一千一秒物語 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101086019

感想・レビュー・書評

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  • 「少年愛、数学、天体、ヒコーキ、妖怪…近代日本文学の陰湿な体質を拒否し、星の硬質な煌きに似たニヒリスティックな幻想イメージによって、新しい文学空間を構築する"二十一世紀のダンディ"イナガキ・タルホのコスモロジー。表題作のほか『黄漠奇聞』『チョコレット』『天体嗜好症』『星を売る店』『弥勒』『彼等』『美のはかなさ』『A感覚とV感覚』の全9編を収録する。

  • いたんですよね、不思議な文章を書く先輩が。訳が分からないけれど印象的だったその文、ここにルーツがあったのでした。そうかー、あの人、あの頃から読んでいたんだ。
    夭折した画家・有元利夫さんに、版画集「一千一秒物語」があります。この世界観が捉えられています。

  • 2022.04.14

  • 後半の評論的な話で、段々と一千一秒物語が意味づけされていくのが良かった

    現実世界に当たり前のように宇宙が存在する世界は、性的衝動だったり郷愁を含めた深層にある欲求が表出したもので、そういう点でシュルレアリスムと並ぶ作家のように思った

    話の展開はその当時流行っていただろうスラップスティックコメディ映画調 シュルレアリスムもスラップスティックコメディもサイレント映画時代の話なので、映画好きだったんかなあと

    戦争中に近くにあった桃型の尻で気をそらしながら恐怖経験を耐えたことがきっかけで、PTSD的な発作を直す時に桃型の尻のイメージが浮かぶようになったっていうエピソードが、この超現実的かつちょっと馬鹿馬鹿しい世界観を象徴するもののように思えた 部屋の中に入ってきた月は桃型の尻だったのかもしれない

  • 【推薦者】S.N@落花狼籍教室 師範代

  • ハイデガーを読んでいる時のイライライライラする感じを思い出していたら「ハイデッガー」を引用しだして勘弁してくれとなった

    「デジャブ」だの「ニヒリズム」だのを思い起こさせるような文章 狐につままれたか煙に巻かれたるような感じ

  • 奇妙!

  • ただし「一千一秒物語」に関して。

  • 黄漠奇聞はすき。最後の「私」は犬だと思ってる。軍用犬。風のささやきは人間には判らぬ言葉って冒頭にあるから。はじめは馬かと思ったけど、自動車隊に馬はいないだろうし。表題作は星も月もけんかっぱやくてちょっとわらった。再読するとしたら自分の場合、黄漠奇聞だけになってしまいそうな予感。

  • タルホと言えば、一千一秒物語です。
    あの完成度、読みやすさ、不可思議具合、どこをとってもperfect。
    短いのになると、5行とかで終わってしまうと言う、超短編の数々。
    刹那の閃きを、数行の世界に押し込めた傑作集です。
    ここで描かれる世界は、例えば、道を歩いていたら街灯に放り投げられる世界。
    月の光を蒸留して出来たお酒を飲む世界。
    落ちてきた流れ星と正面衝突して、お星様と喧嘩になる世界。
    そして、電車を降りる時に、Pocketに入れていた自分自身を落っことす世界です。
    ほら、興味が湧いてきたでしょう?
    クラフト・エヴィング商會が好きな人なら、きっと気に入ります。
    って、そもそもクラフト・エヴィング商會がminorか。はは。
    僕の大好きな一編、「ポケットの中の月」を。<blockquote>ある夕方 お月様がポケットの中へ自分を入れて歩いていた 坂道で靴のひもがとけた 結ぼうとしてうつむくとポケットからお月様がころがり出て 俄雨に濡れたアスファルトの上を ころころころころ どこまでもころがっていった お月様は追っかけたが お月様は加速度でころんでゆくので お月様とお月様との間隔が次第に遠くなった こうしてお月様はズーと下方の青い靄の中へ自分を見失ってしまった</blockquote>タルホは、他にもたくさんの名著を遺しています。
    ただ、一千一秒に比べると、ちょっと難解。文体がね。
    なので、まだじっくりとは読み込めていないのが本当。
    A感覚とV感覚、少年愛の美学、弥勒、宇宙論入門。
    タイトルだけでもゾワゾワきそうな著書の数々です。

    昼の光よりも、星と月と街灯の光を好んだタルホ。
    彼の遺した文章を読むと、宵闇の世界へと踏み出していきたくなります。
    そこは、たとえば古き神戸の街並みがそうであったのだろうなぁ、と思わせる。
    nostalgia、monochrome、そして、薄い青色の霧で縁取られた街。
    潮の香りと煙草の紫煙、そして僅かな「アルコホル」の匂いに彩られた街。
    その、「レモン味のハッカ水」のような爽やかな世界を、ぜひご賞味あれ。

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著者プロフィール

稲垣足穂(1900・12・26~1977・10・25) 小説家。大阪市船場生まれ。幼少期に兵庫・明石に移り、神戸で育つ。関西学院中学部卒業後、上京。飛行家、画家を志すが、佐藤春夫の知己を得て小説作品を発表。1923年、『一千一秒物語』を著す。新感覚派の一人として迎えらたが、30年代以降は不遇を託つ。戦後、『弥勒』『ヰタ・マキニカリス』『A感覚とV感覚』などを発表し、注目を集める。50年に結婚、京都に移り、同人誌『作家』を主戦場に自作の改稿とエッセイを中心に旺盛に活動し始める。69年、『少年愛の美学』で第1回日本文学大賞受賞、『稲垣足穂大全』全6巻が刊行されるなど「タルホ・ブーム」が起こる。

「2020年 『稲垣足穂詩文集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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