で鈴をならしていた。これは共に遭遇している危険状態の中で一緒に助け合って乗り越え、生き抜き、楽しもう、ということか。シマオとのやりとりの後で、初めて小村が地震報道について思い出した事が書かれている。小村もショック状態で現実逃避していて、シマオとのやりとりでやっと感情が戻ってきた。そういうことなのだろうか。

    「アイロンのある風景」
    ”アイロンのある風景”という絵画についてはまだよくわからない。アイロンは妻を象徴しているのだろうか。そして冷蔵庫に閉じ込められる夢は、もしかしたら、そういう状況(三宅が妻を助ける事ができなかった、死亡するまで数時間がかかった)で妻を亡くした、ということだろうか。愛情は分かり合ってこそ深まる。絶望は、三宅と順子のように、よく知らない同士でも分かち合える。絶望の中でも肩を寄り添いながら、次の焚き火の日まで生き抜けるのかな。ちょっと被災者の避難所生活の様子が頭に浮かんだ。

    「神の子どもたちはみな踊る」
    義也の根っこ探し(実の父親)は自然な行動だと思う。これって、地震前と全く同じ過去を取り戻して現在の自分を立て直そうとする事を指してるのかな・・・?よくわからない。この母親の不思議な行動もよくわからない・・・。
    ”僕らの心は石ではないのです。石はいつか崩れ落ちるかもしれない。姿かたちを失うかもしれない。でも心は崩れません。僕らはそのかたちなきものを、善きものであれ、悪しきものであれ、どこまでも伝え合うことができるのです。”ーーここにはメッセージがある、と思う。

    「タイランド」
    北極熊も人間も同じく孤独。その孤独の中で、北極熊は年に一度の交尾後、潔くさぱりと孤独に帰る。一方の人間は終わった過去を過去に出来ず、何年も何十年も引きずる。そしてそれが体の中で石になる。そういうことかな?「言葉をお捨てなさい。言葉は石になります。」という部分はいまひとつ分からないが。痛みや苦しみは言葉に出してしまう方が、早く手放せて楽になるような気がするけれど。今まで呑み込んでいた石だからこそ、今その後悔を言葉にするとそれも石になるの?

    「かえるくん、東京を救う」
    ”片桐さん、実際に闘う役はぼくが引き受けます。でもぼく一人では闘えません。ここが肝心なところなんです。ぼくにはあなたの勇気と正義が必要なんです。あなたがぼくのうしろにいて『かえるくん、がんばれ。大丈夫だ。君は勝てる。君は正しい』と声をかけてくれることが必要なのです。” ”生きては帰れないかもしれません。身体の一部を失ってしまうかもしれません。しかしぼくは逃げません。ニーチェが言っているように、最高の善なる悟性とは、恐怖を持たぬことです。片桐さんにやってほしいのは、まっすぐな勇気を分け与えてくれることです。友だちとして、ぼくを心から支えようとしてくれることです。”--そういうことなんだと思う。

    「蜂蜜パイ」
    とんきちとまさきちのハッピー・エンドが出来てよかったね、と取りあえずは簡単にいってしまおう。タイミングを逃しても、そうあるべきところに流れ着く、ということでは無いよな。遠回りした後にハッピーエンドというのも、なんだか痒くなってくるし。諦めていたものが実は自分に手に入る事に気が付き、その大事さを改めて思った、か。ふむ。。。

  • 神戸の震災に影響を受けた6編からなる短編集。
    深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。

    後半の3作、「タイランド」「かえるくん、東京を救う」「糖蜜パイ」が好きです。

  • かえるくんの話が一番好きです。

  • カフカ、世界の終り、ノルウェイの森と読んで、
    四作目の村上ワールド。短編はお初。
    あまりに世界が深くて、メッセージがすごくて、体力がいるわ…と、
    勢いのあるときじゃないと無理!なのですが。
    現在思い切り忙しく疲れているのに、なんとなく今読みたい、
    と思って読んでみました。
    びゅん!とワールドに突っ込めて、びゅん!と戻ってこれる。
    短くても村上ワールドは村上ワールドだった。すごい。
    これから、若干疲れているけれどワールドに行きたいぜ、
    というときは、まだ読んでいない短編を読ませて頂きたい。
    帯に「カエルくん」が大絶賛されていると書かれていて、
    やや先入観も持ちつつ読み始めた途端、
    「これ、私の一番好きなやつだわ…」と思った。
    後は一作目の最後の場面に強烈に痺れました。
    思いつくがままの感想、おーわり。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「びゅん!と戻ってこれる。」
      そうですね!
      長編は、じんわり沁みてきますが、手放せなくなるのは、どちらも同じです。
      「びゅん!と戻ってこれる。」
      そうですね!
      長編は、じんわり沁みてきますが、手放せなくなるのは、どちらも同じです。
      2014/03/18
  • 短編集だけど、どれも阪神淡路大震災が
    少しずつ織り込まれていました。
    でも、それに対しての強い思いというより
    ふと接するようなイメージ。
    悶々とした中で、ふれあいがある。
    不思議な世界観が村上さんらしい。

    蜂蜜パイが好きでした。

  • 今回この短編集を再読したのは震災がきっかけでした。
    「地震のあとで」の地震とは阪神大震災のことなのですが、なにかいまの日本の状況に通じるものがあるに違いないと思ったのです。

    前回はただ不思議な話として読み飛ばしていた「タイランド」。心に傷を抱えた女医が学会で訪れたタイで、占い師に「あなたの身体のなかには白くて堅い石が入っている」と言われます。
    占い師は続けて、お前はいずれある夢を見るだろうと彼女に告げます。その夢とは緑の蛇の夢であり、その蛇を捕まえて離さないようにすれば蛇がその石を飲み込んでくれるというのです。

    個人的にゲーテ、ミヒャエル・エンデ、フィリップ・K・ディック、村上春樹は一本の線で結ぶことのできる作家たちだと思っているのですが、ゲーテの作品に「緑の蛇と百合姫のメルヒェン」というものがあります。エンデはこの作品を「ミヒャエル・エンデが読んだ本」でお気に入りとして挙げ、ゲーテ研究家としても知られるルドルフ・シュタイナーは人間の自己形成を象徴を用いて表現した作品として、ゲーテの著作のなかでも最重要のものとしています。
    二つの作品で蛇が果たす役割には明らかに共通するものがあり、興味深いと感じた次第。

  • 私にとって、とても大切な本。
    タイランドでミニットが、かえるくんでかえるくんが言ったことはそれぞれ頭に染み込んでいて、ふとしたときに蘇る。
    例えばある意味で一心同体となってしまうこと、死に向かう準備、心にある石。例えば真の恐怖は自身の想像力であること。迷いなく想像力のスイッチを切ること。
    知らず知らず私自身の糧になっていることに気づく。

  • 今回の震災のあとでどうしても読みたくなって再読。
    前回よりもずっと物語を近くに感じた。こんなにも登場人物がみなぞっとするほど孤独で、心に石を抱えて生きていたとは。
    しかしそこにも希望がみえるからこそ、読んでいる私も再生できる。

    私の好きな村上春樹とは少し違うけれど、それとは別に大切なものになりました。

  • 村上春樹の短編は格別。かえるくん東京を救う、蜂蜜パイとか。長編も好きだけれど、短編はわかりやすくってわりと完結していてまた違う良さがあるな。村上氏、はじめての三人称。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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