不毛地帯(二) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104416

感想・レビュー・書評

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  • 商社マンとして瀬島は戦う。

  • シベリア抑留後、第二の人生として商社マンを選んだ壱岐正。
    最初は、軍隊しかしらない自分が商社マンなど務まるだろうか、と自問自答しているが、物語が進むにつれ、商社マンとしての頭角をめきめきと現していく姿は面白い。

    シベリアでの過酷な日々を経験しているからこそ、生き残ったものとしての責任感を日々感じ、また、人生を達観している様は、おそらく、その当時生きた多くの人々も、またそうだったであろうと感じられる。

    シベリア抑留とは全く次元が異なるが、会社の状況が厳しいいま、私は職場異動を経験して、比較的恵まれた状況で仕事をしている。その状況に、謝の念を抱くと共に、自分に課せられた責任感を感じていることと、どこか似ている気がする。

    商社というのは、理系の私にしてみれば縁遠い世界であった。しかし、単にものづくりをするだけでは生き残れなくなった製造業に属している身からすると、世界各国から商売となりうるモノや技術を集めて自分のビジネスにするという点において、製造業が商社から学ぶべきことは非常に多いと思う。

  • 飛行機商戦の次は自動車商戦。しかし、壹岐にはまさしく、七人の敵はおろか、同じ社内にも足を引っ張ろうとする敵が五万と。が、それは敵だけでなく、味方についた人間はとことん尽すのは、やはり彼の人力なのだろうか。

    今まで読んだ山崎さんの作品の中では、物足りなさがぬぐえないのは商戦と政治絡みの、女の私には分かりにくい物語なのかもしれない。それに千里が・・1巻では、それほど鼻につかなかったけど、2巻ではあからさまな対抗意識に開口してしまいました。

  • 次期戦闘機決定がメイン。
    技術に携わる私としても、製品を見る視点は性能という壱岐や川又と近い。しかし、そこには商社だけでなくメーカーや省庁の利権が複雑に絡み合い、性能の良し悪しの一筋縄では上手く行かない。各々が譲れないところ、妥協できるところを提示し合う歩み寄りが大事だと思った

  • 3月11日、ドラマ「不毛地帯」が最終回を迎えた。
    サブタイトルは「約束の地」。

    難航を極めたサルベスタン鉱区の石油開発は、五号井でようやく石油の採掘に成功。
    これを機に、壹岐は大門社長に勇退を勧める。
    「そこまでして社長の椅子に座りたいなんて血も涙もない奴だな」と思っていたら、壹岐は辞表を提出し、自分も大門とともに会社を去ることを表明した。
    「軍人上がりの自分を重用してくれた社長への恩は忘れていない」という壹岐の言葉は感動的だった。
    これからは亡くなった谷川大佐の意志を継ぎ、シベリア抑留者の遺骨を日本へ返すための取り組みを続けるという。
    シベリアの雪原で、抑留者たちの慰霊碑を前に壹岐が涙を流すシーンでドラマは幕を閉じた。

    大本営参謀を務め、11年間の抑留生活を経た後、商社での激しい戦いを勝ち抜いた壹岐正という男の生き様に胸が震えた。
    −−−−−
    小説の第2巻では、自衛隊の次期戦闘機(FX)の受注をめぐり、東京商事の鮫島と苛烈な争いがくり広げられる。

    壹岐は、近畿商事の推すラッキードF104がテスト・フライト中に墜落した事故を隠すため、経済企画庁長官の久松清蔵を通じて新聞記事のもみ消し工作を行い、さらには、東京商事の推すグラント社のスーパー・ドラゴンF11の価格見積書(防衛庁の機密文書)を盗み出した。
    指示を出すだけで危ない仕事は他の者に押し付ける壹岐のやり方に、部下の小出は怒りを感じ、また、機密文書漏洩問題が原因で無二の親友・川又伊佐雄空将補は自ら命を絶った。

    大きな犠牲と引き替えに二次防の戦闘機売り込み競争に勝利した壹岐。
    大門社長にその商才を買われ、入社からわずか8年で常務取締役に昇進し、業務本部長に就任した。
    壹岐はアラブ・イスラエル戦をいち早く予測して会社に巨額の利益をもたらすが、営業部門の利益を無視した業務本部の独善的なやり方に社内では不満の声が上がり始める。
    里井副社長との間にも確執が生じ始め、物語はさらに重みを増してきた。

  • 40-50年ほど前の話でしょうが、企業で働く身からすると、その悩めるところは、当時のものと酷似している。特にその下っ端の台詞は、同じく下っ端の感じるところと瓜二つで、我が意を得たりという感じ。

    そうはいってもやはり、旧軍人として育てられた主人公の振る舞いは、第二次ベビーブーマーの自分にはできない高潔さ、プライドの高さがあるので、言葉面だけわかったふりしても、自分なぞにはついにわからない次元のことなのだなと思う。

    そうした高潔な人間がいたのにもかかわらず、どうしてああいうことになったのか。個人としては清らかで熱血漢でも、組織の歯車となったとき、どういう結末となるのか。その組織を設計し、方向を決めたトップの責任というのは、下っ端の気楽さからくる無責任なのか。

  • 次世代戦闘機の「商戦」は凄まじい。高度成長期の日本は、アメリカに対抗意識を燃やし、追いつけ追い越せのスピリッツがあった、と感じる。

  • ☆☆$$戦闘機戦も佳境。$$いよいよ面白くなる。

  • 商社での第二の人生で、「国益のために尽くす」という姿勢を貫くことが困難であることに苦しむ元大本営参謀の主人公。
    他社との激しい競争、政治家や社内の反対派からも翻弄され、大事な仲間も失ってしまう・・・
    話のスケールも大きく、第二巻も引き込まれる内容でした。
    一冊が600ページ前後もあるので、すごいボリューム感です。
    まだ三巻あります。

  • 防衛庁の次期戦闘機を巡る商戦の中で、
    元大本営参謀の壹岐はその実力を発揮していく。

    商社マンとしてのライバルも登場し、
    近畿商事社内での権力争いにも巻き込まれていく第2巻。
    600P弱のボリュームも苦にならずに一気に読破。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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