- Amazon.co.jp ・本 (707ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102097045
感想・レビュー・書評
-
ネリーというえげつない語り手と、ロックウッドの閑話がとてもよかった
嵐が丘と鶫の辻
ヒースクリフとキャサリン、エドガー
リントンとキャシー、ヘアトン
恐ろしいほど緻密な対比の描写が引き込まれた詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古典の長編を読了。
人間の性と恋愛だけでなく、全ての面において、さらけ出す作品。
抜群な場面の描写力に息を呑む。
暗さを失わないように、と役者が語ったことに納得、名訳だと思う。
一人の男と二つの屋敷の不吉な因縁を見事に美しくかつ、面白く魅せる著者の表現力。
当時1,800年代にこのような語り口を考えたことに脱帽。 -
高校生の時に一回読んだけど、あらすじをほとんど忘れてしまったので再読したい。あの頃はあまり考えずに読んでたなあ、読んだら感想書きます
-
嵐が丘に住む不思議な住人達。互いにいがみ合いながら暮らしているのだが、その関係性がわからず、鶫の辻の間借人のロックウッドは使用人のネリーに話を聞きます。彼女の話がまぁ、面白い。ロックウッドじゃないですが、「早く続きを話してくださいよ」とせがみたくなります。
ネリーは自分が常識人みたいな感じで話していますが、彼女も偏見ありまくりの大概な人物で、彼女のせいで揉め事が大きくなっているまであります。そんなところを、突っ込みながら読む楽しみもあるのではないかと思います。
二人がもめていたら、普通はどちらかの肩を持ちたくなります。ですがこの作品の場合、どっちもどっちですので、高みの見物的な立ち位置でその騒動を眺めることになります。全く感情移入できない人たちのゴタゴタを見せられるのですが、ワイドショー的な興味で読める感じです。
そんなぐちゃぐちゃな話なのに、なぜか読後感は良かったです。それまでのテンションも終盤も終盤になると、徐々に憑き物が落ちたように下がっていき、ほっこりするようなエピソードが出てきます。
そして最後には、取ってつけたような結末があります。普通ならそういうものは、鼻についたり、納得できなかったりするのですが、この作品に関しては、それまでのゴタゴタがあまりにもすごすぎたので、「とりあえずどういう形にしろよかったね」と思えてしまいました。
なんだろう、今までになかった読書体験でしたね。特定の人物の幸せを願ったり喜んだりではなく、あまりにもぐちゃぐちゃな物語世界が回復してほっとする感覚でしょうか。あるいは神さまの気持ちなのかもしれない。あまりに愚かな人間たちが、少しだけまともになって喜んだみたいな。
とりあえず、背表紙にある「世界の女性を虜にした恋愛小説」では、決してない作品だと思いました。 -
少なからず変な表現があるけど (誤訳が多いらしい)、読みやすいし、雰囲気は決して壊れてはないと信じたい。愛憎ともに一途な気持ちと、あまりに自分勝手な2人の愚かさが衝撃的。他の人の訳書で読み直してみたい。
-
強烈のひとこと。
だれも心を寄せられる人物がいない(笑) でも、それでもしばしのあいだ心のなかに人物が住みつくあの感じが残るところが、やはり名作たるゆえんなのだろうな。読書会向きというか。人の感想も聞いてみたい~。
読みはじめ、二種類の訳をいったりきたりしたのだけど、鴻巣さん版は、語りの枠のあり方(誰が語っていて、その人がこの物語のなかでどんな位置づけなのか)が、台詞回しだけでも明確に描き出されていて、すんなり物語に入れた。
考えてみれば、いちばん最初に登場するのが、縁もゆかりもない下宿人て、導入としてはかなり難しくないですか? でも、第三者がいないと語る動機がないからこうせざるを得ないのか。
しかしヒースクリフというのもなかなか難儀な人物で、ひろって育ててもらったけど(よかった)、その養父が亡くなってから徹底的にいじめられ(気の毒)、家を出てどこで何をしたのかわからないけど教養身につけて財産を作り(すごい)、嵐が丘に戻ってきてひたすら自分のいじめた者たちへの復讐をはかり(わかるけど何もそう執着しなくても)、キャサリンを激しく愛し、憎み(激しすぎんよ)……。
ヒースクリフが死んだあとの嵐が丘の、窓が開け放たれて風が通り、キャサリン・リントンとヘアトンが仲よく口げんかしながら会話したり勉強したりしている、あのおだやかな空気が、どろどろの闇世界のあとでは、なにか異世界というか、ファンタジーのようにすら感じられた。E・ブロンテ/C・ブロンテとひとくくりにするけれど、『ジェーン・エア』とはまっったく毛色のちがう作品ですごかったです。 -
韓国ドラマかと錯覚するほどの復讐欲、死なばもろとも的道連れ感… 全編通じて陰鬱なこの物語は、信じ難いが一応(?)ハッピーエンド的な結末に。しかしながらとにかく暗い。ヒースクリフの底意地の悪さや初代キャシーの無自覚な傲慢さ、不誠実さに共感もできず。彼らは分かち難い愛の当事者でありながら、同時に奪い合う亡霊でもある。この、与えなさ。互いが互いを引き摺り合うような形でしか愛せないのは何故なのか。極めて純粋でありながらとことん不誠実にしかなれない二人の彷徨える魂が、嵐が丘と鶫の辻、うら寂しく荒涼たる大地の中で咆哮しているようなこの物語は、恋愛小説というにはあまりにヘビーだが、その構成の見事さ、描写の巧さによって読みにくさはあまり感じさせない。初読では正直げんなりしたが、読み返してみると実は…という箇所が現れたりする。古典の名作にはこういう部分があるので、やはり手にとって良かったなと思った。
-
せつなさよ。名作だけどとても切ない物語…
ーーーーー
寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。 -
殺伐陰険とした暗い世界に一筋の眩い光が射したような、思わず目を細めてしまう痛烈な愛の物語で、何度読んでも溜め息がこぼれます。
また、200年近く前に遥か遠くの英国の地で生まれた物語が、今私の手の中にあることにも深いロマンスを感じてしまうのです。 -
自分の中の海外女流文学ブーム来たる。
おどろおどろしく、でも生々しさはない恋愛、不思議だった。ヒースクリフの気持ちは推しはかることしかできないのね。