1000の小説とバックベアード (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101345529

作品紹介・あらすじ

二十七歳の誕生日に仕事をクビになるのは悲劇だ。僕は四年間勤めた片説家集団を離れ、途方に暮れていた。(片説は特定の依頼人を恢復させるための文章で小説とは異なる。)おまけに解雇された途端、読み書きの能力を失う始末だ。謎めく配川姉妹、地下に広がる異界、全身黒ずくめの男・バックベアード。古今東西の物語をめぐるアドヴェンチャーが、ここに始まる。三島由紀夫賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 小説をめぐる小説、奇想天外な冒険小説。映画で言うと『ニュー・シネマ・パラダイス』。確かに現代において《純文学》を書くような人が読むとそこそこショックを受けるだろうし怒るかもしれないが僕はこれでいい。小説はもっともっと壊れていけばいい。どんな形にでもなればいい。そもそも僕がどう望むかにも寄らず、小説の形はきっと《そうなる形》になってゆく。なにせ『言葉は残る』のだ。

  •  小説を書くことが自分の趣味と感じたことがある人間のなかで、いったい死ぬまで小説を書き続ける人はどのくらいいるのだろう。

     暇を持て余していた大学時代、わたしは小説の新人賞に応募してみようかな、と思ったことがある。しかし、応募要項を読むのがめんどくさくて、あっさりやめた。当然応募作なんて一文字も書かなかったどころか、頭の中にさえ影も形もなかった。
     プロデビューできても、作家専業で一生食べていける人は多くないだろう。プロにならなかった、なれなかった人は、いくら書いたって何の見返りもない。
     他人に読んでもらう機会も、そうそうない。最近なら簡単にウェブで公開することもできるけど、それでもやっぱり無名の素人の作品を多くの人に読んでもらうのはとても難しい。読んでもらえたところで、その人に好意的な感想を抱いてもらえるとも限らない。
     しかも、世の中には小説があふれていて、まったく新しいものなんてたぶん存在しない。
     文学史に燦然と輝く名作はあまたある。人生は短く、そういう小説をすべて読むほどの時間は与えられていない。

     だが。しかし。
     たとえそうだとしても、小説を書くのを辞めなければならないというわけじゃないはずだ。
     だから、書けばいいとおもうよ。
     書きたくなくなるまで書けばいい。
     書きたくなくなったら、この小説を開いてみたらいい。

     そんな、作家を目指している人、小説を書いてみたい人におすすめな一作。私の、とても好きな作品のひとつ。

    (以前単行本で読了済。再読)

  • 「どうせいつか死ぬのになぜ読書なんてするんだろう」と思いながら読んでいたら偶然なのか、似たようなテーマだった。ただこの小説には読者からの視点はない。小説を書かない身からすると良く分からないことも多かった(それでも何かは伝わったのか)。新しい小説の形を模索せよ、といって模索したのがこの小説なのか、この小説自体はそこに達しているのか。

  • ー あまたの文字が僕たちを、いや船を、いや島々を、いや地球を取り囲もうとしている。力強く流れるのは膨大な文字。たくさんの文字。忘れられた文字。かつて輝かなかった文字。まったく輝かなかった文字……。それらを読んだことは一度もないし、きっとこれからも読まないだろう。おそらくこの文字のほとんどは、これから先、誰かの目に触れることもなく、ただひっそりと存在するのだろう。地表に出る機会を失った蝉の幼虫のように、孤独と闇の中で生きつづけるのだろう。

    だけど、
    だけど、
    だけど!
    「言葉は残ります」 ー

    小説好きと小説を書こうと思ったことがある人なら好きな作品かも。

    『フリッカー式』から読んでるけど、ミステリー以外もクセが強いな…。

  • 合わない人には徹底して合わない作品。

  • はじめてこの本を読んだとき、胸が震えた。

    2度目にこの本を読んだとき、涙が溢れた。

    かつては
    「人生において、小説家を一度でも目指したことのある人は読むべき1冊」
    と言ってきたけど、

    そうではなくて、

    人生に夢を諦め切れない全ての人へ
    読んでほしい1冊です。

  • なぜ小説を書くのか、書きたくなるのか。書いても良いのか。

  • かなり独特な文体で鼻につく人も癖になる人もいると思う

    独自的な世界観でファンタジーとして好き
    映像化しても映えそうだが売れなかったのかな

  • 三島由紀夫賞

  • 細部にこだわりテーマ、メッセージがまっすぐ描かれている作品。不思議な世界観を支える小道具や舞台設定が心地よく、主人公に寄り添いながら”小説”について自然と考えてしまう小説だった。好きだなと。

  • 初読:2006年11月7日(『新潮』2006年12月号)
    再読:2017年12月27日(文庫)

    『こどおこ』に続いてこちらも再読。なんとなく、今の色々つらい自分には丁度良い感じの読み応え。
    「文字だけで書かれたドタバタコミック」とは宮本輝の評だけれども、改めて読み返すと当たらずも遠からじという感じがする。
    ただ、やはり当時のいわゆる『ファウスト』勢が担っていた、ある種の若年層向け純文学というか、サブカルチャー的リタラチャーというのは、結局十分開拓されないまま終わってしまった感じがして、非常にもったいないなと思う(あの当時のテンションのまま活動を続けているのは舞城くらいだけど、やはりペースが落ちてしまった)。ユヤタンもすっかり寡作になってしまった…。最近新作出たけど。

  • 相性が悪いのか、佐藤友哉の小説を読んでも、ただただ出来が悪いとしか思えないのを忘れていた。

    文章は基本的に平易で読みやすいけど、所々危なっかしいし、同音異義語の反復を多用するレトリックの引き出しの少なさがダサい、とかは実はどうでも良く、単に迫力に欠ける。

    片説家という設定だけは面白かった。
    固有名詞に惹きつけられても期待が不意にされるような展開は、まあそれはそれでもいいんだけど、小説の循環、言葉は残る、という作品に込められた祈りにしてみたら、この作品自体の強度があまりに足りていない。

  • イッキ読み。
    おもしろかった。
    が、ややこしかった。

    非現実的な中に真理を放り込んで
    爆発させている印象。
    難しいことはわからないけど
    小説を愛している、ということでしょうか。

  • 最初は読みにくいと思ったものの、見た目にも音にもリズムのいい文体に、次第に慣れた
    読後はさっぱり
    小説とは何かを問うテーマ
    いらないモブがいないのが好感触

  •  小説を書くことに対する著者の決意表明のような小説である。小説を書くということを巡るファンタジーであり、設定こそ非日常的だけど、著者の日本文学に対する構えや心意気が勢いのある文章からびしびしと伝わってくるようだった。そのパワフルさに圧倒されながら読むのがとっても楽しい作品。

  • いまいち物語のなかの片説家が必要性がわからなかった。あと、バックベアードはタイトルに使いたかっただけじゃなかと・・・。

  • 「言葉は残ります」

    言葉通り残したい言葉の数々でした。

    感想をうまく言葉にできずくやしいな、、、。

  • シャレオツ感とコンプレックスと自虐の入り混じった,いつも通りヤマもなければオチもない話。

  • 聞いたことない作家さんでしたが、ぱらぱら捲ってみると作中に本の題名が沢山並んでいたので読んでみことにしました。
    小説の中に、小説が出てくる作品は何故か惹かれます。
    やっぱり本好きの性なんでしょうか。
    登場人物がどんな本が好きなのかが分かるだけで、ストーリーの中では語られなかったその人物の1面が見られるような気がするからかもしれません。

    最初は、あまり好みの文章ではなかったので読み辛いな~といった感想しか抱けなかったのですが、次々と繰り広げられる事件にぐいぐい惹き付けられ、最後は物語に没頭していました。
    ストーリーは勿論面白いのですが、ぽんぽんとテンポが良い会話がとても面白いのです。
    例えば、いきなり主人公の前に表れたスーツ姿の謎の美人配川ゆかりとの会話。ズバズバと歯に衣着せない言い方をする配川ゆかりと、オブラートだが必要最低限の的確なことを言う主人公とのやり取りは、一見喧嘩しているようだが、それをむしろ本人達は楽しんでいるような良いテンポとなって、読んでいてとても気持ちがよかったです。

    一方、極度の機械オンチでDVDプレイヤーもろくに使いこなせない探偵一ノ瀬は、飄々とした喋りでたまに主人公の痛い所を突き、主人公をからかうようなことを言う。主人公も負けずと言い返したりするが、結局言い負かされてしまい黙りこくったり、話題を変えたりすることでしか会話を続けることは出来ない。しかし、主人公が怒ろうと黙ろうと決して感情的になることない飄々とした一ノ瀬の態度は、子どもが何をしようとも暖かく見守っている、親のような優しさが感じられました。それがどれだけ厳しいことを言っていても、心地よいじゃれあいに見え、読んでいて楽しかったです。

    物語の内容もとても良かったです。
    何かを表現することの素晴らしさを教えて貰った気がします。
    私も何か書いてみたいなぁ!

  • 図書館好きにオススメですよ。

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著者プロフィール

1952年北海道釧路市生まれ。
1974年に北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒業(美学・美術史専攻)。1976年に北海道教育庁北海道新美術館建設準備室の学芸員、翌年には北海道立近代美術館学芸員となる。1985年北海道立旭川美術館学芸課長。1990年からは北海道立近代美術館に戻り、2004年同館学芸副館長。2012年から2022年まで札幌芸術の森美術館館長を務める。この間、それぞれの美術館で数多くの北海道ゆかりの作家の個展や現代美術展を企画開催。
現在、AICA国際美術評論家連盟会員、北海道芸術学会会員、北海道美術館学芸員研究協議会会員。また旭川市中原悌二郎賞、札幌市本郷新記念札幌彫刻賞、ニセコ町有島武郎青少年公募絵画展、北海道陶芸展などの審査員を務める。

「2023年 『北の美術の箱舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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