- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101006048
感想・レビュー・書評
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2020/2/2
厚さは薄いけど内容はぎっしり。太宰治の生まれ育った街である青森を旅したときの情景とそこであった人々との交流を描いた太宰治のルーツが書かれていると言ってもいい本です。
太宰治は訪れた街についてたくさん書いてありますが、そのどれもが風景をありありと想像することができる表現がなされていることにすごさを感じます。ちょっと皮肉交じりで書かれている表現が、彼がこの地がとても気に入っていて大好きだったんだなぁということを思わせてくれます。
津軽を含め、この一帯を自分も旅してみたくなります。また、最後は、幼少期の自分の乳母と30年ぶりに再会するという結末で話が終わっています。旅をする過程で出てくる人物もかつての津島家で働いていた人だったり、関わりのある人たちばかり。
その思い出をたどる旅でもあったんだなあと思います。訪れた街を少し小馬鹿にしつつしっかりリスペクトを忘れていないあたりの太宰治のツンデレ感が否めません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
クライマックスよかった。そしてあそこまでしか書かなかった作者のおもいがじんと伝わった。それ以上書くことができないほどのことがあったのだろう。それを想像する余韻が広がる。
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再読。太宰の、太宰による、太宰のための、故郷津軽の紀行文。
内容は大の大人が、友人知人宅に次々に上がり込んでは大酒を飲むというお話です(笑)
閉鎖的な田舎人ではなく、東京人としての冷静さを兼ね備えつつ、どれだけ津軽や津軽の人々を愛しているか、不器用で率直に書かれています。さすが、自称専門科目「愛」!!w
やはり、津軽が一番好き。不器用で頑固で、でもとても純粋な太宰の価値観が好き!ラストは嬉しいやら切ないやらやっぱり嬉しいやらで何度読んでも涙目です。 -
青森の風土に関する記述箇所が自分には馴染めなくてだらだらと時間をかけて読んでしまったが、太宰が故郷にかえり、彼が安心するひとたちと会う穏やかな空気感が素敵な作品。
たけと会うシーンは必見。彼が生涯さがしもとめた心の安寧はここにあったのだな。 -
ラストの、自分に文学の素養を身につけてくれたと言っても過言ではない使用人の女性との再会は、感慨深い。
蝦夷地とも言われていた頃からの津軽の歴史に言及することにも多くのページが割かれている。
辺境の地としての津軽を、そこよりも南の地域とは区別して人が都会化していないとして、時には愛情を持ってさげずむ。
古い友人と津軽半島東側をを大酒をくらって旅する姿と、後半は一人で黙々と西側を行き来する対比は対照的である。 -
太宰治の作品の中で一番好き。
津軽を巡礼してみたい。 -
太宰文学は延々と自虐が続いていくイメージがある。しかし本作『津軽』は中々に軽快に読み進めていくことができた(それでも時折り自己卑下の部分も見られるが…)読んでいる時、幾度も、「これはかの太宰が書いた文章か…?」と思った。平易な語彙と文から組み合わさる本作は絶妙なリズムを奏で、津軽の鮮やかな景色を浮かび上がらせる。優しく角のない丸い文体は、読み手を落ち着かせ、その心を穏やかにし、束の間の平穏をもたらす。まるで、それはまるで、ほんのりと温かみが残っているホッカイロで掌を包み込んでいるみたいだ。
是非とも、今度、津軽に足を運んでみたいものだ。太宰が見た津軽の景色を、私も、また、見ることができるのだろうか。 -
太宰治の作品の中では比較的明るい筆致で書かれた作品。行く先々でお酒を飲んでいるのにも関わらず、二日酔い程度で1時間も2時間も歩いているシーンもあり、酒が強い印象が深く残った。
ラストシーン、幼少期に関わりのあった女中のたけとの再開のシーンが特に良かった。希望を抱くも諦めかけていた所で、展開が変わり無事に会えたシーンは感動した。
自分を全てさらけ出して、悪い癖もダサい所も書かれていて改めて人間らしさを感じた、面白い作品だった。 -
大橋さんリリース