- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101006024
感想・レビュー・書評
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全員、個が強すぎて最初は引いてしまった。
みんな生活力もないのに、身勝手でどうやって生きてるのか心配になる。かずこの独走ぶりには驚くし、直治の口の悪さよ…
ただ、不安定で誰も未来を予想できない敗戦間もないあの時代だから、みんな葛藤しながら自分自身と戦って生きていたのかなとも思う。
話に出てくる別荘の支那間ってどんなデザインなんだろう?東洋を感じる表現も想像力を掻き立てられる。太宰治の文章は柔らかくて表現が心地良い。
「ヴェランダは、すでに黄昏だった。雨が降っていた。みどり色のさびしさは、夢のまま、あたり一面にただよっていた。」
ここが一番好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
太宰治の本は、読みやすい。
今作品も読み易いけれど、だからこそ堕ちていく家族の気持ちがダイレクトに伝わってきてしんどかった。
特に好きなのが、直治の遺書の部分。
直治は貴族である自分を否定したかったけれど本質的なところは貴族であり、それを苦にして自殺したのだと思うが、文章がうま過ぎる。
最後に「僕は貴族です。」という言葉で締めているところが痺れました。
全体的に鬱々としていて読んでいて気持ちのいい作品ではありませんが、なぜか惹き込まれる。
もっと太宰作品を読みたいと思いました。 -
切なくて、暗くて、退廃的で、どう仕様もないが、読みやすくて、面白い。
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読み進めれば読み進めるほど、悲しみ、哀しみ、堕落していく様子と対照的な美しさや誇りが本当に辛かった
でも美しい犠牲者、小さな犠牲者っていう言葉がピッタリだなって思った
比較的読みやすかったです!
私は秋の花が好きなので、秋に死ぬって本当ですかね、笑 -
「僕は、家を忘れなければならない。父の血に反抗しなければならない。母の優しさを、拒否しなければならない。姉に冷たくしなければならい」
革命、自分の殻を破るということは、こういう事なのかも知れない -
こうやって滅びて行くのは幸せなことかもしれない。
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「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら」
「お金が無くなるということは、なんというおそろしい、みじめな、救いの無い地獄だろう」
「貧乏って、どんな事?お金って、なんの事?私には、わからないわ。愛情を、お母さまの愛情を、それだけを私は信じて生きて来たのです」
その虹は螢の光みたいな、またはお星さまの光みたいな、そんなお上品な美しいものではないのです。そんな淡い遠い思いだったら、私はこんなに苦しまず、次第にあなたを忘れて行く事が出来たでしょう。私の胸の虹は、炎の橋です。胸が焼きこげるほどの思いなのです。
もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです。
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戦後の不安定な情勢。社会へ抱えた不信が革命の機運を高める中、没落貴族が市民生活へと放り出され、人間らしさを取り戻しつつも苦しみながら生きていく。自身の弱さに悩み苦しみ、酒や麻薬に溺れるも、人間には生きる権利も死ぬ権利もある。と命を絶つ直治。対照的に、みじめで生れて来ないほうがよかった。と反出生主義的な発言をするも、社会に抑圧に対抗し、恋と革命に生きると新しい人生に身を投じたかず子。退廃的な暗闇に鈍い光を見る事ができた。太宰の境遇と合致する部分が多く、巻末の解説が分かりやすい。