- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101121123
感想・レビュー・書評
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螺旋階段。
一転、二転、転じてねじれて、別の場所。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者の頭の良さがよくわかる
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人間そっくりないきものは人間とどうちがうのよ
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自己を規定する「名前」や「顔」といったものを取り外すことで曖昧になっていく自己、という安部公房得意のテーマによる一品。自称「火星人」と名乗る男の訪問を受け、男との会話によって翻弄される放送作家の受難を描くほぼ一幕物の構成。火星人を名乗る男の言葉責めの魅力につきる。
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火星人を自称する男に訪問されるサスペンス
読了日:2006.07.19
分 類:中編
ページ:184P
値 段:362円
発行日:1967年1月早川書房、1976年4月発行
出版社:新潮文庫
評 定:★★★+
●作品データ●
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主人公:ぼく(ラジオ番組脚本家)
語り口:1人称
ジャンル:サスペンス?
対 象:一般向け
雰囲気:SF系、心理系
結 末:合わせ鏡のような…
カバー:安部 真知
解 説:福島 正実
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---【100字紹介】----------------------
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のもとに、
火星人を自称する男がやってくる。
単なる気違いなのか、火星人そっくりの人間なのか、
それとも人間そっくりの火星人なのか…?
会話中心の異色SFサスペンス
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阿部公房、初読みです。しかしこれが氏のスタンダードがどうか分からないですね。菜の花の感覚から言いますと、異色すぎです。
全体の雰囲気が少し古い感じを受けますがそれもそのはず、本作は菜の花が生まれる10年以上も前の作品なのですね。それでも「少し古い気がする」程度で、そのまま読めてしまうのですから凄いと言わざるを得ないでしょう。
火星人を題材にしたラジオ番組を持っていた「ぼく」は、火星探索機が火星に着陸する!というニュースによって、職を失いかけるという「何だそりゃ」みたいな設定。これはがまったく理解できないのですけれど、そういう時代だったのでしょうか?それもおかしい気がするのですが、とにかくこれによって「ぼく」は切迫感を感じているということになっています。そんなところにやってきた「先生のファン」を名乗り、「自分は火星人」と自称する謎の男。物語の大半は脚本家である「ぼく」と火星人男のやりとりで進みます。途中、それなりに動きはありますが、立ち上がるとか、奥さんがお茶をもってやってくるとか、それくらいで、基本的には言葉で相手の出方をうかがうような展開。火星人男の言葉は二転三転し、僕の気持ちも振り回され、そして最後の結末へ…。一体何が本当で、何が嘘だったのか?「火星人だなんて何を馬鹿な」と思っていた読者も、気付くと何が何だか分からなくなっているかもしれません。
「振り回されてなるものか」という「ぼく」と読者をあの手この手で陥れようとしているかのような「火星男」ですが、気付くとあなたの足元がゆらいでいるかもしれません、よ?
基本的に動きが少ない「頭脳戦」なので、読書好きでないと途中で飽きてしまうかもしれません。が、それだけで読ませられるだけの技術ある作品ですので、好きな人は相当気に入られるのではないかと思う1作です。不思議のスパイラルに落ち込みたい人にお勧め。
●菜の花の独断と偏見による評定●
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文章・描写 :★★★+
展開・結末 :★★★+
キャラクタ :★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★
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090509(m 091230)
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・・・・・書きかけ・・・・・
17年前の1993年1月22日に68歳で亡くなった小説家・劇作家。 -
ある放送作家のもとに、火星人と称する男がやってくる。男はあくまで自身は火星人だと主張し、巧みな弁術で作家の反論をかわしていく。次第に作家は、自分が何者であるか分からなくなっていく。
火星人がまったく「地球人そっくり」であるなら、「自分を火星人だと思い込んでいる地球人」と同様に、「地球人だと思い込んでる火星人」もありえる。そして、自分が火星人でなく地球人であると証明することはできない。 -
安倍氏らしいユーモラスと、星新一氏のような意外な結末がうまく絡み合った、面白い作品であった。
くどくどした人間味溢れる様を文字にて描く才は、相も変わらず素晴らしいものだと感服する。 -
2009年11月27日読了。
人間が人間でないかもしれない証明を理論的に行われていて、背筋に寒けが走った。
また、主人公が非常に人間くさいから、余計にその理論が際立って見える。
読み終えてから、自分が果たして本当に人間なのか悩んでしまった。