僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 (新潮文庫)
- 新潮社 (2008年6月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101350516
感想・レビュー・書評
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アスペルガー症候群の著者を外国人または宇宙人に例えて何がどう違うのか描く。
自分の感想を書く前に、うっかりAmazonのレビューを読んでしまったら、もうダメ。自分の感想がどこかへ飛んでしまった。それほどまでに強烈な憎悪嫉妬がレビュー欄にはうごめいている。曰く、「こんな自慢話聞きたくもない」。
著者は、アスペルガー症候群に伴う様々な困難を努力と持ち前の頭の良さでなんとかカバーして生活を送っている。その過程で起きるドタバタも、悲惨になりすぎないようユーモアを交えながら、でも、本人と周りの辛さや戸惑いも残しながら、教育的なエンターテイメントテイストで描かれている。私にはとてもいい「ちょっと脚色されているけど、登場人物たちに共感しつつ困難を克服していく冒険譚」だと思えた。
自閉症については、もうかれこれ四半世紀くらいずっと追いかけているテーマで、それなりに背景となる知識は持っているのに、やはり医者ではなく当事者側からの発信には驚かされることが多い。貴重な作品だ。(自閉症的な傾向は自己アピールとは反対だから)
でも、Amazonのレビュー欄には「こんな自慢話ばかり聞かされ苦痛」というコメントがずらーっと並んでいる。それはかえって自閉症スペクトラムにとっていかに日本が生きにくい社会なのかを強烈に強烈に照射している。
この程度の話しをしただけでここまで叩かれるのか。
ずいぶん控え目だと思うが自慢話として受け取られ妬み嫉み憎しみ蔑みの対象になるのか。
そりゃあ生きにくいよ。
そりゃあ周りとぶつかるよ。
アスペルガー症候群は「ビョーキ」で、ビョーキを持っている側が「悪い」から「歩み寄る」ことを強いられるけど、これは辛いよ。二重三重に辛いよ。
空気を読めないのが自閉症スペクトラムで、空気を読めない人に厳しいのが日本。
本書のタイトルが奇しくも示しているように、自閉症の人はエイリアン=外国人。「グローバル人材」の要件って、英語ができるかどうかではない。エイリアンとうまくやっていけるスキルのこと。Amazonのレビュー欄が本書の存在意義をある意味で正しく照射している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私もエイリアン。だけど、この表現はとてもしっくりくる。
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妻は地球生まれの異星人だった。
周囲となかなかかみ合わない妻、夫とも意識のズレでケンカが耐えない。
彼女はアスペルガー症候群だったのだ。
これは夫の目線で妻との生活を綴っているが、
なんと凄い事に本当は妻当事者が書いている。
彼女はちょっと人とズレてはいるけど、凄く才能もあって、好奇心旺盛。
独特の才能溢れる人がきっと多いのだ、この症状には。
読んでてほんの些細な文章に納得させられる事多し。
これはやっぱり身近にそういう人がいてこそ読める本だと思う。 -
久々にドーンと感動した一冊。アスペルガー症候群の妻を抱えた夫の手記、ということになっているけど、実は、読んでみてのお楽しみ。
アスペルガーについての格好の入門書にして、障害者関係に従事している人たちにとっても、かなり楽しめる一冊。
学習障害と並んで、最近とみに話題になることの多い高機能自閉症。
大人でも、こういう障害を持っていて、自分でも自覚がないし、また他人からも指摘されないので、
まったく気がつかないまま生活している人も多いという。
会社、職場にいるちょっと変な人、困り者が、実はこれだったなんてこともありそうなんだけど、それを
解説ではなく、結婚相手のそれとしてごく至近距離から、肉声で手記として書いちゃったというのがこれ。
そんじょそこいらの解説本とは、桁外れに面白いし、
もっと、目が飛び出すような、もちろんこれは誇張ではなく、本当に目が飛び出すか、
点になってしまうような、オチがある。
これは、読んでみての「お楽しみ」!
ホントに、ぶっとびますから・・・
身内や職場に、こういう障害っぽい人がいたら、ぜひぜひ読むべきですよ。
著者のサイトをリンクしておきました。
「Alien Mind」というタイトル。アスペルガーについての情報、著作、ブログがあります。
アスペルガーを異星人みたいに表現するのはこの人から始まったのでしょうか。
二キ・リンコさんのサイトも「自閉連邦在地球領事館付属図書館」なんてタイトルですね。 -
全面的にあてはまらなくても、部分的にはこういう特徴を持っている人って少なくないよなあと。
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高機能自閉症である著者が夫の視線で自分のことを綴ったエッセイ。
「障害」をあつかっていながら全くお涙ちょうだいではなく、
アスペルガーというちょっと変わった隣人を理解することができる良書です。 -
夫婦がきちんと向き合ってるのが素晴らしいなぁ。アスペルガー症候群を知るきっかけになったのは勿論、妻が自分の周りとのズレを少しでも埋めようと努力している姿が良かった。そして上手くいかないからといってすぐに見捨てるような夫ではなくて良かった!一つの理想の夫婦の形。
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タイトルに惑わされず、良い人間関係を築きたいすべての人にオススメできると感じた本!
読んでみてまず印象的だったのは
高機能自閉症である「妻」が私とそっくりだったこと。
(夫に貸してみたら、確かに似てる!と)
私の場合は(調べたことはないけど)自閉症の傾向は恐らくなく、よって成長の過程で克服したこともたくさんあるのだけど、
・言葉の扱いに敏感で
・電話でのコミュニケーションが苦手
・数字に極端に弱い(「妻」ほどではないが。)
・直接会っての会話より、メールなど文字ベースのほうが圧倒的に得意
・パートナーである「夫」へのコミュニケーションのとりかた
・心の状態によっては聴力が敏感になりすぎてしまって大切なことがかえって聞き取れない(これは最近はほぼなくなったけど)
などなど、心から「わかるなぁ・・・」の連続で、
ときには妻と一緒に涙ぐみそうな場面も。
例えば、夫婦間で意見が対立してこじれる、つまり夫婦喧嘩について
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(妻の主張する)お互いの意見をぶつけ合って考え方の違いをはっきりさせ、納得いくまでとことん話し合って問題を解決する、といった方法は、どうも僕にはぴんとこない。どちらかというと、ムダな対立は避けて、時間が解決するのに任せるほうが自然な流れだと思う。
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という夫側からの記述があるのだけど、私にとっての大切な人とのケンカも、時間に解決してもらうなんて曖昧な流し方は絶対したくないもの。
完全に「妻」側の意見に同意だし、自分の夫がこんな態度を見せたらそれこそ追及しまくってしまうだろうと思う。
自閉症の人の特徴として、
・人の顔色や空気を読むといったことが極端に苦手(できない)
といったことがある。
先述のケンカのくだりについても、「妻が言葉に厳密すぎる、空気でコミュニケーションできない」点についてのエピソードとして紹介されているのだけど
私からしてみれば、それは自閉症だろうが何であろうが
大切な人とのコミュニケーションにおいて
「見たらわかるでしょ」
「それくらいわかってよ」
というのは単なる甘えや依存なんであり、
真剣に良い関係を築きたかったらお互いきちんと言葉にして伝えあうべきなんじゃないかと思うのだ。
以心伝心というのは、そうやって言葉や行動を尽くした上での、小さな奇跡、プレゼントみたいなものなんじゃないかと。
つまり、本書に書かれていることは
「自閉症という特殊な特徴を持つ(エイリアン)である人と、(地球人)である人の共同生活」に限定されるものではなく、むしろ
そもそも別人格である二人の人間~特に夫婦~が心地よい関係を築いていくにあたっての普遍的なプロセス
に他ならないのではないかと、強く感じた。
ちなみに、
私の場合はむしろ「他人の顔色が気になりすぎる」傾向があるため、その点については自閉症の特徴からかけ離れているのだけど
にも関わらず「似てる」理由について。
それは多分、人が持つ様々な要素の中でも、「言語能力が特に高い」ということに起因するのではないかと。
本書の「妻」の言語能力の高さは、その実績からも、検査結果からも明らかなのだけど、
私自身も、思考・コミュニケーションなどに関して、言語に頼る部分が他の要素(例えば感情や常識など)に頼る部分よりも高いと自覚していて、
そこが似てる理由かなと思った。 -
頭の回転が早く
人並み以上に言葉が堪能で
語彙も豊富な妻
でも何故か
常識破りで時々ものすごくぶっ飛んだ言動をする妻
1度見た風景は細部まで覚えているくせに
人の話はしっかり耳に入らない妻
1日の生活の流れが急に変わると突然不機嫌になってしまう妻
まるで異星人(エイリアン)と戸惑う夫
噛み合わない会話に苛立ち
ぶつかりあいながら
山あり谷ありの結婚生活を送る2人
そんな妻が
ある日「高機能自閉症」と診断される
自閉症…
しかも高機能…
初めて耳にする言葉を
すぐには受け入れられない夫
自閉症って…脳の発達障害なの?
「生まれつき障害があるってことは…妻って障害者?」
怒りを買いそうな夫の言葉に
「あのね、世の中にはいろんな障害を持った人がいるけど、ショーガイシャっていう人種があるわけじゃないの!
わかるでしょ?」
と笑って答える妻
もっと特別なイメージを持っていた自閉症が
実は身近な存在で
症状によっては知らずに過ごしている人が多い事
色々と難しい問題はあるけど
もともと持って生まれた脳の機能に違いがあるだけで
愛すべき個性なのだと思った
「そもそも、これはビョーキじゃないんだから、治すようなものじゃないのは当たり前でしょ!」
「診断名がついたってことはね、私が、いわゆる普通の人とどこがどんな風に違うのか、その理由は何なのかが、やっとつかめてきたってこと。
診断名がついたからって、何も変わったわけじゃない。
私は私。
わかる?」
彼女の力強い言葉が
清々しく胸に響きました