聖少女 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113098

感想・レビュー・書評

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  • 倉橋由美子らしい小説だ。この小説を読んでいると、自分が称している「愛」などという言葉が陳腐で、いかにも小市民的な価値しか持っていないかを思い知らされる。主人公の未紀は、まさしく「ぼく」にとってのFemme fataleそのものだろう。どこまで行っても捕まえることはできない。そもそも彼女は最初から愛の不毛の中に生きていたのだから。また、この小説の持つ強い時代性(70年安保以降の時代)も、こうした回顧の中ではある種の普遍性さえ帯びてくるようだ。

  • 思春期という、危険で、おかしな季節に、娘にとっての父ーうつくしい幻想の中のあのひと!ーは、生、性、死を同時に司り、父であると同時にじつは私自身でもある、生きた神となる。(桜庭一樹、解説)
    小説自体は内容云々よりも文章の組み立て方が興味深くて、桜庭さんの解説の方が私は惹きつけられた。この人のものの書き方が好き。

  • いわゆる『女流作家』の流れをこの国に作った、倉橋由美子の代表作。
    白猫のような美少女、未紀が落としていく、男たちとの関係、嘘、妄想、生と性と死の物語。

    未紀の魅力は流行りの言葉で言えば『小悪魔』!当時なら『毒婦』って言われてもおかしくないようなヒロインに『聖』の文字を使い、最初に美を見出した倉橋由美子のセンスはすごい。
    倉橋由美子がいなければ日本の小説のヒロインは、品行方正で良妻賢母で不器用でカタブツな『ブス』ばっかりだったのではないかと思います。

  • 作者曰く「最後の少女小説」。
    恐ろしく饒舌で軽薄で痛々しい。
    これも何度も読み返している一冊だが、
    自分が年を経ても感度が変わらないことが嬉しい。

  • 穂村弘さんが衝撃を受けたということで気になっていました。


    少し痛くて、愚かで、陶酔した 少年少女の物語。
    思春期ならではの潔癖さや勢いがすごくきれいに描かれていると思います。

    近親相姦、交通事故、記憶喪失、ゴシック趣味、などなど言い出したらきりがないですが、そういういわゆる"キーワード"みたいのはあまり意識させない、もっと奥にある少女の物語であると感じました。
    とても好き。

    12歳のときに読んでいたら人生が変わっていたかもしれない。

    ちなみに朝のむウイスキー少したらすやつ、飲んでみたい。

  • 異色作、タブーを扱っています。
    そのタブーは一番強烈な「近親相姦」
    だけれども病んでいる雰囲気のみで
    その該当行為に関してはぼかされているので
    きつくは感じず、あまり嫌悪感は感じませんでした。

    ただし問題はKの視点
    こいつは食えない奴です。
    この視点だけは吐き気を催しそうになりました。
    消えてしまえばいいのにと何度思ったことやら!!

    だけれども、純粋な少女が壊れていく
    その描写は見事としか言いようがありません。
    彼女はまさにタイトルのとおりなのかもしれません。

  • 姉と近親相姦の関係を結んだ「ぼく」と、「パパ」と愛し合う未紀。出逢いから6年後、未紀は交通事故で記憶喪失になり、「ぼく」に以前書いていたノートを渡し、解読して欲しいと頼む。「ぼく」の視点から物語は進む。未紀は学生鞄に『O嬢の物語』や『美徳の不幸』を入れ、所謂ゴシック趣味な部屋に住み、ランプの下でサド侯爵の本を読み、ゴシックな装飾を施した「モンク」という店を持っている素敵な少女なのだが、脇毛が生えているのは許せない。剃るか抜くかしてくれていたなら、完璧なのだが…。
    さて、未紀の以前書いたノート、退院後に書かれた未紀のもう1冊のノート、そして、この『聖少女』も「ぼく」が記した小説という仕掛けになっていて、果たして未紀の行動の真実は何処にあるのか?未紀も「ぼく」も、その他の登場人物達も果たして本当に存在したのか?穿った読み方しすぎかなぁ?読み終わった時に何故かアラン・ロブ=グリエの小説を思い浮かべた。

  • カタカナ読みづらかった。未紀とパパの絡みよりMとの喫茶店のやり取りが良かった。
    70年代安保闘争の時代だけど、ありがちな貧乏臭さが全くなく、大正ロマンのようなセレブを感じさせた。

  • 少女小説。
    あまり刺さらなかった…

  • 高校の時に1冊読んで、苦手だったのでずっと敬遠してきた作家。

    母親とともに事故を起こし、生還したが記憶をなくした未紀の世話をする私。記憶をなくす前の未紀のノートから、「パパ」との関係を知る。一方で、私もLと名乗る、姉との関係が有った…。

    いやー、苦手。嫌いというところまで行かないが、色々こねくり回しているが、意味が上滑りしているような文章で、昔読んだ短編集同様、頭に全く残らない。歳を重ねれば読めるようになるかと思っていたのではあるが。

    作中作となっている、未紀のノートの文章が、「AはBであった」のAとBが全くつながらないような文章で、普通の文章を読んできた人にとっては、ふわふわと掴みどころのない感覚を覚えるであろう。しかし残念ながら、その他の普通の記述においても、同様の捉えられない展開が続くため、章変わりの書き出しで一瞬ホッとした感覚が、数行で霧の中に沈む。

    他の作家で『虚無への供物』を崇拝している文章に辟易したことがあるが、こちらは時代背景からも、サドの『悪徳の栄え』を崇拝しすぎており、作中のTSの影響(澁澤龍彦な)を受けたのだろうという文章が、多々見られる。ただ、澁澤のサド翻訳は、読み物として読めるんだよね。そのへんが全く異なる。

    最後の夢野久作的な展開は、なんとなく読めた。読めただけで、最初から最後まで、なんとかしてほしいと思ったことは何一つ進まず。

    好きな人は好きなんだろうね。ワタシには眠い文章でしか無い。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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