斜陽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006024

感想・レビュー・書評

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  • 人間は恋と革命のため生まれてきたのだ。

    ちょっとしか会ったことのない人を思い続けて「あなたの赤ちゃんがほしい」とかすごい!こんな手紙、妻子ある人に送ったら普通ドン引きだ。

    お母様が亡くなって、久しぶりに会った上原さんに対して「老猿」ってとこは笑ってしまった。そして恋が冷める。会ってないうちに美化されていったんだろう。荒んだ生活をしてたら人は一気に老ける。でも上原さんの生きづらさというか生きる哀しみ?哀れさを知って、一夜を共にしてまた恋をする。

    ほんとに女性というものは‥恋に生きる生きものなんだろう。自分も若い頃は恋愛のことしか考えて生きてなかったかもしれない。でも、そんなに情熱を注げるってすごいことだ。

    あと、貧しさ生きづらさからか、みんなすぐ死にたいとか死が美学的に思っている気がする。今の恵まれた時代からは想像できないだろうけど、どんなことがあっても死んだらもうおしまいなんだから‥て思う。

    直治の遺書も哀しかった。直治の好きな人が上原さんの奥さんてとこにもびっくり。その偶然もまた哀しい。

    逆にかず子はたくましかった。大好きな人の赤ちゃんを授かったら女は、あんなに前向きに生きていけるのか。自意識過剰で自己中な女性だなとも思ったけど、強くて可愛らしいひとだ。

    暗いけど、また太宰治の作品いろいろ読みたい。

  • 恋と革命。一ばん美しいのは犠牲者。

  • 退廃的な美しさがあった。
    弟になんだか同情してしまう。
    ああいう、可哀想に見える男が好きなのかもしれない。

  • 令和になってもリアルに共感できるのだなあ…
    新しい本を次々読まなくても、太宰治がぜんぶ言っていたという再発見の気持ち。

  • 言葉がすき。お母さまが、どうしてもどうしても美しくて。
    人間は恋と革命のために生れて来たのだ。

  • 太宰の作品は、暗い中にもどこかに光を求めて、前進していこうとする人物と、自傷を肯定的に捉え、そこに向かっていく人物の対比があり、それは太宰本人の望みというか、本人の光と影の部分を小説という形に残しているのではないかと感じる。
    「人間には生きる権利があると同様に、死ぬる権利もある筈です。」
    「生きて行きたいひとは、どんな事をしても、必ず強く生き抜くべきであり、それは見事で、人間の栄冠とでもいうものも、きっとその辺にあるのでしょうが、しかし、死ぬことだって、罪では無いと思うんです。」
    直治の手紙に考えさせられた。

  • 没落した貴族一家の生き様。
    道徳というものの過渡期にあって、生きることの意味、苦しさ、希望と絶望、そして生きてゆく辛さをまざまざと見せつけられる作品。
    堕落し、酒や薬に溺れる男たち。
    取り囲む女たち。
    それでいて純真無垢な心の見え隠れが、
    生きることへの活力を思い出させる。
    女性の強さを知る。
    苦しくって、苦しくって、それでも私は生きる道を選ぶ。

  • 約一年と半年ぶりに再読した。
    戦争が終わり、没落を辿る貴族の一家のお話。
    しかしただの一家の没落でなく、社会との対立のようなものを感じた。貴族という存在がなくなっていく中で、娘のかず子と息子の直治は「最後の貴族は母親だ」と言っていたが、否が応でも彼らだって貴族の運命から逃れることは出来ないのだ。戦後の変わりゆく中で俗世間の連中はそんな彼らを嘲笑する。彼らは俗世間で生きていこうと奮闘するのであるが、直治は勝つことができず、最後まで戦い抜こうと決めたのはかず子の方であった。その様は俗世間で生きていこうとすることこそが貴族としての矜持を浮き彫りにしているような感じがしてならなかった。

    この小説には上原という小説家(画家?)の人物が登場する。この人物が掴みきれず長い時間考え込んでしまった。
    この上原は浮気はするは借金はするはでどうしようもない人間なのであるが、かず子も直治も彼に惹かれる。その理由は貴族であることの後ろめたさからであろうが、上原自身も彼ら貴族の残滓同様に社会に抗い、悲しく生きている。ここまでは分かるのであるが、直治が自殺する前に書いた遺書の中では「ただの酒飲み、遊び好き、馬鹿な自信家、ずるい商才」とボロクソに書かれている。これがどうしても腑に落ちなかった。私にはこの三人が似ているような気がしてならなかったからである。私が最後のかず子の手紙を読んで画家が上原であると気づかなかった理由でもある。だがこの上原という人物が太宰自身の反映だと思うと腑に落ちた。恐らく上原(太宰)のような人物が放蕩する中で、女以外には「僕は悲しい」などとキザな一面は見せなかったのだろう。心から上原に心酔したかず子と上原の妻に引かれた直治の違いはここにあるような気がする。

  • 酒でいうとアルコール度数高い。

  • 太宰治の作品は『人間失格』しか読んだことがなかったが、本作を読んで太宰治のイメージが変わった。明るいまではいかないものの、人間の強さが見え隠れする。

    とは言え、太宰治の価値は今の私にはまだ理解が及ばない。美しいものを壊さなければ、革命は起こらない…うむ。

    印象的だったのは、最後の貴婦人である母。
    かず子と直治がもつ母への愛情は独特。
    確かにこの母は惹きつけられるものがあるが…。

    自分の中で理由ははっきりしないのだけれど、なぜかページがどんどん進んだ。本作のどんなところに引っ張られていたのだろう。それが理解できれば、太宰治の魅力も少しは理解できるような気がするのだが…。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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