世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001586

感想・レビュー・書評

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  • "作品としての完成度"は認めるけれど"今の僕"には合わない小説でした。ファンの人には悪いけれど。

    10代〜20代前半の多感な時期に読んだらまた読後感も変わったかもしれないけど、30歳(遅くとも40歳)過ぎて社会との折り合いの付け方やアイデンティティ問題も解決している年代の人が本書を読んで癒やされちゃうのは少しマズい気がします。

    ラストに世界の終りであぁゆう選択を取ると言うことは成長物語なんでしょうね。

    メタフォリカルなアイテムがこれでもかと言う程出てくるので、好きな人は分析して深く掘ったりするんでしょうか。あと、話の本筋に関わらない余計な描写が多いですね。伝えたいメッセージだけ伝えるならこの半分に出来る気がします。

  • ラストに向かって 生きる 人とは を考えさせられる

    心のない完全な世界。辛いことも死もない穏やかに永遠な世界。
    でも心のある悲しみも苦しみもある世界を私も選ぶんだろう

    "私が自分の意思で選んだことといえば、博士を許したこととその孫娘と寝なかったことだけだった。"

    許すことを選ぶっていいな

    "道筋には往きに僕が残した足あとがまだくっきりと残っており、それはまるで僕が過去の僕自身とすれちがっているような印象を与えた"

    "涙を流すには私はもう歳をとりすぎていたし、あまりに多くのことを経験しすぎていた。世界には涙の流すことのできない哀しみというのが存在するのだ。"

    "人間の行動の多くは、自分がこの先もずっと生き続けるという前提から発しているのであって、その前提を取り去ってしまうと、あとにはほとんど何も残らないのだ"

    自分の命があと24時間と急に言われたら何をする?

  • 新作を読んでからこちらへ。
    なるほど、夢やあの街の謎はそういうことだったのか。
    あの街の魅力に取り憑かれてしまったので、いま新作の続きが読みたくて仕方ない。
    とても面白かった。
    メモったフレーズたくさんあるけど一部を以下に。


    ----------
    新たなるトラブルは新たなる絶望感で迎えいれればいいのだ。

    生命の営みというものはいつも同じだ。築き上げるのには結構時間がかかるが、それを破壊するのは一瞬で事足りる。

    中途半端に考えをめぐらすくらいなら、何も考えない方がずっとマシだ。

    「年をとるととりかえしのつかないものの数が増えてくるんだ」と私は言った。 「疲れてくるし?」 「そう」と私は言った。「疲れてくるし」

    どんな軍隊にも旗は必要なんだ。

    目的のない行為、進歩のない努力、どこにも辿りつかない歩行、素晴しいとは思わんかね。誰も傷つかないし、誰も傷つけない。誰も追い越さないし、誰にも追い抜かれない。勝利もなく、敗北もない。

    人間の行動の多くは、自分がこの先もずっと生きつづけるという前提から発しているものなのであって、その前提をとり去ってしまうと、あとにはほとんど何も残らないのだ。

    「心がそこにあれば、どこに行っても失うものは何もないって母が言っていたのを覚えてるわ。それは本当?」

    あれはたいした小説じゃないけど読ませる。逆よりずっと良い

    「料理というものは十九世紀からほとんど進化していないんだ。少くとも美味い料理に関してはね。材料の新鮮さ・手間・味覚・美感、そういうものは永久に進化しない」

    時間なんて勝手に好きな方向に流れていけばいいのだ。

    死とはシェーヴィング・クリームの缶を半分残していくことなのだ。

    テーマが明確だと融通性が不足するんだ。

    おそらく限定された人生には限定された祝福が与えられるのだ。


  • 新作とは関係なく、上巻からゆっくり読んでようやく読了。何となく荒廃した雰囲気?がたまらなく好きだった。

    ずっと面白かった。博士が真相を語ってからの、主人公の気持ち。。結構影が好きだった。

  • 村上春樹さんの作品には、すでに多様な考察が行われているだろうが、ここでは素直に自分が思った事や感じた事を書きたい。

    この物語の中には精神医学、心理学などに関わる要素が、ふんだんに含ませている様に感じた。

    村上春樹さんの作品には、読んでいて心の傷が緩やかに癒されていくような暖かみを感じる事があったが、この作品では露骨でストレートに心の回復、再生を描いている様に思う。村上春樹さんの作品が敏感な読者に受け、依存性がある理由が少しだけ分かった。

    個人的にはもっとメリハリが欲しかったが、読みやすく分かりやすい長編で、村上春樹さんに苦手意識がある人にも薦めやすい作品。

  • 交互に描かれる2つの世界。
    この世とあの世のような感触。
    微かに繋がる2つの世界、話は、それぞれ下巻で急展開をみせる。
    不思議な世界で交わされる言葉が、何かを暗示し、何かの隠喩になっているよう。
    読後、ずーっと考えてしまいそう。
    それだけ奥行きがある世界が描かれているということだろう。

  • 「私には私自身になる以外に道はないのだ。」のくだりは良かったが、たどり着くまでが長かった。。

  • 二つの物語が収束していくのを見届けました。何もかもがあるが、何もかもがない街。完全とは何か、永遠とはなにか、

  • (※上巻と同じ文です)

    2023年4月13日(木)発売の村上春樹さん新刊『街とその不確かな壁』の予習として、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読了しました。

    少しだけ情報を整理すると1980年に『街と、その不確かな壁』という中編が書かれていてその作品は単行本化されませんでしたが、『街と、その不確かな壁』を基にして1985年に書かれた長編が『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』です。

    そして、2023年に出る新刊のタイトルが『街とその不確かな壁』ということで、世界の終り〜と関係性があるのではないかと推測されています。

    1985年の作品をあらためて今読んでみると「街」は自分の無意識の世界のメタファーだし「壁」はその無意識の世界に閉じ込める抑制力のメタファーであるということがよく分かります。個人的には意識と無意識を行ったり来たりする中で変化していく感覚が普段の生活の中で今はすごくありますが、その感じを1985年の時点で文章で書き分けて表現されていたというのはすごいなと改めて思いました。

    ただ結末がなるほどという感じがして(未読の方のネタバレ防止のためこの感想)、1985年の空気感の結末なのかなという気がします。その後に、90年代00年代と長編を発表されていて結末のニュアンスはどんどん更新されていきましたが、2023年の新作において80年のタイトルを持ってくるのはかなり興味深いです。しかも、全く新しい話らしいということなので余計気になります。

    前作の長編『騎士団長殺し』が2017年で6年前ですが、この6年でまず年号が変わったし、SNSとかがあり得ないくらい普及しましたし、AIも今すごいですし、コロナでのステイホームがあったり、戦争が起きたりして相当に世の中や個人の在り方・感じ方が変化したし、変化し続けている最中ですが、そんな中でどんな物語が生まれてくるのか全く未知数ですけれどたのしみです。

    やっぱり「街=無意識の世界」と「壁=無意識を閉じ込める抑制力」の物語なんだろうなと推測しますが、無意識の世界って今どうなっているんだっけ?とかSNS出てきて無意識を抑制する壁って既に不確かで、その後の世界を生きていく手がかりってなんなんだっけ?とかタイトルだけで色々と想像してしまいます。

    とにかくもう予習は済ませたので、あとはぼんやりと世界や自分自身を眺めつつ発売日を待つのみです。読みはじめてからの自分はきっと色々と変化していくと思いますので、その変化に備えてプレーンな気持ちを整えていきたいなと思っている次第です。

    今まで村上春樹さんの作品を読んだことがない人も『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んでおけば、リアルタイムで新作を楽しめるかもしれないので興味持たれた方にはおすすめです。発売までまだ時間ありますので、ぜひぜひ読んでみて欲しいです。

  • 面白かった。が、謎が多かった。
    結局死んだ計算士はどうなったの?影は外に出れば死ぬのに何故外に出たの?夢読みはなぜ記憶を取り戻すの?ちょっと分からないので考察を読もう。
    ただ、村上春樹のミステリーっぽい小説は村上ワールド全開で、物語に入り込んで読めたし、少しずつ謎が解けていく感じは読んでいてとてもワクワクした。また読みたい!

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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