- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101405049
感想・レビュー・書評
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直木賞
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視点が女だったり男だったり。どちらも面白い。
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悪くないんだけれども男目線の、いやおっさん目線の小説かなぁ。発想と言い、観点と言い。別に悪くはないんだろうけれども、その身勝手さが直感的に分かるような気がして何だかなぁという感じ。要するに当方も歳を食ったということなんでしょうが、その設定・オチは無いわなという感触を捨てきれないのもまた確かではあります。
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<淡くも濃くも,ひとしだい>
その話もドラマティックで,少しのさみしさを感じる.
「紅き唇」はセピア色,「私の叔父さん」はインディゴブルーな映像が似合う.
自分の生まれる前の作品でも,今読んでもグッとくるものがあると,やはり連城三紀彦は凄いといか言えなくなる -
読後にしみじみとした余韻をもたらす5編の短編集。
いずれの作品も、登場人物の秘められた想いに焦点が合わされている。
「恋文」
文学性の高い作品で、50ページ足らずの中にいくつもの名場面がある。
主要な登場人物は、響子、将一、江津子の三人。この三人の感情が交錯し、時に爆発して、微妙な恋愛模様を織りなしていく。三人とも心中に隠し持ったものがあり、それが最後に明らかとなる。作中に「恋文」がいくつか出てくるが、響子から将一への恋文が出色。
ラストで響子の問いかけに対して、将一が首を振る場面があるが、将一は首を横に振ったのであろうか、それとも縦に振ったのであろうか。
「紅き唇」
主人公の和広とその義理の母のタヅを巡る物語。
タヅの語る昔話が印象的であり、口紅が重要なアイテムとなっている。最後まで読むと、タヅの秘めた想いが判明する。パチンコの景品として口紅を選んだことに、重要な意味があることがわかる。
「十三年目の子守歌」
オチの意外性は、本短編集中でも一番。
突然、実家に舞い込んできた年下の義理の父親への反感が切々と綴られていくが……。
主人公の知らない秘め事があり、それが判明した時、「ああ、そういうことだったのか」と思わずのけぞってしまった。「父さんと呼べ」という言葉にそんな意味があったとは。
父親への想いが、この作品の底流にある。
「ピエロ」
「いいよ、俺なら」が口癖で、決して怒らない夫の計作に一抹の寂しさを感じ、浮気をしようとする美木子。美木子の視点で語られるこの話は二転三転し、二段構えのどんでん返しが用意されている。
飄々として、常にピエロのような道化役を演じている計作の人物造形がすばらしい。計作の道化に隠された真意はどこにあったのだろうか。
「私の叔父さん」
四十五才の構治、19年前に20才で亡くなった姪の夕希子、その娘の18歳の夕美子が主要な登場人物。夕希子が亡くなる前に撮られた五枚の写真が重要なアイテムとなり、夕希子の秘められた想いが明かされる。
夕美子が突然予想外のことを言いだし、ひと騒動起こる。それに対して、構治が取った態度も意外であり、ひとつの想いが結実する。 -
1984年上期:第91回直木賞受賞作品。
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時代を感じるが、繊細でとても切ない作品集。
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連城さんの作品だから、最後に何かがあるんじゃないかと身構えながら読んでいましたが、表題作の「恋文」は直球勝負でした。
私には妻の心情はちょっと理解しがたいですが……。
「十三年目の子守唄」と「ピエロ」はちょっとトリッキーで、十三年目の方はこうくるかと意表をつかれました。
一番好みだったのは「私の叔父さん」で、過去の叔父と姪の叶わなかった禁断の愛情がベースになっていて、カメラマンの主人公が撮影した姪の5枚の写真にやられました。
「アイシテル」のサインはテールランプだけじゃないんだね。