項羽と劉邦(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152318

感想・レビュー・書評

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  • 項羽による秦軍二十万の穴埋まで。戦国末期から楚漢戦争の時期まで(それ以後も?)大量虐殺が何度か起こっているはず。やはり食の問題と異民族問題か。この巻では項梁と劉邦が主に記述されている。やはり劉邦の魅力というのは文をつくしてもわかりにくくおもしろい。 登場人物から距離を取り続けているような文体は好みにあう。

  • 秦の始皇帝が亡くなるところから物語はスタート!劉邦より、項羽が中心に話が進んでいく。まだまだ俯瞰した時点での話なのでこれからどうなるのかが楽しみ。

  • 久しぶりの再読です。
    上巻を読んだあたりで、違和感が。もっとダイナミックな話だったはずなのに、なんだか鳥瞰図が多く、妙に客観的な感じがします。しかし、振り返ってみれば上巻時点では主人公の劉邦はまだちらちら顔見せするくらいです。
    中巻に入ったくらいから、いよいよ物語が地上に降りてきたようです。劉邦はもちろん軍師・張良、将軍・韓信、奇士・陳平など多彩な登場人物が生き生きと動き始めます。このあたりはやはり司馬遼の真骨頂というべきところです。
    軍神とも言うべき項羽と、百戦百敗のくせに人を集めるのが得意で、常に頽勢を盛り返す劉邦。そういった人物像が鮮やかに描かれていきます。多少、解説がくどい感じもありますが。
    劉邦寄りの視点で描かれ、劉邦が行った裏切りなどはサラリと流した感じはありますが、そのほうが物語としては面白いのです。
    やっぱり、司馬遼です。

  • 戦国時代を統一し、官僚による苛烈な法支配の中央集権国家を築いた、秦の始皇帝。しかし即位十二年にして始皇帝が病に没すると秦の統制力が弱まり、陳勝・呉広の乱をきっかけとして群雄割拠の状況に逆戻りした。その中で台頭してきた項梁一味。甥の項羽、傘下に合流した劉邦一派は、項梁とともに秦の都、咸陽に攻め上る。途中、秦の名将、章邯の反撃にあって項梁は討たれてしまうが、項羽は章邯軍を下して咸陽を目指す。別動隊として先に咸陽を目指して進撃している劉邦とどちらが先に咸陽を制圧出来るか。

  • 再読。

    前漢の創始者・劉邦と、あと一歩で天下を逃した楚王・項羽の戦いを軸に、人々の様々な生き方や、他者(あるいは自分以外の世界)との関わり方を描き出す歴史小説。
    本筋、脇道、どこを切り取っても読み応えがあって面白い小説だけれど、上巻で特に印象深いのは劉邦の素性が語られる段。武も智も財もない男、もっと言えば、字(あざな)も名前さえ持たないような男が、何故か人々の中心になり、押し上げられ、ついには皇帝になっていく姿が、説得力をもって描写され始める。何の能もないがゆえに、「自分が助けてやらねば」と人々に思わせてしまう男、それも、胸を締めつけられるほど切実に、そう思わせてしまうほどの可愛げを持った男として、劉邦は描かれる。
    それは魅力とか人望といった言葉では足りないほどの凄まじいことだけれど、もちろん天下への道行は平らかではなく、苦難が続く展開に、何度読んでも、わくわくしながら先を読み進めてしまう。

  • 実は初の司馬遼太郎。
    司馬遼太郎は虚構をいかにも史実のように描くと聞いたことがあったのですが、たしかにその言葉に納得できました。
    書き方がドキュメンタリー風な上に、文体が力強い。
    作品ごとに虚構の入れ方が違うそうですが、人物の造形などは司馬遼太郎が作ったものだろうと思います。
    劉邦がなぜかくも男性にモテるのか?
    それは可愛げがあるからである、という解釈が面白い。
    項羽の人柄にしても、気品と豪傑さと激しさを持ち合わせた魅力的な人物に仕立てていて、この項羽と劉邦がいかに戦うのか興味が持てました。
    横山光輝の漫画を先に読み始めていたので、視点も描き方も違うと感じました。
    どちらかとうと、わかりやすい横山光輝版のほうが好きなのですが、一癖ある司馬遼太郎の文が妙に色気があって、内容うんぬんよりも文章と人物造形が興味深くて読み続けられました。
    「史記」の面白さ、想像力を刺激する文学性の高さを改めて感じます。

  • 海外旅行の帰りの飛行機で必ず読む愛読書。おかえり、日本。司馬遼太郎の語り口、ただのおっさんだけど憎めない劉邦と激しい青年のままの項羽。

  • ◆◇◆全く違う2人のリーダーの話◆◇◆

    20代の頃、お世話になった方に「幕末の小説を読んだらいい、いろいろな見方が学べるから」と教えていただきま
    した。その時、手に取ったのが司馬遼太郎。彼の描く志士達はとても魅力的。夢中になって読み続けました。僕はそれから読書の楽しみを知ったので、その方と司馬遼太郎にはとても感謝しています。それから久しぶりに作者の作品を読みました。話がすぐに脱線して長くなってしまうところも相変わらずで懐かしく感じました。戦に勝ち続けた項羽が負け続けた劉邦に滅ぼされてしまうのはとても哀愁を感じます。ただ、それから彼が築いた漢はこれより前後あわせて400年も続いたことを考えると負けを知るという事がとても意味のあることに思えます。紀元前の豪傑たちがまるで生きているかのように中国の大地を疾走します。歴史小説、冒険活劇、ビジネス書としても素晴らしい作品。

  • 秦末の騒乱期の項羽と劉邦の戦いを項羽の死まで描いている。二人の人間像を深く掘り下げており、人徳とは何かを考えさせる。

    また、二人を取り巻く重臣達にも多く触れている。私たちに馴染みのある話も多く、万人におすすめ。

  • 確か人生で3回目の司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読了。これは「関が原」、「空海の風景」と並んで最多。それぐらい読んでいる時期によって作品の捉え方が違い、異なる魅力を放ってくれるんだと思う。今回は、日々経営をしていてマネジメントについて考えさせられているのでその視点で読めておもしろかった。すなわち率先垂範型リーダーシップの権化のような項羽(とその部下も似たような率先垂範で卓抜とした能力を持つものが集まりがち)と、フォロワーシップ型というか自分では大したことはできず"人をして成果を出し得る"型リーダシップの典型である劉邦(とその部下たちも比較的人と人との能力の補完関係を重視する者が多い)との大激突の物語と読み解くと新しい視座が得られた。項羽は自分の能力と美意識に恃むところが強く、自らが百戦しては必ず勝つがその勝利は自分の周りに限定的であり、大局において領土は縮小し続けていった。つまりは事業全般を自分のマイクロマネジメントで統制し続けるため、規模がでない。また、美意識が強すぎるため人の選り好みが激しく、身内への過剰な愛情深さも相まって、献策などをする多種多様な人材を用いることが少なく、そういった人物達の生育環境を自らなくしてしまった。

    他方、劉邦は筆者が"生まれたままの中国人"と表現しているように、欲のみが深く行儀も悪く、際立った能力も持ち得なかった。ただ、持ち前の立派な体格と性格的明るさ、気前の良さ、無能力であることを自覚しているが故に知恵者の献策を虚心坦懐で聞いては用いる度量の広さで、項羽との局地戦では負け続けるが、周りのものの活躍によりなぜか領土は拡大していく。それだけの人材が居心地よく活躍できる生育環境が蕭何ら側近の計らいもあって充実していたと言える。

    これは現代の企業経営における人財の活用と権限委譲(と報酬)というテーマがまったくあてはまるように思える。

    もう一つ、局所の戦術的勝利と大局の戦略的勝利との対比というか、戦いにおいてどちらがどう作用するのかがこの物語を通じてよく理解できるように思える。項羽は常に率先垂範で全戦全勝。ただ、それは目の前の自分の戦いだけのことであり、人を信じて任せることが不得意であった為、周辺の王に裏切られ、領土は削られ、ついには四面楚歌となる。劉邦は戦えばほぼ負け、逃げ続けるのだが、常に肢体を強敵項羽の前にさらし続ける勇気があり、結果としてそれが項羽を劉邦の前に張り付けさせることにつながり、背後の別働隊の大胆な戦略的展開を可能にした。また、韓信、彭越などの異才を大度と気前の良さでよく御して戦略的翼を極大に広げることができた。もっとも劉邦が積極的に大度であったというよりかは、張良、陳平らの謀臣の意見をよく受け入れたということであり、劉邦は究極的には「人の意見と人を受け入れる天才」ということなのかもしれない。

    張良は劉邦の天下取り(逆に言うと滅亡)の急所に差し掛かった時に「陛下は広大な徳を持たれるが故に天下の半ばは陛下を慕い、本来ゆるされるはずのないかつての叛将もふだつきの悪党といわれた男も、陛下の元で安んじて働いております」と劉邦の唯一に近い良い点を褒めているが、即ち現代でもこの要素は十分に重要かと思える。いやあ、今回も読んで勉強になったなぁー。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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