ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181806

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  • マルクス・アウレリウスからコモドゥスの治世。哲人として知性・理性溢れる賢帝と評されながら、その治世の大半は蛮族の撃退に費やされ、体は恵まれなかったマルクス。一方、マルクスの息子ながら体には恵まれるも暴君とされたコモドゥス。コモドゥス暗殺以後どのようにローマが変わっていくのが気になる。
    あと、映画・グラディエーターの背景に触れている部分は面白かった。

  • マルクス・アウレリウスの陣没、その子のコモドゥスの在位期間を書く。マルクスは内戦よりマシだとの判断から、帝位を息子に世襲させたのである。コモドゥスの治世も最初は順調であったが、皇后が懐妊したのをきっかけに、実姉が暗殺を画策し、そこからコモドゥスも猜疑心がでてきて、側近政治に走り、最後は暗殺された。コモドゥスは体力自慢でライオンの毛皮をかぶってプロの剣闘士と闘ったりしている。無為に過ごしたので、戦争もしなかった。財政はまあまあであった。

  • 読書日:2013年2月13日-15日
    title in Italiana:FINIS PRINCIPIUM.
    哲人皇帝と謳われたMarcus Aurelius Antoninusの最期が印象に残りました。
    皇帝になって以降と哲学の勉学を続けた彼の最期はAugustusの様な何もかもやり遂げて思い残す事の無い順風満帆なものだと思っていただけに、全く違った最後でした。
    まさか首都Romaではなく前線基地で死ぬとは…。

    次の皇位は息子のLucius Aurelius Commodusで、父の偉業をどう引き継いで治めるのか期待して読んでいたのだけに、Neroを彷彿とさせました。
    でも実姉から暗殺されそうになったら、ああなってしまう気持ちも解らなくもありません。
    人生経験が少なく10代で即位した為に世の中の視野が狭まっていたんだろうと思います。
    最期は31歳で愛妾に殺された上に記録抹殺刑に処されては、
    父Marcusの治世は何だったのかと想わずにはいられません。

  • 不運が一挙に押し寄せていたような、アウレリウスの治世である。

    お気の毒としか言いようがない。

    恒例行事となったパルティア蜂起、蛮族の侵攻と続き、果ては皇帝

    死去の誤報によるものとは言え、存命中にシリア属州総督のカシウス

    が皇帝を名乗って立つ。

    あっちで戦役、こっちで戦役の最中に謀反まで起こってしまうってのは、
    帝国の機能不全の片鱗なのか。

    さて、ローマ皇帝は現代で言えば最高裁長官のような役割も担っている。
    法廷で裁判長を務めるのは首都警察長官なのだが、アウレリウスがその
    長官に宛てた書簡が興味深い。



    「あなたから送られてきた捜査と尋問の結果を精読しての感じでは、

    被告エリウス・ブリスクスは、自らの言動についての最低の制御能力

    さえも欠いており、母親を殺したときも、その行為の善悪に対しての

    判断力がなかったと思うしかない。また、狂人を装っていたとも思え

    ない。このような場合は、罪に問うことはできない。なせなら、狂気とは

    それだけで、神々が人間に下す罰の一つであるからだ。
    しかし、判決は無罪でも、それは即、放免ではない。今後とも、厳重な

    監視の下で保護される必要がある。しかも、情況によっては鎖つきの

    保護さえも、考慮に入れておくべきだろう。これは、彼に与える罰では

    ない。この人物の近くにいる他の人々の保護のためであって、判決を

    下すわれわれは、充分に起こりうる不慮の事態をも考慮に入れて

    おかねばならないということだ。(後略)」

    哲学者でもあるアウレリウスは、紀元2世紀にこう考えたのか。




    「愛するローマ、幼少のわたしを育んでくれたチェリオの丘」。こう書いた

    哲人皇帝アウレリウスは、第二次ゲルマニア戦役の最中に病死した。

    軍事には不向きな皇帝だったが、19年の治世のほとんどは戦争ばかり

    だった。

    アウレリウスが将軍たちに遺言したのは、既に共同皇帝になっていた

    一人息子コモドゥスを助け帝国の安全に維持に努め、内乱は起こさぬ

    こと。そして、現在進行中のゲルマニア戦役の続行だった。

    遺言通りに共同皇帝になっていた息子のコモドゥスが次の皇帝となる。

    しかし、コモドゥスは父の遺言を無視して戦役の終結を宣言する。

    このコモドゥス、後にネロやドミティアヌスと同様の「記録抹殺刑」に

    されるのだが、彼の知性を狂わせたのはまたもや女であった。それも

    姉であるルチッラ。

    血筋だけを誇った愚かなアグリッピーナ母娘に並ぶ、気位だけは高い

    女性である。皇帝の長女であり、共同皇帝であったルキウス・ヴェルス

    に嫁ぎ、「皇后」の尊称を贈られたことが彼女を勘違いさせたのか。

    皇帝となった弟の妃が子供を身ごもったという噂が、彼女の嫉妬心に

    火をつける。「皇后は私ひとりよ。私こそがローマ帝国のファースト・

    レディ。この座を渡してたまるものですかっ!」。

    そこで女は考えた。皇帝暗殺である。それも相当杜撰な計画で。結局は

    失敗しちゃうのだが、この陰謀がきっかけとなって皇帝コモドゥスは

    猜疑心の塊りとなり、暴走が始まる。

    「マルクス・アウレリウスは死・の床で、コモドゥスを助けて帝国を盛り立てて
    くれとの誓約を将軍たちに求めたが、それよりも娘のルチッラに、コモドゥス
    の母代わりになって弟を助けるとの誓約を求めるべきであった。」

    まったく著者の言う通りである。そうしていれば、コモドゥスも軍団兵からの
    誓約拒否にあうこともなかったろうし、入浴中に暗殺されることもなかった
    かもしれない。

    平和と繁栄の絶頂は崩壊の前兆なのだが、私好みの「格好いい男」が
    まったく登場しないのも崩壊の兆しなのか。笑

  • 11/4/28
    マルクス・アウレリウスの後半生。コモドゥス。病弱な体でもマルクスは前線に留まり指揮を続ける。コモドゥスは政治をしない、他人をちょくちょく殺害する、自分の趣味に走るなど典型的な愚帝。マルクスが何故そんなに人気があるのかはピンと来なかった。

  • 00250
    B010
    他-9999999-001

  • メモ:マルクス・アウレリウス円柱。蛮族との戦い。シリア属州総督カシウスの謀反。息子コモドゥスを皇帝候補に。世襲。第二次ゲルマニア戦役中に前線で死。
    皇帝コモドゥス。姉による暗殺陰謀。側近政治。暗殺。

  •  なかなか進めないが、読始めると「まとめ読み」状態になるのが”ローマ人の物語”。
    あぁ、世界はこのように変遷していくのか!このように衰えていくのか! その場にいる人間には見えずとも、歴史をひもとくと見えてくる。

  • 最後の賢帝と言われたマルクス・アウレリウスの戦場で過ごした後半の人生と、ローマを混乱へと導いていくその子、愚帝のコモドゥスの時期を叙述。先に続くローマ皇帝がそれぞれになすべきことを認識し実行してきただけに、元老院も安楽の世に慣れてしまい、愚帝に対して反応ができなかった。ローマ帝国の滅亡は、コモドゥス一人の責でなく元老院の平和ボケも要因となっていたことが分かった。

  • 前の巻にも増して面白かった。
    哲人皇帝マルクスの治世の後半と、続く愚帝コモンドゥスの死までを書いた一冊。

    このシリーズ、「小説」という体で書かれていないから、基本的に淡々と読み進めていたんだけど、マルクスの治世は違った。諦観というか終末観というか、そういう雰囲気がずっと漂っていた。そう感じたのもまず間違いなく自省録を先に読んだからだと思う。そういえばマルクスの肖像にも憂愁の翳りが色濃く出ている気がするな。このシリーズ中、最も感情移入して読めた。

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