- Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104300
感想・レビュー・書評
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【302冊目】会社に絶望し、人生のどん底近くにいたときに、フォロワーさんに教えていただいた本。海外の僻地をたらい回しにされ、家族と離れ離れの生活を強いられた主人公の労苦に驚愕と、共感と、そして自分も同じくらいの苦痛を感じているという気付きがあった。たぶん順風満帆のときには、まったく違う(主人公の恩地を嘲るような)感情を持ってしか読めなかっただろう。
とはいえ、中盤以降は日航機の御巣鷹山事故と、それに続く会社の更生のための努力を中心に描かれる。御巣鷹山事故は、涙無しには読めない悲しみと怒りを感じざるを得ず、なぜこの作品が今となっても有名で、多くの人に読まれ続けているのかよく分かった。
終盤に向かうに連れ、会社組織や政治家の醜悪さや、マスコミも含め結局みんな自己の利益を図ることしか考えていないという、政官財アッパー層への絶望を覚えさせるような展開。
恩地の子ども二人が、研究者と薬剤師という組織に頼らない生き方を選び、それが父親の背中を見て育ったからではないかと恩地が推測する場面が印象的。我が子もそうなるかもしれないし、私自身、我が子にはそう育ってほしいと願うな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結末はさらっとしてしまった感もあるが、日航の腐敗はひどいものがあったのは間違いないことがわかる。
政治の恐ろしさ、腐敗しきった組織を建て直すことの難しさを改めて感じることができる作品。
御巣鷹山に眠る皆様、そして著者の山崎豊子さんに改めて哀悼の意を表したいと思います。 -
実際のところはどうか分からないが、ここで書かれていることがもし事実だとしたら、モデルとされている企業は救いようがない状態だっただろう。だから相当な反発があった。
ただし、現実にモデルとされている企業は2010年に一度倒産している。ただしここに限らず、欧米の大手航空会社が相次いで破綻したのを見ると、そもそも航空業界は利益を出しにくい構造なのだろう。
山崎の作品はほぼアンハッピーエンドで終わるが、それは社会問題を題材にしているからである。
ただ本作を読むと、パターンがなんとなく『不毛地帯』に似ているような気がする。 -
結末にサプライズはなかったが、希望が持てるような終わり方であった。
計5巻のシリーズですが、御巣鷹山事故についてほぼ無知で読んだため、やはり第3巻御巣鷹山編は衝撃を受けました。
個人的に国見会長の真面目さ、真摯な人柄にとても惹かれました。読み応えのあるシリーズでした。 -
企業の過酷さ、ツキのなさ、読みながら幸せを願いました。登場人物のモデルが誰かすぐわかりました。
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私の誕生日は8月12日なので、この事故のことはとても気にかかっていて、誕生日はいつも浮かない気持ちになり、現地慰霊もした。この小説を読むのは2周目だが、人間とは?仕事とは?という人間が生きることについて考えさせられ、関係者、山崎先生の強い想いに心を揺さぶられずにはいられない。本当に多くの人に読まれてほしい本だと思っている。
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今度
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最後に含みを残して終わっていて、自分なりに続きを思い描いた。映画も見ようと思う。
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言えず、グッタリ。
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10年、いや20年近くぶりに読み直したが、ディテールどころか結末までまったく記憶になかった。勧善懲悪ではなく、こういう中途半端な終わり方だったのか。
多分以前に読んだ時は、普通の民間企業でも利権絡みの不正は多かれ少なかれあるので誇張ではあってもまったくない話ではないという印象であったが、時代の流れか今ならもうほとんどあり得ない話なんだろうと思う。それだけ民間のコンプライアンスが浸透したと言えるのかも知れない。しかし、政官の方はあまり変わっていないというか、更に巧妙に悪事が続いているのかもとか考えさせられた。
あ、これはフィクションだったな。
モデルになっている航空会社に稲盛さんが会長として乗り込んだのはこの小説が上梓されて10年以上先なので、この部分は山崎さんのまったくのフィクションだったのかと思うと、なんだか不思議さを感じる。