エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223124

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争開戦を巡る諜報活動の話。択捉島の取材なんてできなかったと思うが、リアルな描写に引き込まれる。佐々木譲さんの主人公は皆すごい能力を持っているのに恵まれない境遇で何処か諦念感漂う人が多い。
    NHKドラマの「エトロフ遥かなり」見たいな…

  • 【256冊目】バーのママに「佐々木譲先生の作品で一番おもしろい」と勧められて読んだ本。山本周五郎賞とってるのね。知らなかった。真珠湾攻撃に択捉島が関わっているとは知らなかったけど、それよりも佐々木先生の物語構成力と人間像の描き方に注目が行く。スペインと函館から始まった物語は、ニューヨーク、ハワイ、東京、そして択捉島へとダイナミックに場を移しながら展開していく。複数の人物を並行して描きながらも、物語の筋を読み失うことがない。良い意味できちんとまとまっている。こういうのが文章力というか、小説家の力なんだなぁと痛感。
    それと、前半で出てくるセックスと後半で出てくるセックスの対比が良い。詳細に描いているわけではないけど、主人公の獰猛さから愛情への変遷を印象づける上手い小道具として使っている。

  • 佐々木譲の第二次世界大戦三部作の第2作。終わり方があっけなかったなぁ。

  • 悲劇の島「択捉島」。太平洋戦争の開戦のキーポイントとなり、戦後はソ連の実効支配化となる。緊急電はいまだに鳴りやんでいない。

  •  こちら「面白いおすすめ本」として記憶にあって、やっと読むことができた。すすめていたのが雑誌なのか小説のあとがきだったのかは不明。『エトロフ発緊急電』は太平洋戦争三部作の2冊目、他に『ベルリン飛行指令』『ストックホルムの密使』がある。この2冊もぜひ読んでみたいものだ。ところで『エトロフ発緊急電』は吉村昭著『大本営が震えた日』(新潮社 1968年)の日本軍が真珠湾攻撃に際し、敵軍の発見を恐れ北上海路を取った経緯が細かく小説になっているが・・・1989年新潮社発行された本書はこの本を参考にしているのだろうか、ちょっと気になる。

  • 自分でもどうかとは思うけれど、読み始めてようやく題名のエトロフと択捉島がつながった。島の地名が北海道ととても似通っていて懐かしく、ああ同じ国だったのだな、と初めて実感できた気がする。国という枠組みは本当は流動的なもので、帰属意識を感じられない登場人物たちは、国のためというよりは出会った人のために動き、だからこそ共感できる。ずっと読みたかった名作に満足。山本周五郎賞キャンペーン。

  • 佐々木譲『諜報3部作』中の最高傑作だろう。スペイン内戦で人間の醜い内面を垣間見て絶望した日系アメリカ人のケニー斉藤が米軍のエージェントとして帝国海軍の情勢を探るため北方領土に潜入。そこでロシア人とのハーフとして生まれ、奔放に生きてきた岡谷ゆきと邂逅する。寄る辺ない人生を送ってきた二人が交錯し、日米開戦前の緊迫した状況が拍車をかけ、物語は悲劇的ラストへと疾走する。不条理というのは実存哲学の専売特許なのだが、普通に暮らす僕らもやるせない気分になったり、疎外感を覚える。だから、アウトサイダーへの共感は強くなる。また、ケニー斉藤を追跡する憲兵隊の磯田曹長の実直な態度を描くことで、労働階級の日本人の美質としての勤勉さにも賛意を送っているように見える。佐々木譲の屈折が抒情的に結実した珠玉の名作。

  • それぞれ別個の人物を軸に幾つもの話題が展開されていたが、後半に向かって収束していき、択捉で全ての顛末を迎える。この全体の流れ、とても好き
    国全体の流れとしては知っている出来事でも、それを個々人の視点で述べるという試みはやはり新鮮で好き。人間味のある行動の一つ一つ
    何より人生をかけてこれだけの行動を成したにもかかわらず、還元されることなく無に帰したというのも無情、現実は小説よりも奇

    エピローグ、少し助長ではという印象もあり、むしろプロローグとして書いても収まりは良さそう

  • 3.8的3です。
    真珠湾攻撃開戦前夜という時代です。日系二世のスパイとロシア人が父の私生児のゆきの、悲しい物語でした。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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