絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.91
  • (94)
  • (145)
  • (96)
  • (13)
  • (1)
本棚登録 : 1246
感想 : 153
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101325323

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大学生のときに東南アジアで初めて貧しい子供の生活を見たときは衝撃的だったが、筆者は大学1年の初っぱなでカラチからバスでアフガン入りしてるとは・・ かなりの危険を重ねてきた体験をお持ちだと思った
    自分はアジアに四年半いたので馴染みの光景、話題もあったが、実際にそこで寝食を共にするってのは大胆極まりなく、そんなことできる日本人はそういないはず
    アジアだけでなく、中東とアフリカまでカバーされてるのはプロの証

  • リアルな感じが伝わってきた。

  • 海外基準の本当の貧困というのがわかります。

  •  アフリカ、中東、東南アジアを中心とする貧困の「リアル」を講義形式で紹介する。貧困は、人の命をここまで軽くするのか。

     国内に限らず貧困を丹念に紹介していく石井氏の著。単純な「かわいそう」では片付かない現場のリアルは、程度の差こそあれ日本国内の惨状にも通じる部分はある。
     スラム編、路上生活編、売春編とあり進むほどヘヴィになっていく。一つ一つ拾い上げてもキリがないので、一番印象に残った部分を売春編から。

    P.256
    「(日本人買春客の多いタイのバンコクなどでは、日本風のサービスや営業形態が「輸入」されているが)一方、(現地の)庶民が出入りするような置屋や立ちんぼうなどでは、サービスはほとんどないといってもいいでしょう。制限時間は三十分。前戯は一切なし。脱いで、洗って、挿入して、終了。そんなものです」
    (カッコ内は引用者が追記)

     フィクションのポルノによって性犯罪が減るという説には賛否両論でこれといった結論はないのだろうけれども、少なくとも良質のポルノがあれば、このような無味乾燥の性サービスは不要になるのかもしれない、とは思う。ポルノを用いて一人で処理するのは、わざわざこういった店に行くより手軽だし、病気の心配も、行為の後に強面のおっさんが出てくる心配もない。
     ただこれに近い性産業従事者は日本にもいないことはなく、鈴木大介著「最貧困女子」で触れられている「車内で口コキ3000円」みたいな話もある。比較的ポルノの流通が自由な日本においてもそうした「最底辺の性産業」がある以上、ポルノによる抑止効果は完全ではないだろうが、おそらく容易にインターネットなどのポルノ情報にアクセスできる層は、そうした「最底辺の性産業」を利用することはないような気がする。これから先、一人一台スマホを持ち、インターネットにアクセスできる人間の割合が増えていくに連れ、「最底辺の性産業」は今以上に廃れて行くのかも知れない。
     それはつまり「最底辺の性産業」がポルノとの市場競争に敗れた結果であるとは言えるのだが、反対側から見ればそうした「最底辺の性産業」でしか生計を立てられない人はこの先どうしたらよいのか、という現実もついてくる(そういう女性は大抵において他にできる仕事がほとんどない)。日本なら生活保護もあるだろうというが、行政の水際作戦などが時折話題になるように、ほとんどの自治体においては認定が難しい。特に若者相手にはなお厳しい。まともに教育を受けていない人だと申請書類もロクに書けないし、生活保護を受けると過去の借金を追及されたり、子供を施設に奪われたりすると思い込んでいて自分から保護を拒絶するなんてこともある。となると売春もできない、福祉も受けられない人はセーフティネットから零れ落ちることになる。
     そして貧困国では日本以上に福祉が壊滅状態であり、放っておけば死ぬか殺されるかという世界である。

     本書は全編そんな調子であり、窃盗やら詐欺やら人身売買やら薬物やらといったことが違法であることなんて重々承知であるが、それを無理矢理止めたところでそれを生業にしていた人はどうなるのか、国も誰も助けてくれないのに、という所に帰結する。それがすなわち貧困である。

  • 貧困学
    ってとてもとっかかりにくそうな語感だけど、文体はとても読みやすく、授業を聞いているようでした。

    レンタルチャイルドを読んでから石井さんの本を読みたいなと思って手に取りましたが、こちらも大変勉強になりました。

  • 世界の貧困、格差、不平等などといったキーワードに関心を抱かせてくれた初めての一冊。

  • 内容はともかく、このような本を実体験に基づいて上梓できたことはすごい。よく生存してきたな、と思ったり。

    今いる場所で命の危険にさらされていないのならば、その場所に感謝しながら精いっぱい楽しむ、というのもありかな、と思ったり。

    払ってもいい金額:1000円

  • 社会の階層を上るどころか、それ以上は下がることのない、いわば絶対零度の最下層を生きる世界の人々。かれらと生活をともにすることでしか得られない体験にもとづいて、本書は書かれています。

    現状を訴えるような気概は抑え気味で、文体も講義形式でやさしく書かれています。
    瀬谷ルミ子さんの『職業は武装解除』と合わせて、おススメです。

  • 普通に生きていては知ることのできない真実を教えてくれます。
    彼らが普通に生きていて大変なことは知っていても、それは「大変な人生を生きている」という記号であって、殆どの人がその生について考えてみたことはないんじゃないでしょうか?

    ただ、少し広く浅くな内容だったので、著者の他の本も見てみようと思います。

  • 「現場」に身を置いて
    自分の目で見て
    自分の耳で聞いて
    自分で匂って
    自分で味わって
    自分の言葉で語る
    筆者のスタンスがすばらしい

    きちんと まっとうに 「これから」を考えさせられる一冊です

全153件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井光太の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×