- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101144016
感想・レビュー・書評
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厄介な四角関係、しかも不倫。この手の話なのに、なぜか爽やかさがありました。登場人物の誰一人にも肩入れしない、優しいようで冷酷な、作者の距離感のせいでしょうか。
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いくつもの章に別れた話かと思っていたら、
連作短編だったようだ。
最後の一編以外は、登場人物も同じで
少しずつ「こと」が進展してゆく。
どうしようもない邪恋に悩む袋小路の
人々の苦しい叫びが聴こえるような話だけれど
美しい日本語で描かれていることで
ひやりと冷たい風が、ものがたりの
湿り気のあるけだるい暑さを
どこかクールダウンしてくれるような印象もあった。
人にはそれぞれ想いがあり、
いけないとわかっていても溺れてしまう
哀しい感情がある。
それを眼を背けることなく、きっちりと
醜さは醜さのままに描かれていて、
ひりひりするような読書時間だった。
そして、それは決して絵空事でない
生身の呼吸する人間の熱さでもあった。 -
読み終えて、わんわん泣きたくなった。矛盾するし儘ならないし辛いし疲れるし傷つき傷つけるのにどうしても誰かを好きになってしまう女の業に、共感とも同族嫌悪ともつかない複雑な気持ちになる。綺麗で流れるような文章で書かれているけど、むせかえるような濃い雰囲気。「色恋なんか二人の責任だ、どっちだって加害者で被害者だ」という台詞が真理なのかもしれないと思わせられる作品だった。
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なんともなぁー思い出す恋心です。笑
いや、この本自体は不倫の話なんだけど、こう、別れなきゃ別れなきゃって思って付き合っている男とどうしても別れるって告げられない葛藤みたいのが、わかるわかる!!!っていう、思い出す感じです。
こんな男と付き合って立ってどうしようもないじゃない!!と、思いつつダラダラ一緒にいる感じ、この感じがすごく良くでてる一冊で、つい思い出した。
ってかあんなに迷ってあんなに悩んで別れたのに、いままで綺麗に忘れてたんだから、人間の体って素敵だよね。笑!! -
8年間妻子ある男との不倫に疲れてきた主人公。
最初は作者の力に圧倒されたが、少しずつ読み進めると主人公のもとに夫と別れる原因の男と再開し、その男とも関係を持つようになるが、語り口はどこかあっさりとしている。
最後はどちらの男とも別れることになる。
きっと中途半端ではダメなのだということに気がついたのだろう。
大きく分けると2つの話だが、2つとも背景は一緒だった。 -
ここまで正確に書き連ねられる冷静さが、
美しくはかなく、彼女を頑強にする。
習慣による常識の逸脱や、
それによって発される異様な存在感。
これを読むことで、私も整理された。 -
寂聴さんの本を読了できたのは、今回が初めてでした。どろどろの三角関係を楽しむ気いっぱいで、読み始めたのですが、嫌悪感はこれっぽっちもわかずに終始知子の魅力に骨抜きでした。頭の中の知子は、いつも満島ひかりさんで、歩いたり走ったり寄りかかったりする彼女のコケテッシュな姿が知子のイメージにはまりました。機会があれば映画もいつか見てみたいな。
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いかにも、瀬戸内寂聴さんの本です!という題名の、『寂聴 九十七歳の遺言』、『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』などの本よりも、この本や、『あちらにいる鬼』、あと少し毛色が違うかもしれないが『おちゃめに100歳! 寂聴さん』などの方が、インパクトがあって寂聴さんを身近に感じられるような気がする。
解説にもあるように、「悪魔と愉しみを分つ部分」が拡大されていても、それが深められ、「普遍性を獲得し」ているからなのだろうか。
『和泉式部日記』も読んでみたくなった。 -
5つの短編からなる連作集。1〜4作目がひとつの物語、5作目だけそれとは独立した物語になっている。とはいえ、どちらも著者の私小説的な内容であることに変わりはない。前半は長年の不倫相手だった井上光春氏との間で揺れ動く心境を、後半は前夫との間に生まれた娘との別れと、それに伴う苦悩をテーマにしてそれぞれ描いたものと思われる。
この本の前に井上荒野さんの『あちらにいる鬼』、同『ひどい感じーー父・井上光春』を読んでだいたいの関係性は把握していたから、それを寂聴さんの視点からトレースし直したような感じ。必要以上にこねくり回すようなまどろっこしい文体で、読んでいて疲れた。内容もああそうですかという印象で途中で飽きてしまった。同じ題材を扱うにしても、井上荒野さんのようにドライな文章ならまだしも、こういうねっとりした文章で読むのはなかなかしんどい。内容も相当ねっとりしているし。
寂聴さんの本は初めて読んだけれど、もういいかな。 -
不倫の終わり、リアル。