斜陽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 13002
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006024

感想・レビュー・書評

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  • 全員、個が強すぎて最初は引いてしまった。
    みんな生活力もないのに、身勝手でどうやって生きてるのか心配になる。かずこの独走ぶりには驚くし、直治の口の悪さよ…
    ただ、不安定で誰も未来を予想できない敗戦間もないあの時代だから、みんな葛藤しながら自分自身と戦って生きていたのかなとも思う。

    話に出てくる別荘の支那間ってどんなデザインなんだろう?東洋を感じる表現も想像力を掻き立てられる。太宰治の文章は柔らかくて表現が心地良い。

    「ヴェランダは、すでに黄昏だった。雨が降っていた。みどり色のさびしさは、夢のまま、あたり一面にただよっていた。」

    ここが一番好き。


  • 太宰治の本は、読みやすい。
    今作品も読み易いけれど、だからこそ堕ちていく家族の気持ちがダイレクトに伝わってきてしんどかった。

    特に好きなのが、直治の遺書の部分。
    直治は貴族である自分を否定したかったけれど本質的なところは貴族であり、それを苦にして自殺したのだと思うが、文章がうま過ぎる。
    最後に「僕は貴族です。」という言葉で締めているところが痺れました。

    全体的に鬱々としていて読んでいて気持ちのいい作品ではありませんが、なぜか惹き込まれる。
    もっと太宰作品を読みたいと思いました。

  • 読み始めた当初は、「斜陽」という題は貴族階級が衰亡に向かい没落してゆく様を描いた作品を意味していると思っていました。

    しかし、読み終わる頃には先程述べた意味と二重の意味で、日没前でも自ら光を放っている太陽と同じく、母が病死し弟が自殺し、孤独になったかず子が最後、お腹に宿った子と新しい人生を歩んでいこうとする生命力を意味する題でもあると感じました。

    直治が自分が貴族出身だということを友人と絡んでいく中で嫌悪感を抱き、それでも対等な関係になれるよう必死に足掻いた結果、自分を苦しめるだけだった。無意識ではあるがプライドを捨て切れず奢られるようなことはせず、自分で支払ったりなど、自分が一番捨て去りたいと思っている部分なのに完全に捨てることが出来ない。これは直治だけではなく、昔も今も生きている人間なら誰しもが経験することだと思います。遺書の最後の「僕は、貴族です。」に直治の全てがつまっていると思いました。

    主人公が女性だということもあり、女性目線のタッチで描かれていましたがとても繊細なところまで表現されており、非常に惹き込まれる作品でした。

  • 切なくて、暗くて、退廃的で、どう仕様もないが、読みやすくて、面白い。

  • 読み進めれば読み進めるほど、悲しみ、哀しみ、堕落していく様子と対照的な美しさや誇りが本当に辛かった
    でも美しい犠牲者、小さな犠牲者っていう言葉がピッタリだなって思った
    比較的読みやすかったです!

    私は秋の花が好きなので、秋に死ぬって本当ですかね、笑

  • 「僕は、家を忘れなければならない。父の血に反抗しなければならない。母の優しさを、拒否しなければならない。姉に冷たくしなければならい」

    革命、自分の殻を破るということは、こういう事なのかも知れない

  • こうやって滅びて行くのは幸せなことかもしれない。

  • 直治めっちゃいいやつというか
    自分なりに考えながら生きていたと思うと
    遺書のシーンでは涙流しそうでした

  • 「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら」

    「お金が無くなるということは、なんというおそろしい、みじめな、救いの無い地獄だろう」
    「貧乏って、どんな事?お金って、なんの事?私には、わからないわ。愛情を、お母さまの愛情を、それだけを私は信じて生きて来たのです」

    その虹は螢の光みたいな、またはお星さまの光みたいな、そんなお上品な美しいものではないのです。そんな淡い遠い思いだったら、私はこんなに苦しまず、次第にあなたを忘れて行く事が出来たでしょう。私の胸の虹は、炎の橋です。胸が焼きこげるほどの思いなのです。
    もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです。

  • 戦後の不安定な情勢。社会へ抱えた不信が革命の機運を高める中、没落貴族が市民生活へと放り出され、人間らしさを取り戻しつつも苦しみながら生きていく。自身の弱さに悩み苦しみ、酒や麻薬に溺れるも、人間には生きる権利も死ぬ権利もある。と命を絶つ直治。対照的に、みじめで生れて来ないほうがよかった。と反出生主義的な発言をするも、社会に抑圧に対抗し、恋と革命に生きると新しい人生に身を投じたかず子。退廃的な暗闇に鈍い光を見る事ができた。太宰の境遇と合致する部分が多く、巻末の解説が分かりやすい。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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