その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800349

感想・レビュー・書評

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  • 階段島シリーズ2作目。クリスマスを前に外部からの通販が止まり、パーティーの演奏で必要なバイオリンの玄を探したり、突然広まった七不思議の謎を探ったりする話。前作は続巻を読むか迷う感じだったけど、ようやく続きも読みたいと思えた。作中で真辺由宇がここまで忌避されるのは未だに不思議だけど。

  • 突然通販の物品が届かなくなった階段島のクリスマスイブに起こる不思議な事件。今回は七草と真辺をとりまく人物達、水谷委員長、佐々岡、郵便配達員時任に焦点を当てた群像劇的な展開になっています。明らかになる魔女の正体。でも彼女は何のためにこんなことをしているのか。これから明らかになるでしょうか。それにしても七草の黒幕っぷりよ。次巻を読むのが楽しみです。

  • 前作より始まりと終わりが分かりやすく、読みやすかった。登場人物達のキャラクターも掘り下げられていたと思う。いろんな謎がじわじわと狭い範囲に集まってくるのは読んでいて楽しかったけど、冷静に考えるとすごく小さな話だったんだな、と。とりあえずこのシリーズは彼が何かしでかしてくれる話と思っておけばいいのかな…笑

  • 今回も青春っぽさ?が上手く表現されてて爽やかでよかった。


  • "いなくなれ群青"シリーズ2作目
    「その白さえ嘘だとしても」

    ヒーローになりたい佐々岡が奮闘する物語。
    誰しも自分の理想を求めて現実とのギャップに苦しんだ経験があると思うんだけど、佐々岡の感情変化と成長が感動的で素晴らしい一冊でした。

  • 彼女の言葉を、また思い出す。
    「人に合わせてばかりだと、自分にできることがわからなくなるよ。」
     
     自由というのは呪いだ。ケーキを買うお金を持っていない子供だけが本当のケーキの価値を知っている。いつでもそれが手にはいっているようになったころには、本質は失くしてしまっている。ケーキも、季節も、自由も同じだわ。
     「彼女に対して、なにか、愛情と呼べるものがあることは間違いない。でもそれを好きって言葉でまとめちゃうと、色々とややこしいことになる」

     ふざけんな。ふざけんな。諦めることを、手放すことを、恰好悪くなることを成長だなんてごまかすんじゃない。
     
     七草はほほ笑む。その表情は粉雪に似ていた。優しいのに冷たくみえた。


     才能を理由に、壁を乗り越えろなんて怖ろしいこと、僕は口にしたくない。
    できるなら、がんばれとさえ言いたくないのだ。もちろん努力を続けた人には本心から拍手を送るけれど、でもなにかを諦めた人を、悪者のようには扱いたくない。
     期待というのは本来、極めて個人的なものだ。
    鍵のかかる引き出しの奥に隠した、秘密の日記みたいなものだ。
     ひとにみせびらかすものじゃないし、相手に裏切られるものでもない。一方的に寄せた期待が、その通りにならなかったときにつくため息は、決して他人にみられてはいけ
    ない。傍からはまるで、相手を呪っているようにみえるだろうから。


     階段島は捨てられた人々の島だ。
    現実の自分自身に捨てられた、どうしようもない欠点を抱えて、この島で生きていくしかない。あの少女はいつまでも、極度に緊張しやすいままなのかもしれない。それは
    だれかがなれもしないヒーローに憧れつづけ、ある人が優等生の仮面を被り続けるのと同じように。

     階段島の人々は、ある種の成長を奪われている。
    決して捨てられない欠点を、それぞれ背負わされている。
    それでも僕たちは、変化することならできるのだと思う。どう生きても堕落もしないというのは考え難かったし、あるいは成長と呼べる変化だって手に入れられるのかもしれない。あくまで、欠点を抱えたままで。
     だとすれば、僕たちから奪われているのは、完璧になることだけだ。
     そして悲観的な私たちは、ついこう考えてしまう。
    「どうせ階段島じゃなくても、完璧になんてなれやしないさ。現実にいる誰だって、どうしても乗り越えられない欠点くらい持っている。
    であればこの島は、現実に似ている。あちこちが単純化されて、わかりやすくはなっているけれど、まったく同じではなかったとしても、とてもよく似ている。きっと絶望の量も、希望の量も、だいたい現実と同じだけある。」

  • 『娯楽』★★★★☆ 8
    【詩情】★★★★★ 15
    【整合】★★★☆☆ 9
    『意外』★★★★☆ 8
    「人物」★★★★★ 5
    「可読」★★★☆☆ 3
    「作家」★★★★☆ 4
    【尖鋭】★★★★☆ 12
    『奥行』★★★★☆ 8
    『印象』★★★★☆ 8

    《総合》80 A-

  • あらすじ

    「いなくなれ、群青」の続きである、第2巻。
    季節は冬。ちょうどクリスマス真っ盛りの時期。
    主人公、七草の住んでいる周りから隔離されている島「階段島」の唯一の外部との通信手段の通販が停止されてしまった。
    そんな中「クリスマスの七不思議」という噂が広まっていた。
    そこで、七草とその友達の真辺は共に七不思議の真相を明らかにさせようとする。
    どんどんと明らかになっていく真相。
    最後には魔女の正体まで……?!
    七草とその友達との青春?を描いたミステリー小説。


    実は私、第1作の「いなくなれ、群青」を読まずに先にこの本を手に取ってしまいまして…^^;
    でも、読んでてとても面白かったです。
    読んでる途中気になる謎がいくつか出てくるのですが、この本を読み終わると既に全てその謎が解決されていてとてもスッキリしました!

    対象年齢は「小学校高学年〜??」でしょうか?
    私の独断と偏見ですいません。

    是非オススメです!


  • 水谷さん、佐々岡、七草の心情にそれぞれ共感するところがあった。
    水谷さんに共感したのは、相手が欲しい答えをしゃべろうとし、愛想笑いもする。そして出来ない人に期待はないけど、「なんで出来ないんやろな。」って思う。

    佐々岡には、自分がやる善意などがその人の為ではなく、ただ自分の中にあるヒーロー像というか、カッコつける部分が出てるだけで、自分のためにやっているようなもん。でもそれは悪いことではないし、むしろ良いことやけど、本当に相手を思いやった行動ではない。どこかフェイクな行動。

    七草には、物事や人間関係であったりするところに深い関心がなく、全てのことから一歩引いて俯瞰してるような、人間的には冷たい部分。
    つまり七草が怒らないのは興味がないからやと思う。
    でも七草が言った「信用とは、その人にどんな裏切りをされても許せること」ってのもすごいわかる。これは裏返しで、信用してない人には期待もしてないから許すも何もない。信用した人には期待を持つ。でもそれを裏切られても許せるってこと。

    登場人物にここまで共感できるものはなかなかないかもしらん。

  • 内容の面白さに関しては可もなく不可もなし。ただ、堀が魔女だとしたら時任はどういう立場なのか、以前電話をした魔女は何者かが気になったので、次巻も読みたいとは思う。

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著者プロフィール

徳島県出身。2009年に『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』で、角川スニーカー文庫よりデビュー。若者を中心に人気を博し、シリーズは7冊を数える。他著作に「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ(角川文庫)、『いなくなれ、群青』(新潮文庫)に始まる「階段島」シリーズなどがある。

「2023年 『昨日星を探した言い訳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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