海と毒薬 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123028

感想・レビュー・書評

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  • ここで終わり!?ってなったけど、見てきたかのような緻密な五感表現が素晴らしかった。

  • 高校の時に読んだ。遠藤周作を何冊か読むきっかけになった。


  • ボリュームは200pにも満たないが、非常に重い。
    取り扱う主題は宗教と異なれど、当時の閉塞感・救いようの無い疲労感は健在で、読後は充足と虚脱をしっかり味わえる。

  • 海は自分の気持ち?世間の目?運命?
    毒薬は医者?人間?
    罪と罰。罪ってなんだろう。罰ってなんだろう。
    ドストを読んだら、解決するのか。
    「沈黙」がおもろしくて、読んでみました。

  • 他人の眼、社会の罰と対比するように神さまの罰が書かれているように見えるが、どちらも判断軸が外にあるという点では似ているのではないだろうか。良心の呵責とは、もっと内からくるものな気がする。しかし、その「内」にも社会=外は影響を及ぼしている。つまり、良心は個人ではなく集団が作っている面もある。どこまでが個人の罪でどこからが集団の罪なのかと考えた。

  • 遠藤周作の代表作として著名な作品。
    太平洋戦争下で捕虜として捉えられた米国兵が、臨床実験の被験者として使用されるという、実在の事件が元となって書かれています。
    遠藤周作らしい「人間の価値観、倫理観」に問いかける内容で、ショッキングな展開ですが、目をそらすことができないものがあります。
    「あなたならどうするか」、倫理的には誤っていることはわかっていても拒否することができるのか、拒否できるなら根拠はどこにあるのか、考えさせる内容となっています。

    実在の事件を題材にしていますが、ノンフィクション作品ではなく、題材となった事件と本書内の出来事に関連は無いです。
    話は、西松原の住宅地に引っ越してきた男が語り部となって始まります。
    持病の治療のため、近所の医師の元を訪れたその男性は、腕が非常に良い医師「勝呂」の指に恐怖感を覚える。
    やがて男性は、勝呂がかつて、ある事件の関連人物であることを知ります。

    以降は医師・勝呂が主人公となって、過去の事件について語ります。
    その事件こそが、戦時中に行われた人を人として扱わない生体解剖事件で、彼はその手術に参加することとなってしまいます。
    勝呂という人間は特殊な価値観を持っているわけではない一般的な人物で、その手術が非人道的であることを知っていながら参加してしまったのは"流れ"によるものでした。
    彼の行動は、優柔不断と言えなくもないのですが、戦時中という特殊な状況下でそれが反道徳的であると断言する確固たる何かを持たない日本人は、その行動を批判することはできないのではないかと考えます。
    遠藤周作氏が本作に込めたテーマはまさにそこで、宗教を持たない日本人は自責の念に駆られながらも、手術室に立つのではないかとしています。
    キリスト教徒である遠藤周作の目線で、宗教を持たない国民性を見て感じた疑問がきっかけとなった作品で、鋭く心を射抜き、おぞましささえ感じる一作です。

  • おそらく35年ぶり位の再読。
    NHKのドラマに感化されて、ブックオフで購入。
    昔は、ともかく衝撃的だったことと、ミツ、という女性の存在。
    再読してみて、ミツがこんな娘だったのか、という発見と、そして、メインの米軍捕虜の生体解剖。
    こんな話だったっけかなぁ?
    人の記憶とはあやふやなものだなぁ、と。

    早く九大の資料館へ行けるようになりたい。

  • 海のように冷たい手術室と世相。
    出世や要望など真人間にとっての毒薬。
    戦時下の彼らの真相は現代の人間にもきっと共通して伝わるのではないだろうか。

  • 自分にとって死なせたくなかった患者であったおばはんを失った勝呂はもうどうでもよくなりアメリカの捕虜を生体解剖する実験に誘われ参加することとになる。
    いざ実験が始まると勝呂は激しく後悔する。もう後戻りはできないことはわかっていても。
    実験が終わった後勝呂は俺が殺したことに苦しむ。
    いや俺は殺していない、何もしなかったのだ。おばはんが死んだ時も今も。何もせず人が死ぬところをただただ見ていただけなのだと。
    いつか罰を受けるだろうと思いながら生きていく半生。その後の勝呂はどうなったんだろうか。

    いつか医学部に入りたいくせにやっぱ内臓怖くてこの前ホットゾーン読んだ時もキャタピラーっていう映画見た時も気持ち悪くなって泣いて海と毒薬すらもちゃんと読むと気持ち悪くてほんと怖がり直るのかな。
    手先は器用だねって小さい頃から言われてるから多分大丈夫なんだろうけどほんっとに血とか内臓の描写がはっきりされると怖いしクラクラするの。

    本当にみんなが死んでいく世の中だった。病院で息を引きとらぬ者は、夜ごとの空襲で死んでいく。
    人間は自分を押しながすものからー運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。
    人間の良心なんて、考えよう一つで、どうにも変るもんやわ

  • 当時の米国人に対する激昂心や戦争がいかに人々の心を変えてしまったのか、さまざまな登場人物の視点から鮮明に描かれている。仁徳が荒み、個人の人命など何も尊重されなかった時代に置いて、医学部の教育は行き届いていなかったのではないかとも思う。誰もが背徳の意識を持っていたのにも関わらず、軍の命令に背けなかった、戦争が生んだ悲劇をこの小説により理解することが出来た。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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