鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005157

感想・レビュー・書評

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  • そういうことだったのか、と読み終えたあとにゾッとします。

  • 全編がほぼカナで大変読みづらく苦労したものの、なんとか読了。
    「鍵」が好き。
    夫と妻の、体裁は秘密の個人的な日記としながら、その実、読み、読まれることを期待、もしくは確信しているという、一筋も二筋も手の込んだ駆け引きが面白くて、最後の最後にはぞっとした。
    「瘋癲老人日記」は正直何度もリタイアしそうになった。
    やはりカナ文章が私にとっては天敵。

    どちらもフェチズムを前面に押し出した「エロ」が描かれていたけど、前評判ほどにはエロいと思わなかった。
    それよりも「老い」や「病」にリアリティを感じてなんだか切なくなった。
    体がいうことをきかなくなってもそういう欲が生きる糧になることもあるのかしら・・・。

  • 鍵の冒頭から、ぶっとびました。
    谷崎作品の中でも恐ろしいほどのエロだわ。
    「鍵」では夫婦二人の日記が交互に、
    「瘋癲老人・・・」ではエロじじぃの日記が
    つづられていくのだけれども
    こうもあからさまに語っていいのか?

    どっちの主人公も、ほんっとに変態・・・

    • G SPOTさん
      耽美主義だね(笑)
      耽美主義だね(笑)
      2012/03/19
  • 鍵も瘋癲老人日記も、描写より話で読ませる作品です。
    一般人が書いた日記の体裁をとっているので、そりゃあいつもみたいに匂い立つような艶めかしい描写されちゃあびっくりですもんね。

    もう断然、瘋癲老人日記の方が面白いです。
    タイトルからしてイカれじじいの日記ですよ!?

    金持ちでドMで足フェチのおじいちゃんが息子の嫁に欲情して、足をしゃぶらせてもらったり、泣きながらペッティングさせてと強請ったり、実の娘には2万を出すのも渋るくせに300万もする指輪(当時の価値では2~3000万位じゃないですか!?)を買ってやったり、ひっぱたかれて逆に興奮しちゃって血圧200オーバーしたり…
    なんなの、このイカれじじい!?
    遂には息子の嫁の足をかたどった墓石の下に入りたいだなんて、死んでまで踏みつけられたいんかいっ!!

    いくら文豪とはいえ、こんな赤裸々でえげつないものを書いて、それが純文学なの?
    田山花袋の布団も大概ですけど、もうこれエンタメなんじゃないですか?
    とても愉快に読んだのですが、もしかするといつか、ものすごく嫌いな本になるかも知れません。
    こういうのを受け付けなくなるかもしれません。
    その位インパクトの強い本でした。

    11.12.15

  •  

  • 鍵 夫が手綱を引いてると思いきやその実、妻の思惑通りになっていく様が恐ろしい。嘘か本当か、敏子や木村の思惑は、闇にされたままの部分がまたちょうどいい塩梅で妄想させてくれる。
    無言はいつも多言より雄弁。

    老人日記
    この老爺、気持ち悪い

  • 「始末ニ悪イ不良老年、ジジイ・テリブル!」

  • やられた。墓石に颯子の立像を、や、颯子の仏足石を、か。その発想、これにはやられた。脚好きな谷崎氏、足の拓本をこの老人に取らせるとは。
    そしてこの思想。仏足石あるがゆえに、「アタシハ今アノ老耄レ爺ノ骨ヲコノ地面ノ下デ踏ンデイル」などと颯子の記憶から拭い去れぬようにし、死後も颯子の中で生きよう、彼女の全身の重みを感じ、痛さを感じ、足の裏の肌理のつるつるした滑らかさをまでを、死んでも感じようとするこの思想。

  • 二作品ともぎりぎりのところでもがいている感じがいい。

    「鍵」のほうはちょっとした叙述トリックみたいになっていて、信頼して素敵だなーなんて思いながら読んでいた気分が裏切られます。

    瘋癲老人日記のさつこへの曲がった欲望を読むとなんとなく歳をとる希望を感じる。

  • 田中さん所有
    →10/08/01 浦野レンタル→11/02/27返却
    田中さんの本、落丁本でしたよ(^^;;;
    というわけで、浦野買いました。

    浦野所有
    →11/07/30 稲葉さんレンタル
    →12/10/20 返却

    浦野レビュー◆ネタバレあり - - - - - - - - - - - - - - -
    何ともいいようのない怪作ですね~。
    「鍵」の精神崩壊としか思えない夫婦の日記。
    「瘋癲(ふうてん)老人日記」の救いようのない変態っぷり。
    開いた口がふさがらないというか、何というか。でも、どちらも超オススメです。

    個人的には、「本の会」女性陣の感想を聞いてみたい(^^ゞ
    ぜひ読んで!!

    ちなみに「瘋癲老人日記」のほうは、大学生がよむ50冊に選ばれていますが、なぜなんでしょうか??
    文学史上、それほどすごい作品なんですかね。内容の奇怪さにばかり気をとられて、文学的価値がよくわかりませんでした(^^;;;
    話が進むにつれ、77歳の老人・卯木(うつぎ)督助の壊れっぷりが激しくなり、有名なクライマックスの場面では笑いをこらえるのに必死でしたよ。

    崩壊の果てに、静かに日記が閉じられる結末もいいですね。

    <瘋癲老人日記・第二節より>
    「殴ルワヨ、ホントニ。コナイダハ手加減シタゲタノヨ」
    「ソンナ御遠慮ニハ及バンヨ」
    「アタシノ掌ハヨク撓(しな)ウノヨ、ホントニ打(ぶ)ッタラ眼ガ飛ビ出ルホド痛クッテヨ」
    「ソレハ寧(むし)ロ望ムトコロ」
    「始末ニ悪イ不良老年、ジジイ・テリブル!」

    <同・第六節より>
    「コレニ墨や朱を滲(し)マセテ、石ノ表面ヲパタパタ叩イテ拓本ヲ作ルノサ、僕ハ朱色デ拓本ヲ作ルノガトテモ好キナンダ」
    「石ナンカナイジャナイノ」
    「今日ハ石ハ使ワナイ、石ノ代リニ或ル物ヲ使ウ」
    「何ヲ使ウノ?」
    「君ノ足ノ裏ヲ叩カセテ貰ウ。ソウシテコノ白唐紙ノ色紙ノ上ニ朱デ足ノ裏ノ拓本ヲ作ル」
    「ソンナモノガ何ニナルノ」
    「ソノ拓本ニモトヅイテ、颯(さっ)チャンノ足ノ仏足跡ヲ作ル。僕ガ死ンダラ骨ヲソノ石ノ下ニ埋メテ貰ウ。コレガホントノ大往生ダ」

    …始末に悪いどころか、どうしようもない老人の独り言が、200ページにわたって続きます。
    ある意味、非常に読み応えのある作品です。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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