- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101109169
感想・レビュー・書評
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初めて松本清張の作品を読みましたが、純粋に楽しめました。
自分なりに犯人を推理しながら読み進めましたが、最後まで分かりませんでした。
探偵や警察が事件を解明したのではなく、全てを繋げ合わせて犯人を特定した主人公の禎子の行動力・推理力は素人とは考え難く、そこが少し出来過ぎとも感じましたが、とにかく楽しめ、別の松本清張作品にも手を伸ばしたいと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これも読ませる本だった。すごい、松本清張。
ミステリなんだから、どんどん引き込んで読ませるのは当たり前かもしれないけれど、いや、面白かった。
犯人というか、真相に私は全然ついていけなかった。
言われて、あ、そうなのか?と。
前回、「点と線」でも思ったけれど、松本清張、硬派に見えて、実は女の人の活躍ぶりがすごいのね。
時代は全然違うけれど、古びず、とても楽しめた。
これぞプロの仕事。
それにしても、戦後の混乱期を必死に生き延びてきた、どんな形でも生き凌いできた、ほかに方法もなかった、それがそんなに非難されなくちゃいけなかったことだなんて、かなしすぎる。殺人を犯してまで過去を隠さなくちゃならなくて、その結果、生きていけなくなるなんて、返す返すも戦争ってものはとてつもなく不毛。 -
初めて松本清張の作品を読みました。
ミステリーではありますが、トリックなどに重きを置いたタイプではなく、当時の時代背景を色濃く反映し、その人間模様が味わい深い作品です。北国の寒々しくも美しい描写が印象的でした。
時間が経つとまた読み直したくなる作品かもしれません。 -
たまには偉大なる推理作家の作品を読んでみるものだ。少しずつ、絡まった糸を解きほぐすようなミステリーの醍醐味を存分に味わった。
主人公の貞子は縁談を受け、十歳年上の鵜原憲一と結婚する。夫の憲一は前任地の金沢に出張に行き、失踪。貞子は夫を探しに金沢へ向かうが、関わる人物が次々と殺害される…
北陸という、寒さと哀しみを感じるような土地を舞台に敗戦という事実の重さを伝えるように描かれた傑作ミステリー。 -
お見合いで10歳年上の鵜原憲一と結婚した禎子。その憲一が新婚早々失踪し、禎子は夫の行方を追って夫が赴任していた石川県へと飛ぶ。現地での協力者である本多と地道な追跡を続け、夫である鵜原憲一の過去や事の顛末が徐々に明らかになっていく。
戦後の混乱期を生きた女性の悲しい物語だった。禎子は愛する夫の行方を探し求めて石川県をさ迷い歩くのですが、どこか一歩引いた第三者目線で物語を俯瞰しているようなところがあり、同じ時代を生きた女性として、犯人に同情的な気持ちを寄せているのが印象的だった。ラストシーンは冬の北陸の風景が目に浮かぶようでした。
やっぱり松本清張は面白いなぁ。 -
何年振りの再読になるのだろう。おそらく数十年振り。
その間TVドラマも放映されたが残念ながら観ていない。
「ゼロの焦点」といえば清張代表作にして傑作となるのだけれど、今回再読して感じたのは物語終盤の謎解きがほぼ解説調の種明かしのように作者が畳み掛けて来て、読者の入る隙間がないなあということでした。チョット残念。
終戦後の混沌とした社会での女性の生き方にはさまざまなファクターが関わっている。
夜の女、特に米兵相手の女として生きなければならなかった世の中というのはなんとも悲しい。
そして本作品中でも書かれていた、そして戦中派であった私の母やその周囲の人が口にしていた、敗戦後の日本の男のだらしなさというのが非常に辛い。
男がだらしないから女が前に出て生きていかねばならなかった。そういうファクターもある。
歳こそ違え、私も打ちのめされたらだらしなくなってしまうだろう男として申し訳ない。
戦後夜の女として生きて来た女性がたち直りながらも前身を秘匿するために犯した犯罪について
「いわばこれは敗戦によって日本の女性が受けた被害が、13年経った今日、少しもその傷痕が消えず、ふと、ある衝撃を受けて、再び、その古い傷から、いまわしい血が新しく吹き出したとは言えないだろうか。」
と本文に書かれていた。
たしかに。
お、タイトル「ゼロの焦点」の意味ですが、以前から次のように考えています。
作品の舞台は金沢、そして東京。この2つ。
ゼロは「0」という形で見ると楕円。
そして楕円という図形には焦点が2つあります。
それがこのタイトルの意味だと。
果たして著者の意図に合っているだろうか?
果たして著者の意図とあっているのだろうか? -
縁談にて、広告社に勤める鵜原憲一と結婚した禎子。憲一は前任地の金沢から東京へ戻ってくるはずが、謎の失踪を遂げる。手がかりを求めて北陸へ向かう禎子。そこで見つけ出した憲一の隠された過去とは…。
過去の名作が読みたい!ということで、横溝正史に続いて手を出した松本清張。堅苦しいのかなという先入観があったけど、情報が整理されていてかなり読みやすい。横溝正史は村などの社会を媒介に人の闇を描き、松本清張は人の関係性を媒介に社会の闇を描くという対照的な印象を受けた。
手がかりのない中で憲一の過去を探す禎子。見つかった過去は謎をいっそう深める。そして巻き起こる殺人。中盤からの謎を食らって走り出す緊張感ある展開はすごい。北陸の世界が雪景色に変わっていくほどに、事件の闇が色濃くなるのも見事。点を結びつける線が見つかった時の驚きと喪失感といったら。『ゼロの焦点』というタイトルも暗示的で、読み終わると納得感があった。
ラストシーンのやり取りがずっと余韻に残る。あの場所に立っているかのように錯覚するほどの臨場感と哀愁があって好き。戦後独特な雰囲気も存分に味わえる。
それにしても、禎子と本多の行動力と推理力が半端ない。警察や探偵顔負けの捜査力。禎子の推理は読みごたえあって面白かった。 -
松本清張氏の代表作を今更ながら読んでみました。
戦後まもなくの昭和30年代の東京、金沢を舞台とする推理小説。内容、文章はあまり古さを感じさせず、すらすら読める印象。最近のミステリーものに比べるとシンプルで少し物足りなさも感じたが、戦後の時代背景は興味深かった。