項羽と劉邦(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152318

感想・レビュー・書評

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  • 11月

  • やっぱり、小説家ってすごいな、と思わされた。
    項羽や劉邦がどんな弱みがあって、どんな人間的な魅力があったかが伝わってくる。
    たとえそれが司馬遼太郎の個人的な解釈であったとしても、やはり興味は尽きない。

    趙高の暗躍で秦が滅んだことも、これまでに学者の本で読んでいると思う。
    でも、「小説」として読んだ今回の方がずっとそれぞれの姿が頭に残った。
    そう、この作品は、まだ「小説」的に楽しめる。
    小説か、論文か、エッセイか・・・?と戸惑ってしまう「空海の風景」とは様子が少し違う。

  • 自身無双を誇り、その軍も当たるところ敵なしだったにも関わらず、最後には滅びてしまった項羽。一方で、何度も敗走を繰り返しながらも、最後には天下を取った劉邦。
    結局、強さだけでは駄目で、もっと別な力(魅力)が必要。

  • 項羽と劉邦は「宇宙大作戦」のクリンゴン人のイメージ。
    俺だけ?

  • 大阪外国語大学卒業生、『言葉』の説明、それが人々にどのように浸透していったか、どのような思いで人々が口にしたかをとても丁寧に書いています。

    秦の始皇帝からその裏にいた人物、秦を倒そうとした人、それに乗っかろうとした人まで描写も上手く、感情移入したり、好きになったりできる人物が1人はできます。
    私は沛の村の人々が好きでした。
    章邯のこと、それまで好きになれなかったのに、上巻最後の
    「章邯の心をにわかな悲しみが襲い、しばらく少女のように泣いた。」
    で一緒に泣きそうになりました。
    司馬さんの人に対する愛情の表れでしょうか。

    中巻で項羽と劉邦、その周りの人がどのように動くのか、楽しみです。

  • 「自分に仇なす者については、表面は笑顔でつきあっているが、相手の隙を見てひそかに復讐したりした。」

    宦官は人間ではないと考えられた時代。その宦官が陰謀を巡らし、秦を乗っ取ろうとするところから話が始まる。

    項羽、項梁、章邯、劉邦が活躍した。
    劉邦、項羽ともに若い頃から周囲を魅了する力を持ち、それが時の流れとともに磨かれていく。当時の英雄は、流民の食欲を満たせるものであり、それができないとただの人に転落する。

  • 秦の始皇帝没後の混乱から話が始まり、項羽と劉邦という人物を中心に物語が動く。
    中国史はほとんど知らないが、相変わらずの読みやすさ。

  • なんか入り込めなかった。。中巻以降に期待です。

  • 秦の時代から漢の時代の間の中国の戦乱物語。

    司馬遼太郎ものの典型で、史実から登場人物の言動を創作しているので
    それぞれの登場人物の言動にこれといった特色がなく、読み流して
    しまうと人物の印象がとても薄い。

    また、地名と人名が中国の繁体字で書かれており、日本の漢字では
    読めないものも多々ある中、これでもかと多種多様な人名、地名が
    出てくるため、頭に入れずに読み流していくと、これは誰だっけ、
    ここはどこだっけ、そもそも何て読むんだこれは、と字面を追うだ
    けのつらい読書となってしまうことは、過去に三国志を読んで経験済み。

    で今回は名前をメモって、簡単な登場人物一覧を作成しつつ、中国地図
    をプリントアウトして地名と位置を記入しながらの読書を行った。

    その際、地図は地形がよくわかる地図をプリントすることで、戦略上
    の行動理由がわかるようにした。関中がなぜ天嶮の要衝と呼ばれるか、
    地形を見ればすぐわかるし、どこからどこへ移動して何kmくらいある
    のか、軍が移動するのに、さて、徒歩の時代にどれだけかかるのか、
    など想像しながら読むことで、その頃の時間感覚などが想像され、
    なかなか面白かった。

    自身は際立った能力はないが部下の才を用いることに長けた劉邦と、自身
    の軍事における才が際立ってなんでも自分でやれる項羽の対照的な組織
    運用が、組織論でビジネス書などで話題に上がるらしいが、大会社内では
    適用できる話ではないと思った。
    大会社では課長や部長、部門長になってもその上にはさらに上がおり、
    子会社にいたってはさらに本社があり、ピラミッド構造の大きさには
    嫌気がさす程だが、そんな中、大多数の人がなりうるのは結局中間管理職
    でしかなく、その中間管理職が項羽か、劉邦か、などと論じても意味がな
    いと思うからである。強いて言うなら、我々は皆劉邦と項羽の側近・策士
    といった役割であることを認識すべきであろう。

    背水の陣や、四面楚歌のエピソードも出ていた。何より驚いたのが、
    検索すると関連する遺跡が中国に存在すること。紀元前の話だというのに。
    中国の環境問題とか、反日もあるけれど、そういう遺跡は観光してみたいな。

  • 始皇帝の死後、秦打倒を旗印に多くの男達が天下の覇を争った。
    この物語は、孤高の軍神項羽と、人間味溢れる親分劉邦の二人を中心に進む。
    そして二人の英雄の決着が着いた場面で物語は終わる。

    漢を起こした劉邦は、中国で「典型的な中国人」と言われているそうだ。
    ということは中国人自身がこうありたいと願う理想像なのだろうか。
    そうだとすると中国人に親しみを感じる。
    作中の劉邦は魅力的な男だからだ。

    何せぐうたらで女好きで、学もなければ軍才もない、ごろつきの親分だったそうだ。
    ただ、劉邦がいるだけで場が盛り上がり、いなくなると途端に白けるとある。
    戦では全く役に立たないが、ただ親分として必ず前線に立った。
    戦略も方針もないが、人の話は腰を折らずに素直に最後まで聞き実践した。
    常に自然体で、空気に溶け込んでいるというか大地と一体のような大きさを感じた。

    様々な登場人物に、読者は自分を投影できると解説にあった。
    確かに項羽にも劉邦にも、似ている処を感じ満更でもない気になってしまった。
    しかし何と言っても、いつも劉邦のような心持になれれば人生素晴らしいだろうと思った。

    作中の薀蓄が楽しかった。
    例えば、呉服とは、この時代の呉の服飾様式が日本に伝わったものだそうだ。
    この知的好奇心のくすぐりが司馬遼太郎作品の隠し味なのだろうか。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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