きよしこ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349176

作品紹介・あらすじ

少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと-。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。

感想・レビュー・書評

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  • H30.4.28 読了。

    ・吃音のある白石 きよし君の小学校から高校生までをつづった連作短編作品。カ行、タ行、濁音、半濁音でどもってしまうきよし君の言いたいことが言えない歯がゆさ、悔しさ、もどかしさなどの気持ちの描写がひしひしと伝わってきた。きよし君の家族の温かさも伝わってきて良かった。

    ・「いつまでも口を閉ざしてはいられない。自分の思っていることをしゃべれないのは、言葉がつっかえて笑われるよりも、ずっとくやしくて、さびしいことだ。」
    ・「抱きついたり手をつないだりしてれば、伝えることはできるんだ。それが、君のほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」
    ・「君の話す最初の言葉がどんなにつっかえても、ぼくはそれを、ぼくの心の扉を叩くノックの音だと思って、君のお話が始まるのをじっと待つことにするから。」

  • 解説で、あさのあつこさんが言っておられるように、これは人間の物語、ああ私はこういうのがほんとに好きなのだ。
    過激な展開や難しいお話よりも、人と人が出会い、時に傷つき、或いは人の優しさに触れ、変化、成長する姿。
    少年は、吃音があり、伝えたい言葉を思い通りに伝えられない。か行とた行が頭にくれば言葉を飲み込んでしまう。もどかしさが読むと辛い。少年を支える、父母妹とのからみがほのぼのとする。昭和らしい家族あるあるがあったり、自分(私)と時代背景が重なって楽しくなる所もあった。
    乗り換え案内、の加藤君との触れ合い。この一節が好き「加藤君は、怒った顔で、でも、待ってました、というふうに追ってくる」この感じ、加藤君かわいい。
    かわいいが、切なくなるところもたくさんある。
    北風ぴゅう太、すごく良かった!この頃から少年はどんどん皆に溶け込んで、自分らしさを発揮してゆく。
    (あさのさんも言っておられたが)、ほんとにかっこいい少年だ。たくさんの挫折、苦しみ、辛さを経験して、強く、たくましくなった。自分の特技を伸ばすことで自信を持ち、人の内面の良さを見つけだす少年に心打たれた。
    初めの挫折のくだりから、ラストはこんなに明るく未来が見えてくるなんて、実は想像していなかった。
    息子の本棚にあった、読んで良かった。

  • 小学生の頃、塾で読んでみなと言われ、読んでみた。
    なかなか面白い

  • 吃音の少年きよしは、転校先での自己紹介が何より苦痛だった。空想の中では言葉をつっかえることなく何でも話せるのに。
    聖夜の夜にきよしこと出会い、伝えたいことはちゃんと伝わると知った少年の成長の物語。

    読了後に、はるか昔に大好きだった方から聞いた話を思い出した。
    低学年の頃に「言葉の教室」と言われる場所へ通っていたそうだ。
    そこでは、笛ラムネを口にくわえて音を出したり、飴玉を使って舌を動かすゲームがあったり、おやつ目当てに通っていたが、とても楽しかったと懐かしそうに話していた。
    その方は中学生から知っていて、大人になってからお付き合いしたのだが、言葉がつっかえたりしているのを一度も見た事がなかったので、聞いた時はとても驚いた事を覚えている。
    先日ドラマも放送されたようで観てみたかった。

  • わたしの中では、もうずっとベスト10に入り続けている本。最初に読んだのは、もうずいぶん昔、新聞か雑誌で「子育てに悩んだらこの本を開いてみて」と紹介されていたのがきっかけ。子どもの繊細な気持ち…忘れそうな時いつも読んでます。重松さんの作品はとても温かい。

  • この本は、ある人から薦めてもらった。その人は言っていた。
    「きよしこの夜を『きよしこ』『の夜』と勘違いした少年の話だ」と。てっきり明るい話しだと思っていたが、内容はとてもセンシティブだった。

    吃音(きつおん)の少年が、少年から大人になるまでの物語。出会いと別れを繰り返し、野暮ったい気持ちと真剣に向き合った、ちょっと孤独で、とても優しい少年の物語。

    私も吃音を抱えている。主人公の少年ほどではないが、予め口腔内で音を作っておかないと、言葉がスムーズに出てこない。そのため、言い換えたり、余計なことは言わなかったりして過ごしている。日頃の会話では言いたいことの半分も言えていない。そこは少年と同じだと思った。

    私は、世の中の人たちのほとんども、言いたいことの半分も言えてないのではないかと思っている。吃音があるからとは関係なく、人はどうでもいいことはスラスラ言えるのに、大事なことは全然言えない生き物だと勝手に考えている。だからこそ、分かり合えないことがもどかしく、分かり合えたときは嬉しくなる、そういう些細な一喜一憂を、日々繰り返していると思う。

    「きよしこ」の少年は、初めは笑われた。成長していくうちに、大人の優しさに触れ、どんどん自分が孤独になっていく気がした。言いにくいことは言わなくていいという甘えも、自分をさらに孤独にした。少年の周りの人は、みんな優しかった。それがもっと少年を孤独にした。少年は常に心の中で『きよしこ』を探していた。何でも話せて、自分を一番に理解してくれて、誰よりも寄り添ってくれる存在。

    そんなものは、いないって分かっていたのに。

    大人になったとき、少年は分かった。

    『きよしこ』は、僕なんだ。

    自分を嫌いな自分が、本当は自分のことを一番分かっている。恥ずかしくて触れたくないから、大切にしたい気持ちをずっと「嫌い」って気持ちで抑えて生きてきた。それがどんどん自分を孤独にして、『きよしこ』のことも見れなくしていた。

    けど、少年は一人で歩き出す。正真正銘の一人。

    優しい大人はいない。家族もいない。『きよしこ』もいない。みんなの笑顔に見送られ、自分の人生の大事な一歩を踏み締める。

    ちょっとの孤独と、大きな優しさを、内に秘めて。

  • きよしだからきよしこなのか。
    方言が良かった。スポーツと受験と青春だったなぁ。どこか懐かしくなるような作品。
    心が暖かくなる成長物語。
    きよしの次の作品も気になってるから読もっと。

    でも、彼女がお店を去るときちょっと待っててねって言ってからどのくらい待ってたのか気になる。


    知り合いの吃音持ちのK君と重ねて読んでしまった。

  • 吃音のある少年の、辛くて悲しくて、そして勇気を与えてくれる話だった。
    人間の残酷で嫌らしい本性が描かれ、それはどうしようもないことなのかもしれない。
    他人は他人、自分は自分。
    転校生には優しくしてあげてと子供たちには伝えたくなった。

  • 重松さんの言葉に元気をもらいたくて読んだ。以前読んだ『青い鳥』がすごく大好きだったので、こちらも読みたいと思っていた本。
    帯の『ひとりぼっちだなんて思わないで。』にも惹かれた。
    吃音の少年の日々が淡々と語られるが、子どもの気持ちに胸がいっぱいになる。あさのあつこさんの解説もすごくよかった。また読みたい。





    ★でも、ぼくはぼくで、君は君だ。君を励ましたり支えたりするものは、君自身の中にしかない。

    ★「君はだめになんかなっていない。ひとりぼっちじゃない。ひとりぼっちの人なんて、世の中には誰もいない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれる人や手をつないでくれる人も、この世界のどこかに、絶対いるんだ」

    ★「ええか。今日は一生のうちでたったいっぺんの今日なんじゃ、明日は他のいつの日ともとりかえっこのできん明日なんじゃ、大事にせ。ほんま、大事にせよ、今を、ほんま、大事にしてくれや……」

    ★君が話したい相手の心の扉は、ときどき閉まっているかもしれない。でも、鍵はかかっていない。鍵をかけられた心なんて、どこにもない。

    ★「それがほんとうに伝えたいことだったら……伝わるよ、きっと」

  • 吃音のある少年に寄り添いたいと書かれた、吃音をかかえた少年のお話。小学校から大学入学前までの少年の成長と周囲の人たちとのエピソード。からかい、憐憫、仲間はずれ、友情。どもりのために言いよどみ、言いかえられ、発せられない言葉。それでも本当に伝えたいことなら、きっと伝えられる、受け止めてくれる人はいつもいるということを信じさせてもらえた。

  • 小学校の頃の同級生を思い出した。
    どうして言葉を発しないんだろうと不思議だった。
    お話したらいいのになと思っていた。

    ああそういうことだったのかもしれないと。今更。
    私は何も知らなかった。

    今どうしているだろう。
    あの頃に戻れたら、
    やり直したいことがたくさんある。

  • 2023.6.9 読了 ☆8.2/10.0

  • 子供に重松清さんの本をすすめようかと思い、まずは自分で読んでみた。吃音の少年。表現としては出ていなくても、頭の中ではいろんなことを考えている。言葉が出ないとはどういうことなのか。どんな風に考えて言葉を飲み込んでしまうのか。子育て中の今読んでよかった。

  • 地元高校の課題図書として本屋さんに置いてあった重松清氏の「きよしこ」。
    吃音がある少年の物語。
    父親の仕事の関係で小学校だけでも5回も転校しています。
    無条件に周りから支えられているわけではなく、少年が一生懸命生きている姿をすごくリアルに描写されています。
    冒頭に書いてあるように、いつも傍に置いておきたい本でした。

  • 著者の作品は結構たくさん読んでいます。最近読んだのは「疾走」です。私の持っている著者の作品のイメージと全く違う作品でした。「きよしこ」は、これぞ重松清と言う作品です。毎回思うことですが、著者は、どうしてこんなに少年少女の気持ちを巧みに表現できるのでしょうか。この作品は、著者の経験も含まれてるのかなあと思ったりします。同時にNHKでドラマ化されたものも観ました。これも素晴らしい。千原せいじさんの演技、よかったなあ。

    • こっとんさん
      yhyby940さん、はじめまして。
      いいねをありがとうございます!
      私もドラマ観ましたよ。千原せいじさん、とても良かった!同感です!
      重松...
      yhyby940さん、はじめまして。
      いいねをありがとうございます!
      私もドラマ観ましたよ。千原せいじさん、とても良かった!同感です!
      重松清さん、本当に少年少女たちの気持ちを巧みに表現しますよね。
      ノスタルジックな気持ちになって切なくなってしまいます。
      今の子どもたちにもたくさん読んでもらいたいです。
      これからもよろしくお願いします。
      2021/09/23
    • yhyby940さん
      コメント、ありがとうございます。本当に読んで欲しいですね。子供たちやお父さん・お母さん・教職の皆さん。よろしくお願いします。
      コメント、ありがとうございます。本当に読んで欲しいですね。子供たちやお父さん・お母さん・教職の皆さん。よろしくお願いします。
      2021/09/23
  • 牧師にオススメされて購入。
    (一緒に青い鳥も)
    初めの方を読むだけで私の情緒に触れるからなかなか読めずにいたけれど、半年たってようやく決意。
    一気に読んだ。

    重松清さんにどハマり。

    私の感情が全てストーリーの中に持っていかれて、私は少年を見ていた。今の自分と照らし合わせて。また、少し個性の強い息子の子育てを思い出して。

    少年と一緒に泣いて怒った。
    その少年がある少年を心から応援する。
    正直に。
    世間は厳しい。子どもは残酷。
    大人は何も分かってないけどね。

  • 「きよしこ」
    吃音の少年が青年から大人の入口まで成長していく様子を描いた作品

    物語は淡々と日常を等身大のままに、飾らずストレートに描写している。

    タイトルにもなっている「きよしこ」
    でも作中、きよしこは殆ど現れない…
    それはきよしこがいなくても、少しずつ自分で考えて、自分の気持ちと向き合って、人とどう関わるかを模索出来るようになったから…

    「抱きついたり手をつないだりしてれば、伝えることはできるんだ。それが、君のほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」

    「ひとりぼっちのひとなんて、世の中に誰もいない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれるひとや手をつなぎ返してくれるひとも、この世界のどこかに、絶対にいるんだ」

    きよしこの言葉を胸に少年が少しずつ大人になっていく。

    吃音と度重なる転校を経験した分、人の傷みにも敏感に気付けるし、不器用でも真っ直ぐに伝えたいことを伝えられる。
    ピュアで傷付きやすいのに思いやりがあって、少しずつ成長して生きて行く様が、なんだか切なくて嬉しくて…

    飾り気もなくて、派手さもない。
    でもただただ、温かい血の通った作品で感動した。
    やっぱり重松清さんの作品は深い。

  • 吃音で転勤族の少年きよしのお話。
    小学校から高3まで。

    吃音の人が身の回りにいないので知らなかったけど、苦手な行が同じ吃音の人同士でも違ったり、同じ言葉でも状況により言いやすかったり言いにくかったりするのだな。
    小学校あたりでは特に珍しがられて、悪意のないからかいの対象になってしまうだろうなと容易に想像できる。

    自己紹介が苦手なのに転校続きで気の毒…と思いつつも、当の本人は「かわいそう」と思われることが一番嫌な様子。私も無自覚にナルチョのようにしてしまいそう。

    少年が徐々に変わってくるのは「どんぐりのココロ」で出てくるおっちゃんに出会えた辺りだと思う。
    クラスに馴染めなくて、放課後学校で野球をしてくると嘘をついて出かけた先の神社で出会った酔っぱらいのおっちゃん。どもっても「ええやんけ」と軽く言ってくれる存在。私も何かあったら「ええやんけぇは、ええやんけぇ、えーやんけーぇっ」と歌いたい。笑

    作文の得意な少年が、小6で担任の先生からクラス劇の台本作成を任されて、最後には無事に先生を巻き込んで終えられたシーンが一番良かったな。

    元々できている集団の中に一人だけ新しく加わるというのは、大人でもとても心もとない思いをするもの。それだけに、自分がされたようにするのではなく、大野くんに優しくしてあげた成長したきよしに天晴れと言いたくなった。

  • 娘が読んでいたので懐かしく再読。子どもを育ててるタイミングだからか、子どもの視点だけではなく大人の視点と交互で読んでしまった。「あの時の自分」を思い出しながら子育てしないといけないな、と気が付かされる。

  • 吃音と共に育った作者の少年時代を描いた自叙伝と言っても良い作品。主人公の少年の辛さが痛いほど伝わってくるが、一方ではどうしてそこで勇気が出せないのかと思わず言ってしまいそうなもどかしい気持ちにさせられる。引っ込み思案の少年だが、周りの助けてくれる友人たちや先生、親からの支えにより段々と逞しくなっていく姿が嬉しい。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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