かたみ歌 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101337715

感想・レビュー・書評

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  • 不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。
    昭和の香りと死の雰囲気が漂う少し怖くて、でも優しい連作短編集。


    どの話も胸に染みるものがありました。特に気に入ったのは次の2つです。

    「夏の落し文」…天狗の落し文が貼られ、子供が行方不明になってしまう。
    弟の目線から描かれた兄が、強くて優しくて、かっこいい。
    「兄ちゃんは、なんでそんなに優しいの?」
    「優しくされて嬉しいと思ったら、お前も誰かに優しくしてあげろよ。」
    兄には出生の秘密もあるのだが、そんなことは関係なく弟にとっては、ヒーローのような絶対的な兄だったんだろうなと思います。

    「栞の恋」…古本に挟んだ栞で文通を始めた。その相手は何十年も前の人で、時空を超えた恋をしていたのだ。
    何年も前の世にも奇妙な物語で使われたエピソードだと思います。とても印象に残っていた話で、偶然パラパラとめくった本書にこの話があったため、購入しました。
    好きな人に手紙を送るって、文通をするって、いいなーと思いました。

  • 作品の一つ、「栞の恋」を紹介され興味を持って読んだ本。

    昭和が舞台なので平成生まれの私は想像で補いながら読むのだけど実際にこの時代の昭和を生きた人が読んだらもっと楽しめるのではないのでしょうか。

    「紫陽花の頃」はどことなく漂う悲しさに抒情性を感じ、
    「夏の落とし文」に切なさと怖さが混ざり、
    「栞の恋」は思っていた結末と違ったが、恋する少女のトキメキを味わった。
    3作も読むと「幸子書房」が次の話ではどう関わるのか楽しみで楽しみで。
    次の話を読むたびに「幸子書房」キタ!と思いましたね。
    「おんなごころ」は本当に亡くなったまちこちゃんがかわいそうで、ラストの初恵さんの嘆きとイラつきにぐっときました。
    「ふざけるんじゃないわよ!」この一言に全てが込められていると思います。
    「ひかり猫」もどんでん返しがされましたが私も動物を飼っている分、もっと可愛がってやろうという気になりました。
    「朱鷺色の兆し」も怖かったですね。人の死ぬ予兆が見れるなんて精神的に辛いな。
    「枯葉の天使」でやっと謎めいた「幸子書房」の店主があきらかにされ、読者もすっきりしました。きちんと全編を通してちりばめた伏線を見事に回収しましたね。

    「幸子書房」の店主は生と死の中間にいるようなイメージがありました。この街で起きる不思議話を難なく受け入れていたので、異界の人間かなとも思いましたが彼も普通の人間の一人だったんですね。

    どの話も甲乙つけ難くって、あえて一番私が切なくなったのは「夏の落とし文」でしょうか。弟がいるので余計に感情移入をしてしまったのだと思います。次に「おんなごころ」。遠い事件の様だけど実はありがちな事件であるとも言えるでしょう。
    「死」が続く作品ゆえにそれに伴うもの悲しさがあるのだけど最後の話で「生」が生まれた。正に一周した感じですね。

    いろいろ考えさせるところも多々あり、どの話もしんみりと切なくもおもしろかったので朱川さんの他の話もぜひ読んでみたいです。というより読みます。

  • 読んで初めて、全部幽霊的な話だったと気づきました。思ったより面白くて一気読み。よかったです。

  • 久しぶりに、なんか、物語、読もー…と思っているところにたまたま行った本の森でみつけた、朱川湊人のこの本。高校生の時に「花まんま」を読んでフニャッとした気持ち悪いけど気になる感覚を覚えていたので、そのフニャッとした感覚を期待して読んだ。
    でもこの「かたみ歌」はフニャッとした感覚ではなくフワーとしていた。映画にしたらええのに、と思った作品だった。 古本屋のおじいさんを軸にその町で起こる不思議な(でも登場人物は皆、納得してしまう)できごと。

  • 昭和40年代半ばの東京下町を舞台にした連作短編。各短編の主人公は下町の商店街にて不思議な体験をする。しかも死にまつわる体験。鍵を握るのは必ず各編に登場する古本屋のご老人。最初の編では背中がぞくとする感覚しか残らない。感動という帯に引かれ手に取った作品なのに??しかーし巧みな文章に引かれ読み続けた先に見えたものは‥。各編の物語が一気に集約され一つの美しい物語が浮かび上がる。物悲しいけど胸にしみるな~。夏の終わりに寝ながら読むにはうってつけの作品。更にその時代に流行していた音楽が物語に彩りを与えている。あのねのねの"赤トンボ"は懐かしかった(^^;

  • 不思議な事が起こる、アカシア商店街での連作短編集、ちょっと怖くて切ない話もあり。時空を超える「栞の恋」って話がよかった。伏線、連作、最終話でちょっと納得。

  • 昭和40年代下町のアカシア商店街で起こる7つの不思議な物語。「死」をテーマとした話ばかりなのにあるのは恐怖ではなくノスタルジイ。この頃がまだ町に闇が残っていた最後の時代になるのかな。この少し後にはコンビニ、スーパー、ファミレス、24時間いつでも開いてる店が当たり前になってしまう。異界がすぐ隣にあった(かもしれない)最後の時代。すべての話に登場する古本屋の主人。この連作の中でなぜ常に彼のもとに不思議な話が集まるのか、最終話で彼の立ち位置が分かると思わずためいきが出た。静かな驚きでした。

  • 下町での様々な出来事が古本屋で繋がる短編集。
    少し奇妙で少し怖い、そしてとても温かいお話です。
    『夏の落し文』は悲しくて悲しくて、やるせなくなりました。

    『栞の恋』を読んだ瞬間、「あれ?これドラマでみた?」と思ったら、やっぱり映像化されてましたね。このドラマはとても印象深かったので、まさかここで原作に出会えるなんて、驚きと同時になんだか嬉しくなりました。

    最後に古本屋のご主人が救われて良かったです。

  • 初読み。
    ホラーなんだけども、切なかったり、ほっこりしたりする連作。
    初めての感じだったので新鮮で、なかなかよかった。

  • 39頁で綴られた作品
    堀北真希のドラマで知りましたが胸が締め付けられます

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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