晩年 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006017

感想・レビュー・書評

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  • 約5ヶ月ぶりに読書再開、太宰の1st.アルバムから。
    中期太宰はほぼ全て読破して読みやすいエンターテイメントだったけど、
    前期太宰は前衛的なものもあって読むのがしんどい(笑)。
    なので読み終えるまで非常に時間がかかった。
    なぜか手に汗握り、カバーもヨレヨレ。

    その後の作品の原点となるものがバラエティ豊かにぎっしりと詰まっている。
    「彼は昔の彼ならず」がよかった。

  • どの本をと読んでも太宰治らしさがみえていい。津軽の表現が、多くて風情あった。
    でも、全てを理解するのはまだまだだと思ったのであと3年後にもう一回読みたい。

  • いやぁ。自分は太宰治の熱心な読者というわけではないですし、自虐と自己憐憫の果てに破滅に至るような作品なのかと身構えていましたが、意外なほどの明るさと瑞々しさを湛えた青春の書じゃないですか。

    まずもって、27歳の若さで世に送り出した処女作品集のタイトルが『晩年』って。人生に疲弊し切った老人の繰り言のような題です。が、内容を読むにつけ、人生にそれだけ絶望し尽くすというのもまた若さなのかも、と思わされましたね。年齢ではなく、感性において、太宰は本当に若い。逆に若者でなければ書き得ないような鋭さといいますか、斬新な感覚に満ちています。

    妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女作品集。
    “撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり”というヴェルレーヌのエピグラフで始まる『葉』以下、自己の幼・少年時代を感受性豊かに描いた『思い出』、心中事件前後の内面を前衛的手法で告白した『道化の華』など15編より成る。

    1 葉/2 思い出/3 魚服記/4 列車/5 地獄図/6 猿ヶ島/7雀こ/8 道化の華/9 猿面冠者/10 逆行/11 彼は昔の彼ならず/12 ロマネスク/13 玩具/14 陰火/15 めくら草紙

    所々、著者自身による前置きや脚注、解説や弁解めいた文言が挿入されるあたり、鼻につかないではないです。四の五の御託を並べるのはいいから、早く本編に行ってよ!と言いたくなる感じ。が、溢れ出る文才の絵の具をキャンバスに叩きつけたようなアオハルっぷりはたまりません。この純度・深度を他の作家で味わうことは困難ですわ。

  • 太宰治の最初の本。中編小説15篇が収録。
    老年の作家が書いたような「晩年」というタイトルだが、太宰が27歳の時のもの。収録されている作品に「晩年」というそれのものはない。太宰が遺書のつもりで、それまでの人生のすべてを書き残した。
    もはや90年近く前の本なのだが、令和の時代に読んでも全く色褪せた内容には思えない。

  • 昭和十一年刊行の太宰治の処女作品集。

    以前、別のアンソロジーで「富嶽百景」を読んだとき、自分がどう見られているのかをすごく気にする人だと感じたが、それは本書収録の作品にも直截的に書かれている。また、(意識的か苦しまげれかはさておき)小説の筋をいったん止めて作者自身が説明や言い訳をしたり、とりとめのない文句をコラージュ的に並べて雰囲気を演出したり、または箴言めいたことを書いてみたり、気取っていて自意識が非常に強い。解説には二十三、四歳のころに書かれたとされているので、そうなるのも当然ではあるのだろうけれど、いま一歩作品に入り込めない。思春期に読んでいれば、また印象は違ったのだろうとは思う。
    どの作品にも作者自身が反映された登場人物が出てくる。


    以下は印象的だった作品

    ・「猿ヶ島」
    猿の流れ着いた島が、実は動物園だったと判明する。
    先着の猿が語るさまざまな職業についての皮肉が面白い。

    ・「猿面冠者」
    人生の岐路に立たされたとき、見知らぬ人から手紙が送られてくる、「風の便り」という小説を書く過程を作者の思考を交えながら描く。小説のなかで小説を書くという入れ子構造になっている。
    同じ手法をとっている「道化の華」(本書収録)では、読者に見られることを意識したうえで悩み、卑下している感がある。

    ・「彼は昔の彼ならず」
    親の遺産を譲り受けた青年は、木下青扇という男に家を貸したが、いっこうに家賃を払う気配がない。取り立てに行っても、いつもうまい具合にごまかされてしまう。働くようにすすめるも、女房が変わるたびに手をつける仕事も変わり、稼げている様子はない。なかば放っておいているところに、青扇の最初の女房が青年のもとを訪れる。

    ・「ロマネスク(仙術太郎 / 喧嘩二郎兵衛 / 噓の三郎)」
    蔵にこもって仙術を会得した太郎。喧嘩の腕を磨こうと鍛錬を積む二郎兵衛。幼いころから嘘をつき続けてきた三郎。思うよういかない三人を、おとぎ話のような形で滑稽に描く。

  • 【葉】麻の着物をもらったことであと少し生きてみよう、そんなふうに思うなんて生きるって案外シンプルなことなのかなって思って気持ちが楽になった。

  • ふた通りの読み方があると思う。

    書き手である、太宰の心境を思いながら読むのと、自分にあてはめ、共感したり嫌悪したりしながら読む読み方。

    私は、太宰の著書を読むとき、太宰が自殺したことを必ず思い出す。
    そして、自殺したことも含めて、すべてが作品として、私の胸にのしかかってくる。

    太宰の描く、どうしようもなく歪んだ、本来人間のもっている汚い泥みたいなものに、共感して、悲しくなって胸が痛くなる。

  • 「太宰治」の短篇集『晩年』を読みました。

    先日読んだ「寺山修司」の著書『ポケットに名言を』で、『晩年』からも名言が選ばれていたので、読んでみたくなりました。

    -----story-------------
    1936年(昭和11年)6月25日に砂子屋書房から発行された、「太宰治」の処女小説集。
    『葉』『思い出』『猿ヶ島』『ロマネスク』など短編15編を収録している。
    初版は500部発行。
    27歳の若者が最初に出した小説に『晩年』と付けたのは、それが遺書になるだろうと思ったからだ、と「太宰」自身が語っている。
    思想混乱の時代の青年の生存苦をテーマに、内容、文体ともに多彩な手法で書かれた短編集である。
    第1回芥川賞候補作。
    -----------------------

    1936年(昭和11年)に発表された処女作品集で、以下の15篇が収録されています。

     ■葉
     ■思ひ出
     ■魚服記
     ■列車
     ■地球図
     ■猿ヶ島
     ■雀こ
     ■道化の華
     ■猿面冠者
     ■逆行
     ■彼は昔の彼ならず
     ■ロマネスク
     ■玩具
     ■陰火
     ■めくら草紙

    デビュー作なのにも関わらずタイトルが『晩年』となっているのは、当時、「太宰治」が自殺を前提にして遺書のつもりで「最初で最後の作品集」として書きはじめたことに由来しているそうです。

    「太宰治」らしさがタイトルにも表れていますよね。

    そんな本作品集の中で「太宰治」のことを殆んど知らない私が、「太宰治」らしいなぁ… と感じたのは、ストーリーに一貫性がなくつながっていないけど「太宰治」の心情が表現されている(感じのする)『葉』と自叙伝的小説の『思ひ出』、自意識と罪意識を告白しようと試みている『道化の華』ですかね。

    『道化の華』は、登場人物の他に物語を中断して作者の自意識が登場して、作品の手法を批判するという不思議な作品… 自己否定って、ことなのかなぁ。

    主人公の「大庭葉蔵」という名前は『人間失格』の主人公と同名なんだそうです。




    全般的にはもどかしさを感じながら読み進めた感じ、、、

    作者と意識がシンクロできないことと、作品の中の世界観や情景を頭の中でうまく映像化できないことがストレスになったことが原因かな。

  • 死に向かって生きる。死ぬために生きる。
    生きていることにもがき苦しみ、死ぬこともままならぬ。
    太宰治はどう考えていたのやら。
    自叙伝として、そして遺書としてのこした作品とのことですが、私にはわからぬ世界です。
    しかしながら何故か惹かれてしまうのが不思議。

  • 今を引き延ばしてどうにか生きる。それでいい。
    大きな、或いは小さな挫折から正しく死ぬ程の絶望を味わう。それを昇華させる力を持ち得ているのは正直羨ましい。わたしはまだ、この気持ちをどうするべきか、模索しているのだろうから。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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