逃亡(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288123

感想・レビュー・書評

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  • 読了。なにかに一筋の集団には古い体質が残る。封建時代からの積もり積もった埃を誰もが被り、しかもそれに気がつかず自分達が一番だと思っている。いきおい頑なになる。
    舞台を巣鴨プリズンに移す。最後が呆気ないけど、長い物語を充分堪能しました!

  • 最後までドキドキさせた、マイフェイバリット小説。

  • 戦犯という立場、自らの罪意識は持ちつつも、それでもやりばのない国家から見放された理不尽さ、今まで考えたこともなかった戦争の側面を考えさせられた。そしてもうひとつ、下巻を通じて太く貫かれていたのが、嫁の気丈さ。はんぱない。嫁からの手紙は本当に泣けました。

  • 2000.01.01

  • 1945年8月15日、日本敗戦。国内外の日本人全ての運命が大きく変わろうとしていた―。香港で諜報活動に従事していた憲兵隊の守田軍曹は、戦後次第に反日感情を増す香港に身の危険を感じ、離隊を決意する。本名も身分も隠し、憲兵狩りに怯えつつ、命からがらの帰国。しかし彼を待っていたのは「戦犯」の烙印だった…。「国家と個人」を問う日本人必読の2000枚。柴田錬三郎賞受賞。

  • 戦時下の罪を背負いながら、それでもまっすぐに歩みを進めようとする主人公。戦犯と捕らえられてもなお自己の行いと向き合いながら、故郷を思う姿。晴れて、真の意味で、復員として曹長と顔をあわせる最後の数ページは圧巻。長編ながら、あっという間に世界に浸り、読み進めてしまう。帚木蓬生らしい、骨太な物語。

  • 最近外れ続きだったので久々の傑作でウレシス。
    社会派だけど情景描写が素晴らしく、情緒的で、
    でも情に傾きすぎない、素晴らしい一冊でした。

  • 下巻では、帰国し、妻子と再会し、そして戦犯として逃亡する姿が描かれる。上巻がある意味ハードボイルド的な部分もあったのに対し、下巻は情緒的なところが大きい。特に、妻とのさまざまなやり取りは涙を誘う。

    舞台は全然違うが加賀乙彦の「湿原」を思い起こさせた重厚な傑作。

  • レビュー

  • ”逃亡”とは、憲兵の戦後を描いた大作である。国のために働いた彼らが戦後連合国に追われ、自国にも追われるという悲哀の物語である。プロの作家は資料を読み込むことで90%作品を完成させることができる。残りはリアリティをいかに追求するかがカギとのこと。本作品のリアリティのすごさとは、戦後の日本の農家の暮らしぶりや焼け野原となった博多の街並みと闇市の様。当時の人々の苦しみや希望を見事なまでに描いている。また戦犯への追及。戦争は終わってない。戦争は継続していることに対する緊張感。それにしてもリアリティの源泉が・・とは。解説を読んでびっくりです。

  • 今まで私が読んだ帚木作品は、精神科医らしく心を病む人物の登場が多かった。
    これは第二次大戦中憲兵として働き、敗戦後逃亡し続ける主人公の限界とも思える物語だ。
    同時期に大陸で新聞記者として従軍した父の面影と重ね合わせた。

    戦争は人を変えると言うが、随所にそれがうかがえる場面が出てくる。
    しかし、極限状態にあっても友情の存在があることも知った。

    小説としてより、ドキュメンタリーのような迫力、面白さを感じた。
    敗戦後の混乱、戦争裁判の不条理、道を誤った国家の恐ろしさ
    、どれも私年代(80歳)にとっては記憶にある事だけに胸を打ちまた痛みを感じた。

  • 柴田錬三郎賞受賞作品。
    太平洋戦争終戦直後、香港で諜報活動に従事していた憲兵隊の守田軍曹は身の危険を感じ離隊を決意し、命からがら日本に帰国した。
    しかし、もと憲兵の彼は「戦犯」として追われることに・・。

    大好きな帚木さんの作品だが、今までになく読みにくくて時間がかかってしまった。
    主人公の守田軍曹の心境や家族に対する気持ちや回りの人々の思いなんかの部分は読みやすく感情移入できたが、香港や中国大陸での諜報活動、特に捕虜を自白させる場面などは、なかなか読み進まなかった。

    結局、国家って何なのだろう・・・。そして戦争は人間を人間でなくさせるものだと思った。
    普通の生活では考えられない残虐なことも戦争では行える。それも普通の人が行うのだもの。

    そして「殺し合い」をしたのは両方なのに、戦勝国は敗戦国の軍人を「戦争犯罪人」として罰することが出来る。広島、長崎に原爆を落とした人は罰せられないのに。

    この本を読んでびっくりしたのは、文中で昭和天皇のことを「ぼろくそ」に書いてあること。
    ここまで書いて良いのかなあ・・?とも思ったが、作中に登場人物が言ってることで帚木さんが言ってるわけでないし良いのかなあ^_^;
    しかし、天皇が責任を取らなかったことに対して、割り切れない気持ちを持っている人がいても当然だろうと思う。

  • とにかく食べ物に関する描写が多いと感じた。
    追われ続ける恐怖と、潜伏し続ける孤独と飢えの中では、とにもかくも、人間は欲求が食欲に集中するのだろう。

    ボロボロになりながら逃げ続け、上の息子の出産は、赤紙により出征して立ち会えず、終戦後、ボロボロになり終われ終われて帰国したのに、今度は同じ日本人である警察に、戦犯と言われ追われ下の子の出産にも立ち会えない。
    国が放つ号令に従い懸命に働いたのに、家族を引き裂かれ、こんなにも苦しまなければならなかったのか。

    戦争という究極的状況下では、価値観というのは、現代に生きる自分からするとあまりにも強烈すぎて受け入れがたい。
    そんな時代に翻弄され、人が消えて行くのは切なく、無性に腹がたって仕方がない。

    自分がこの時代に生きてたらと何度も想像を巡らせながら読み進めたが、相当タフな精神を持たないと生き延びれないなと、諦めの境地に陥って頭が真っ白になる。

    帚木作品2作品連続で読み、充実したものの精神がすっかり疲労してしまった。
    次はもちっと軽いものを読もう。

  • 2011.4.15(金)。
    1997年 第10回柴田錬三郎賞

  • 内容は良かったと思います。
    でも何度も同じ説明が繰り返されている感じが気になります。
    ところどころ読み飛ばしても問題なしで…。
    上下に分けなくても一冊に収まったのでは?!

    引き込まれ感の少ない本でした。
    評価★が良かっただけに残念。

  • 戦争について深く深く考えさせられる。

  • 01.2.22

  • 寫戰後被戰勝國訴追的憲兵們的故事。憲兵因為「殺害非戰鬥員」(其實他們的戰場、對象本來就不是穿軍服的敵人,而是間諜、穿平民服的敵方、被統治的人民等等),戰後軍人紛紛復員,而憲兵的戰爭才正要開始。這本書寫得相當精彩,對這個議題有興趣的人推薦閱讀。
    據說帚木さん其實是在寫自己的父親。

  • 以前読んで面白かった、「閉鎖病棟」と同じ作者の作品です。「閉鎖病棟」のときも書いたのですが、この作者の作品は、なんでもないような日常生活を積み重ねることで、物語に厚みを作っていく感じですね。今回の作品は舞台設定が、修正直後の中国・日本で、B級戦犯となってしまった主人公の逃亡を描いています。ストーリー的には主人公が戦犯として逃亡している場面と、そのときに思い出す戦争中の憲兵としての戦場での活躍で描かれているのですが、どちらも淡々とドキュメント的に描かれているだけで、そこに謎があるわけでも特別なつながりがあるわけでもないです。「閉鎖病棟」の時には舞台設定が割合身近だったこともあり、その構成が物語に厚みをもたらしたんですが、今回は舞台設定事態が終戦直後という正直実感のない設定のせいかいまひとつ自分の中では盛り上がりませんでした。
    まあ、この作者の作品は舞台設定がある程度自分の身近なもの出ないといまいちなのかなあという感じです。
    トリックとか、ミスリーディングとかの作品に疲れたときにはいいかもしれないですね。

  •  解説を読んで、守田が作者の父だとわかり、上巻での疑問は吹っ飛んだ。だとすれば、作者は、父の顔も知らずに育つはずだった竜次。彼はその後、父から、何をどのように聞かされ、育ったのだろうか。全てを聞いたのではないだろう。だからこそ、作者は、小説という形で上梓しなければならなかったのではないか。父の語ったものの隙間を埋めていく作者の心中はいかばかりであっただろう。<br>
     結末は、やはり予想の範囲内ではあった。あの時期、逃げおおせた人や、逃げて捕まるのが遅かった人たちの多くが助かり、早々に捕まった人たちが生贄にされたのだ、という話はいくつか聞いていたから。逃亡期間が1年になったことで、確信は深まった。それでも、最後まで、それでもやっぱり香港送りにされるのではないか、という可能性を残し続けたのは、それがまさに、あの当時巣鴨プリズンに拘留された人々のリアルだったからなのだろう。<br>
     守田が、どの瞬間に何を思い浮かべるのか。その選択にも優れた感覚を示している。人間、こんなときにこんなことを思い浮かべるのか、という驚きと、そうだろうなという納得。扱われている内容に対して、ゆったりと読み込める一冊だった。

  • 第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
    しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。

    主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
    そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。

    終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になっています。

  • やはり大泣きしてしまった。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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