一千一秒物語 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101086019

感想・レビュー・書評

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  • 読了せず。
    よく聞くものと、読みやすい文体の物を、かいつまんで読んだ程度。
    「タルホ的」な物を読んだことはあっても本家は読んでいたかった故。

  • キネオラマ的世界観が好きな人には一千一秒物語はどストライクの作品かもしれない。

    キネオラマとは?
    〔和 kinema+panorama〕明治時代の興行物の一。パノラマの背景・点景などを色光線の照明によって種々に変化させて見せる装置。

    こういう仕掛けを伴ったミニチュアの中では、想像力は自由に羽ばたくことが出来ない。圧縮されて押し込められた想像力が、キネオラマの暗い影の中でシューっと花火のように美しく爆発する様はそれこそ滑稽で素晴らしいと思う。

  • どこでもない、だれでもない、いつでもない話

  • 「後の作品は全て、『一千一秒物語』の注釈である」とは、稲垣足穂その人の言である。68編の断簡から成るこの作品に安易なカテゴリーを与えることを、僕はしたくない。

    これは、ショートショートではない。確かに、この作品が星新一という才能をして絶讃せしめた逸話は有名であるし、その影響もある程度の忖度を許すだろうが、稲垣足穂の方法は星新一のそれとはハッキリと趣を異にするものだ。

    これは、小説でもない。それは数多残された「注釈」を一瞥するだに了解されるだろう。足穂が小説として披露してきた作品は、そこに通底する論理から表現の一々まで、文藝的な技巧に満ちている。『黄漠奇譚』の、例えば、冒頭に見られるイコンと色彩を駆使して芳醇に冴え渡る絵画的な情景描写や、『弥勒』の私小説的な風情を支える強靭で執拗な展開と、『一千一秒物語』の淡白な語り口とは、方法の根底からして異なっている。

    これは、詩でもない。なぜならここには「表現への意識」が欠落しているからだ。詩の言葉が対象を表現しようとする、一切の慾望が失われているからだ。故に『一千一秒物語』はポエジーたり得ない。

    では、これはなんだ。『一千一秒物語』とは何ぞや。多少の誤解は免れないだろうが、僕はこう思う。これは、「文」である、と。これは、そう、ちょうど、最初期の漱石が筆で紡いだあの「文」である。カフカが『日記』に遺したあの「文」である。ブランショが『不在』を語るあの「文」である。遊戯と感覚に乗った、一つの途方もない志向性である。

    ここで示される足穂の志向性は、極めて明快だ。それは時に月へ、星へ、ほうき星へ、天体へと向かう、果てしない上昇への志向性である。足穂の意識はひたすらに上昇し、天空の彼方で概念と戯れる。その交流の記録こそが『一千一秒物語』という68の、そしてひとつの「文」に他ならない。

    足穂の生まれは1900年である。『人間の土地』を、『夜間飛行』を、そして『星の王子さま』を遺して戦線の空に消えたサン=テグジュペリが生まれたのもこの年だ。ライト兄弟の登場以来続くことになる一連の飛行実験の成功が、少年たちの心に宿したであろう大志の相貌は、想像に難くない。そしてとある少年はやがて筆をとり、彼の意志は一千一秒の物語として、どこまでも高く飛翔する。

  • 感覚的なものだったので言語化できなくてもどかしいんですけど、一読して大好き!って思った本。

  • 最高にコスモロジー!!
    目から星がビューンと飛んでいって、月に激突しましたよー。
    ヤバイですね、足穂って人。 私の中の何かが錬金された!

    ではグッドナイト!お寝みなさい  今夜も月が出ています

  • 「一千一秒物語」はショートショートな幻想的なおとぎ話の連続で、描かれている世界観があまりにも素敵だった。やたらお月様と喧嘩したり、自分を落っことしてしまったり、不思議で魅力的な世界観にはかなりハる。自分の想像力をとても刺激させた。
    その後に続く「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「干しを売る店」までは、楽しく読めたが、それから先の「弥勒」「彼等」「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」は正直言って読むのにかなり苦労した。意味がわからなかったです。

  • おもしろそう。読んでみたい。

  • 気障である。お洒落で気取っていて。
    そこが堪らない。

    ぼんやり不思議な心持ちがいたします。

    麻薬のよう。
    ぼうっとして、吸い込まれそうな。


    表題作が好き。
    夏の夜に。

  • 未来派タルホの幾何学的ファンタジー。

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著者プロフィール

稲垣足穂(1900・12・26~1977・10・25) 小説家。大阪市船場生まれ。幼少期に兵庫・明石に移り、神戸で育つ。関西学院中学部卒業後、上京。飛行家、画家を志すが、佐藤春夫の知己を得て小説作品を発表。1923年、『一千一秒物語』を著す。新感覚派の一人として迎えらたが、30年代以降は不遇を託つ。戦後、『弥勒』『ヰタ・マキニカリス』『A感覚とV感覚』などを発表し、注目を集める。50年に結婚、京都に移り、同人誌『作家』を主戦場に自作の改稿とエッセイを中心に旺盛に活動し始める。69年、『少年愛の美学』で第1回日本文学大賞受賞、『稲垣足穂大全』全6巻が刊行されるなど「タルホ・ブーム」が起こる。

「2020年 『稲垣足穂詩文集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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