ゼロの焦点 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.60
  • (234)
  • (500)
  • (573)
  • (81)
  • (19)
本棚登録 : 4105
感想 : 438
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109169

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 内容知っていても、面白いって松本清張はスゴい。今から考えると時代遅れやなぁと思うところはたくさんあったけれど、それを抜きにしてもじゅうぶん読みごたえはある。しかし、禎子をていこじゃなくさだこって何度も読んでしまったのは、何でなのかなぁ。禎子は新婚ホヤホヤやのに亭主の鵜原憲一が失踪してしまって、警察を頼らずに自分で捜査していくのが、不思議といえば不思議だった。想像だけで犯人を特定するのも、ご都合主義だといえばそうだけれど、時代感も感じ取れるしとても面白い作品だった。松本清張また読みたい。

  • 冒頭で当時(1950年代後半?)のお見合い結婚の様子が描かれてて興味深い 昔の小説や映画はこうした当時の社会風俗や恋愛観などを知ることができてとてもおもしろい

    的確で緻密な短い文章の積み重ねが北陸の冬の憂鬱さを人物に重ねてその心情を描写していく まるでモノクロ映画を観ているようだ

    文体がいい 淡々というか冷徹というか余計なところのない 削ぎ落とされた文体

    ストーリー以外に なんだろう 文章の細かい描写につかまれる 金沢 雪国 その寒さ 街並み そうした細かい描写の積み重ねが知らず知らずリアリティを感じさせる

    最近のミステリはより難解(なトリック)に より刺激的な事件や内容に と過剰になっていく そうした作品からするといかにも地味であるかもしれない それは時代が違うからしかたがない でも逆に時代(の哀しみ)がにじみ出てくるようなミステリであると言える

    松本清張は初めて読んだが なるほどこれは人気を博すわけだ このまま「点と線」に進むことにする

    主人公の若妻の思考によってストーリーが進行 これ映像化むずかしくない? どうやって映画にしたんだろ?

    なぜ題名が「ゼロの焦点」なのかがわからん ラストシーン 沖合へと流されていく小舟 それを見つめるふたり やがて小舟に乗る人がいなくなる そういうこと?

  • さすが名作なだけあって、設定がこんなに古くなっても読ませる、物語自体の面白さは損なわれてないと思いました

  • ラストが切なかった。もうどうにもならなくなったとは言え、室田夫人のあの選択は、私には絶対に出来ない…。
    禎子の気持ちはどうなるんだろう。お見合い結婚とは言え、結婚したばかりの夫を殺されて…義姉とその子供もどうなるんだろう…。
    事情を知っても、室田社長は夫人を愛しただろうし…

    途中、鵜原憲一の失踪の謎に禎子が行き当たった時には、思わず「えっ!?」と言ってしまった。
    まさかあの女性が…なんて思わなかったし、やっぱり松本清張作品は読み応えがある。

    室田夫人の、過去を暴かれたら…と言う気持ちとその行動は、同作者の砂の器に出てくる、主人公の青年を思わせた。

    他の方も書いてらしたけど、確かに「ん?」と思うことはある。設定に無理があることも…。
    だけど、純粋に作品を楽しむという点においては、それは別にどうでもいいことだと思う。

    ラストのあの切なさが、北陸の冬景色と相まって、何とも言えない気持ちになった。

  • 犯人や、トリック云々よりも、北陸特有の曇天・吹きすさぶ湿った空気と戦後の暗い雰囲気、それが松本清張の作風とマッチングして気高いミステリーとなっている気がする。金沢に住んでいたこともあるので、時代は違えどあの風土は実感できる。 新婚早々、失踪してしまった夫。妻の禎子はそれを追うが、夫の謎は深まっていく....。この禎子、落ち着いていて理知的なナイスレディ。じっくりと事件に取り組む様子は、気の短い私からすると感心しきり。本全体の雰囲気は重いのだけれど、そこはかとなく気品が感じられる文体が好きな作品。

  • 初の松本清張作品。450頁以上のボリュームなので、読了に時間が掛かるかと思いきや、場面の情景や空気感、登場人物の心情を的確に捉える圧倒的な描写力に引き込まれ、一気に読み終えてしまった。流石に前時代的古臭さは禁じ得ないが、最後の最後まで真相の明かされぬ展開は決して読者を飽きさせないし、敗戦の余波が色濃く反映された切実な犯行動機も胸を打つ。現代作品では馴染みのない溢れんばかりの旅情感も味があり、これは俄然他の作品にも興味が湧く。勝手に癖の強い文体をイメージしていたので、こんなに読み易い文体だとは思わなかった。

  • 昭和34年に刊行された本作。
    全くもって古めかしさが無い。
    むしろ今の時代に、これだけ濃厚な推理小説が無いので逆に新鮮で新しい。

    まさに「名作は時代を選ばず」の象徴。

  • 個人情報などの言葉がなかった時代かえって人間味を感じるところもある

  • さすがに時代背景が古くなってしまったりはするが、外れがない。それってすごいことだと思う。余計な、回りくどい文章がなく、でも最近の本のように、あらすじだけをなぞったジェットコースター本でない。行間があるって言うの?すごい作家なんだと思う。

  • 時代が違うものの、金沢のどんよりした雰囲気の描写や、色鮮やかな衣装など、場面の描写や表現が的確で秀逸。
    そういう意味で楽しめた。

全438件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松本清張の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×