一九三四年冬-乱歩 (新潮文庫 く 20-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101456218

感想・レビュー・書評

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  • スランプ気味の乱歩さん、美青年のボーイのいる長期滞在型ホテルに逃げ込んで…えらい妄想にふけりつつ『梔子姫』という小説を書き上げる…という話。
    「禿げてるくせに甘えてみる」とか
    「美青年と一緒に異国の曲を聞く-こんなことなら着替えてくれば良かった」
    「別にやつれていなくたって、伏し目がちでなくたって、人妻というだけでエロティックだ」とか、40歳を目前に人妻と美青年に目がない乱歩さん。
    なんか怪奇小説の巨匠とされているけれど、かなりお茶目というか何というか。
    乱歩の小説を読み込んでいるわけでもない私ですが、久世光彦が乱歩として書いた『梔子姫』だけでも「乱歩っぽいな」とそれとなく浸れました。乱歩ファンの感想を聞きたいです

  • 久世先生は乱歩先生のことが、乱歩先生は美青年のことが好きすぎると思います。諸々から逃げ、妖しいホテルに逗留した乱歩の数日間と、その間に乱歩が執筆する「梔子姫」という小説が交互に描かれる本作。梔子姫に漂うダークなエロティックさとは対照的にまぬけな中年男全開の乱歩先生が愛おしい。解説で井上ひさし氏も書かれているが、文体からその情景や匂いが伝わってくるよう。

  • 描かれているのは久世さんの「昭和」。

  • 除了作者想像力好外没什么好说的。

  • とっても面白かった、いろんな本の話がでてきて興味深い、濃密で妖しい空気に酔った。品切重版未定とは…買っといてよかった、危なかった。

  • 本に読まれて/須賀敦子より

  • 江戸川乱歩を主人公にした小説。
    乱歩の性格描写が良かった。なんだか、憎めないオッサンw
    芸術家ぶってみても結構俗物で、女性に興味があっても手は出せなくて、
    作中オドロオドロしいこと書いても、実際にはかなりビビリで
    気難しく気取ってはみても、甘えん坊。

    作品中に、さらに乱歩が執筆しているという小説が登場するという二重構造も凝ってて読み応えあり。
    これが乱歩が書きそうでいて、多分あの時代には書けなかったであろう性描写満載で、
    著者も楽しみながら書いたんじゃないかなーと、思う。

  • ― 1934年(昭和九年)冬、東京。
     雑誌「新青年」に頼まれた小説の原稿が進まず、衝動的に逃亡を図った江戸川乱歩(40歳・作家)。
     都心のホテルに一時避難し追手からは逃れたものの、このままでは作家の名が廃る。
     何としてもこの「梔子姫(くちなしひめ)」(←タイトルだけは決まってる)、完成させなければ… ―

     (※この作品に登場する「乱歩」はほぼ著者の妄想の結晶に近く、実在する「江戸川乱歩」とは多分に異なる人物である恐れがあります)


    何というか、一言で率直に申せば、萌えました。

    乱歩氏のどこまでも等身大の40歳な感じといい、華栄青年の絶妙な魅力といい、
    昭和初期のやや陰のある独特の雰囲気を醸し出す文章といい、私の心をがっちりホールド。
    物の成り行き的に読み出したはずが読み進むほどにテンションが上がり、読み終わる頃には大好きな一冊となっていました。
    (※)の点さえ大丈夫であれば、全ての乱歩愛好者におすすめしたい小説です。
    また文中に乱歩関連の小ネタが散在しているので、乱歩マニアな方ほど楽しめるはず。

    ちなみにこのどうみても乱歩作品としか思えない作中作「梔子姫」は完全に久世さんのオリジナルだそうです。
    ほんと、久世さんの乱歩に対するありとあらゆる種類の愛が結晶化した作品だと思います。
    (2006年 3月)

  • 主人公は江戸川乱歩。スランプに陥って行方をくらまし、麻布の張ホテルに滞在する4日間を描いたフィクション。妖しくも怪しい登場人物と劇中小説『梔子姫』など様々なものがゆめうつつに溶け合ってて不思議に心地好い。つい中国人の美青年に注目してしまう乱歩さんに妙な親近感を覚えました。『梔子姫』は劇中小説としてではなく、一つの作品として好き。要素が似通っている『孤島の鬼』を読み終わったばかりだからか、無性に読み返したい。

  • 江戸川乱歩の、ある冬の四日間をエロティックな文章で描く。作中、乱歩は「梔子姫」という小説の執筆に取り掛かる。本編と同時進行的に、この作中作が完成に至る過程を追っていくのだが……。この「梔子姫」がとにかく凄い。乱歩の完全な模倣、というより乱歩以上に乱歩的な作品に仕上がっている。久世光彦氏の筆力に驚き呆れました。

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著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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