重力ピエロ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250236

感想・レビュー・書評

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  • 小難しい歴史や偉人の言葉を引用して、ウィットな表現でハートフルな内容を訴える小説です。
    その感じが伊坂幸太郎っぽくて、安心して楽しめました(笑)

    「おまえが仮に法を犯しても、そこには何か理由があるんだ、と俺は信じるよ。俺は社会よりも、俺の家族が大事なんだ。」

    これは主人公たちのお父さんのセリフですが、社会的には間違っていても、子供の味方でいてあげたいという気持ちって、親だからって当たり前ではないと思います。
    私も、子供から好かれ、子供に対しても社会よりも家族が大事なんだって言えるお父さんになりたいと思いました。

  • 設定はあり得ないし、こんなことがあったなら家族全員ずっと暗いだろうと思うのに、なぜか明るい
    一つの家族と、兄弟の絆を感じられる作品

    空中ブランコを飛ぶピエロのように重力を忘れさせてくれる、そんな何かが起こるように

    血が繋がってなくたって
    家族の絆は作れるよね

    伊坂幸太郎さん、やっぱり好きだなぁ

  • 『春が二階から落ちてきた。』という書き出しが印象的で、どんどん惹き込まれた。 
    壁に描かれたグラフィティアートの謎と連続放火事件について、泉と春の兄弟、そして病気で入院している父が考察していくというストーリー。
    遺伝子と絆、善と悪など、どちらが正しいか分からない苦しい葛藤が描かれていて、ストーリー自体は重たい内容だった。
    ただ、この家族が素敵すぎた。お父さんはカッコ良すぎるし、亡くなったお母さんの天真爛漫なところ、泉と春のユーモラスで博識なところも、全部この4人が家族じゃないとダメだと感じた。
    『楽しそうに生きていればな、地球の重力なんてなくなる』というセリフが、この小説自体を提言しているようで、特に良かった。

  • 伊坂幸太郎4作目
    相変わらず何気ない会話にクスッとしてしまう。

    ■遺伝子
    実の親子は遺伝子を受け継いでいる以上似ている部分はあるし、繋がりは存在する。
    けれど人格形成に影響するのは圧倒的に育った環境(育ての親)だと思う。
    春は泉水の弟であり、葛城ではなく育ての父の子供であった。
    父は血の繋がりがなくても、春と泉水を同じだけの愛情を持って育てて信頼し、二人が一緒にいることを喜んでいた。
    父と同じ立場になることを想像もできないが、自分では表面上同じ愛情を注いでも、心の奥で差をつけてしまうと思う。春はすごい父に育てられた。父のすごさを見抜いた母もすごい(笑)

    ■罪と罰
    レイプ犯は死刑が無理なら全員去勢すればいいと思う。
    殺人も罪は思いが、心に大きな傷を与えて生きて行かせるというのもとても罪が重いはず。
    30件近く強姦してるのにのうのうと生きていられるのは明らかに法律がおかしいだろ!
    春は写真を送って反省をさせる機会を与えたのか、反省していないことを確認して心おきなく殺すためなのか分からないが、相応の罰だと思うし春は自首する必要はない!
    春が殺すのを止めたとして、その後葛城が強姦をしたらその被害者は誰が助けてくれるんだ!

    …と、感情論では思ってしまう。
    法律を作るのも裁くのも人間だから、どうしても抜け道があるんだろうけど納得のいかないことは多いなぁ…

    ■重力ピエロ
    どうやったらこういう発想になるんだろう
    頭のつくりが違うなぁ…すごい
    これも育った環境なのか??
    伊坂さんのDNAを煎じて飲みたい



    伊坂作品まだまだ読みたいものが多すぎる~

  • 同じ母親でも弟はレイプ犯の父親をもつという非常に重いテーマであるが、それでも良い作品になるのが伊坂幸太郎。ユニークな場面もあり、そして終盤になるにつれて読むのをやめられなくなる。春が放火事件の犯人なのは薄々勘付いていたが見事な伏線回収だった。冒頭と最後にある”春が二階から落ちてきた”は題名にもある重力を感じないピエロのように全てから解放された春のことを指しているのではないか。

  • 本より先にテレビで映画を観た。あるあるではあるけど、内容が若干異なる。

    兄・泉水と、その母が少年犯罪でレイプされて生まれた弟・春の兄弟。重いテーマだけど、春の「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」の言葉の通り、あまり暗さを感じさせず、不思議なユーモアで包まれた作品だった。

    最初から最後まで、春がどれだけの苦悩を日々抱えながら生きてきたのかが分かるのは辛いところ。
    こういうことなら、このままずっと逮捕されないで欲しいと思ってしまう。

  • 安定の読みやすさで、ストレス無く読めました。シリアスで哀しいストーリーだけど、暖かい家族小説の面もあり、最後はうるっときてしまいました。

  • 「目に見えるものが一番大事だと思っているやつに、こういうのは作れない」

    このフレーズが、読み終わった後にじわじわと心の中に染みてきた。今の世の中は「目に見えるもの」が大好きだ。数字、結果、データ、成績、科学的根拠。それらが優秀であることは認めるけれど、だからなんだと、そういうのにしがみついて分かった風な気分になるのはそろそろやめろと、どこかで言いたい自分がいて、それを代弁してくれたのがこの小説だったように思う。

    目に見えるもの、世間から見て良いもの、それが本当に良いものだと盲信するのは馬鹿のやることなんじゃないか。もう古いだろ。そんな気分になった。

    赤の他人が父親面するんじゃねえよ。

    そう言い切ってくれて良かった。春が、家族が、強く在ってくれて良かった。涙が止まらなかった。

    素晴らしい小説だった。

  • 遺伝子のことを取り上げながら、家族、血縁についての物語でした。
    謎の部分はあまりひねったものはありませんでしたが、内容はとても面白く読めました。
    特に最後の章はじっくりと読ませます。

    最後に引っかかることが1つだけ。
    「春は何のために生まれてきたのだろう?」っていう疑問だけが残ってしまいました。
    これからの人生があるからいいのだろうか??

    伊坂氏の作風がなんとなく分ってきました。
    これからも読んでいきたいと思います。

  • ミステリーと人間愛の話。
    生い立ちから始まり、先々のストーリー展開は読み取れる物はあったものの、兄弟愛と父の強さ、母の子を守る強さが印象的でした。
    ピエロは、誰のことを指すのか考えていたのですが、出てくる登場人物全ての人を指すのでしょう。
    それにしても、父のどんな言葉も偉大だなぁと思いました。血の繋がりなんてノープロブレム!それを通り越して愛情たっぷり頂きました!

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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