- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101194257
感想・レビュー・書評
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諸田玲子のお鳥見女房シリーズ第二作。毎度同じことを書くのは気が引けるけど、カバー絵の作者変えたらどうだろうね。これに惹かれて手に取る人と、これに引いて敬遠する人とでは後者がずっと多いようにぼくは思うんだけど。中身がいいだけに惜しいと思う。
相変わらず矢島家を切り盛りする珠世の魅力的なこと。そのやさしさ、そして何より明るさ。こういう人がそばにいたら、心癒されるだろうと思う。「不運は重なる。ありがたいのは何事にもかぎりがあることだ。災いはいつか福に転ずる。福は福を呼ぶ。それさえ信じていれば、なにがあっても笑顔で切り抜けられる」。まさにそれを体現している。この言葉、そういえば前に読んでここに引用した「賢者はベンチで思索する」の中の国枝(赤坂)老人の言葉にそっくり。なるほど、ぼくはこういう言葉に弱いんだなきっと(笑)。
第二話の表題作。愛し合っていながらちょっとした言葉の行き違いで別れることになった美弥と次左衛門。「『噂など信じぬ』となにゆえ書いてくださらなんだのか」という美弥の気持はわからないでもない。だけど、そこまで文の文言に厳密さを要求されたら辛いよな。話し合えばどうってことのないことが、手紙にすると一人歩きして行き違いを生む。ぼくは男だからか、劇的な再会後に蛍を届けた次左衛門の心中を思うとやりきれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お鳥見女房シリーズの第二作。
一作目から続いている大きなストーリーが佳境に入り、はらはらと手に汗握る展開の二作目。それと同時に主人公珠世の周辺では、相変わらずのどかに、人々の悲しみや喜びが交錯する日々が続く。
読んでいて胸があたたかくなるのは、描かれる人々の姿だけではなく、作者の文体もまた気品がありながら親しみやすいあたたかさをたたえているからだ。
この二作目の終わりでその大きなストーリーはとりあえず一段落する。しかし、まだまだこのプロットは続いていくだろう。大きな政治の動きが珠世とその家族の平和な生活に落とす大きな黒い影。その中で、矢島家の人々と多津、源太夫、そしてその子どもたちは精一杯生きていく。見守りたいシリーズである。今のところ5巻まで出ているようなので、次の三冊も早く入手したい。 -
将軍家の「お鳥見役」矢島久之助の女房珠世を主人公にした「お鳥見女房」シリーズの2作目。1作目の話を大方忘れてしまっているので、少し多い登場人物の関係が頭に入るのに一寸時間がかかったけれど、あとは問題なし。8章からなる一話完結の「小さな物語」とお役目のため沼津に行ったまま消息を絶った夫久之助を巡る「大きな物語」それに主人公珠世の娘の恋という「中くらいの物語」がバランスよく構成された連作短編集。「小さな物語」たる江戸、お鳥見役組屋敷周辺の物語は「武家」ながらも市井物と呼んでもいいような日常の人情と機微の物語。8章を貫く「大きな物語」は「お鳥見役」に隠されたもう一つのお役目にまつわる話で物語が進むに従って緊迫感が増し、8章は手に汗握ろうかという展開。続刊は5巻まで出ているんだけれど、文庫を待つか、買ってしまうか・・・
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今からでも、少しずつ、珠世さんのようになれたら。
学んだこと。
水野忠邦(浜松藩主)と水野忠成や水野忠義(沼津藩主)は、親戚でもなんでもなかったのだということ。
知らなかった。(;^_^A
水野と来たら、忠〇〇みたいな名づけの決まりがあるの? -
「これで寂しくなくなるかしら?」
「箱のなかが真っ暗でも?」
「身動きができなくても?」
「ふうん」
「小母さま……」
「ううん……なんでもない」 -
シリーズ第二弾。
多津がすっかり母親に。
珠世さんも相変わらず良き母、良き妻で、その心の在り方には背筋が伸びるような気持ちになりました。
家業の御鳥見役となった長男·久太郎、次男であるがゆえに悩む久之助、格式高い旗本の家にお嫁に行った長女·幸江、少女から大人になりかけてきた次女の君江。
子どもたちそれぞれに悩みがあり、それぞれに心を寄せる珠世さんはやっぱり素敵な女性だな。 -
シリーズ第二弾。
夫と次男の無事を祈りながら、日々を過ごす珠世さん。
次女・君江の、恋の行方も気になるところです。
今回も色々展開がありましたが、心温まるラストに胸がいっぱいになりました。 -
中年女性を主人公にした人情話+幕府隠密の夫の周りで起こる剣戟の2本立てで進む時代連作短編小説です。盛り沢山で上手い設定でしょうね。
徹底的に善人の珠世。心ならずも隠密として働く夫の伴之助。それを援ける次男・久之助と居候の源太夫という剣士。源太夫と許婚・多津の関係や、次女の恋、源太夫の子供達の腕白ぶり、色々と盛りだくさんですが、上手くまとまっています。
特に目立つ素晴らしさは無いのですが、安心して楽しく読める作品でした
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すべてが大団円の物語とはいかないのが人生。けれど、それでも温かい。珠世さんのえくぼに皆が救われている気がします。